3PL - SAKATA 一世紀以上の経験と実績に基づき「楽々倉庫」を通じて新たな価値創造を目指す Tue, 24 Mar 2026 06:44:15 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.3 /wp-content/uploads/2021/07/sakata_icon4-130x130.png 3PL - SAKATA 32 32 第394号  垣間見た今日的なアメリカの物流:3PLとは何か?(2018年8月21日発行) /logistics-394/ /logistics-394/#respond Tue, 21 Aug 2018 00:05:11 +0000 /?p=13838 ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表 野口 英雄

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執筆者  野口 英雄
(ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表)

 執筆者略歴 ▼
  • Corporate Profile
    主な経歴
    • 1943年 生まれ
    • 1962年 味の素株式会社・中央研究所入社
    • 1975年 同・本社物流部
    • 1985年 物流子会社出向(大阪)
    • 1989年 同・株式会社サンミックス出向(現味の素物流(株)、コールドライナー事業部長、取締役)
    • 1996年 味の素株式会社退職、昭和冷蔵株式会社入社(冷蔵事業部長、取締役)
    • 1999年 株式会社カサイ経営入門、翌年 (有)エルエスオフィス設立
      現在群馬県立農林大学校非常勤講師、横浜市中小企業アドバイザー、
      (社)日本ロジスティクスシステム協会講師等を歴任
    • 2010年 ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表
    活動領域
      食品ロジスティクスに軸足を置き、中でも低温物流の体系化に力を注いでいる
      :鮮度・品質・衛生管理が基本、低温物流の著作3冊出版、その他共著5冊
      特にトラック・倉庫業を中心とする物流業界の地位向上に微力をささげたい
    私のモットー
    • 物流は単位機能として重要だが、今はロジスティクスという市場・消費者視点、トータルシステムアプローチが求められている
    • ロジスティクスはマーケティングの体系要素であり、コスト・効率中心の物流とは攻め口が違う
    • 従って3PLの出発点はあくまでマーケットインで、既存物流業の延長ではない
    • 学ぶこと、日々の改善が基本であり、やれば必ず先が見えてくる
    保有資格
    • 運行管理者
    • 第一種衛生管理者
    • 物流技術管理士

 

目次

1.幹線輸送の効率化:凄まじい大型化

  昨夏、アメリカ西部への旅でグランドサークルを中心に、大型バスで2千Km近くは移動しただろうか。乾燥した砂漠を貫く高速道路を疾走する車窓から、アメリカの今日的な輸送の情景を垣間見た。まず目に着くのは超大型化である。トレーラーは3両連結車も目立った。キャビンの仮眠室は日本のような貧弱なものではなく、立派なキッチンとベッドが据え付けられているという。大陸横断は3泊4日の運行であり、仮眠ではなくちゃんとした睡眠が必要になる。ドライバーはスーパーで買い物をして、自分で調理するそうだ。
  貨物鉄道にも何回か遭遇したが、100両編成程度でコンテナ2段積である。もちろん日本のようにトンネルはなく、カーブも緩やかだから可能なのだろう。それにしてもこの長大なレールをどうやってメンテナンスしているのか。アメリカの鉄道は一時衰退したが、観光用の乗客輸送も捨てこの貨物輸送で成り立っているのか。戦車等の軍事物資の輸送も目に入ったが、安全保障面でも大きな役割があるのだろう。日本では東日本大震災時の危機管理対応として石油輸送等で大いに活躍したが、果たして復権はなるだろうか。もちろん排気ガス対応や人手不足で追い風である。

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  トラックドライバーは多くが、いわゆる一匹狼の個人事業者のようだった。サービスエリア等で見かけたそれらの人々は経営者としての自信に満ちた態度のように見受けられた。そういえば韓国でも既にそれが認められていた。日本では現状で白トラックは違法であり、究極の規制緩和として更に検討されていくだろうが、これが人手不足の解消に繋がるかは甚だ疑問である。既に人口減へと突入した我が国では、焼け石に水かもしれない。隊列走行や無人化等の研究が進められているのは、当然のことである。

2.末端配送網の充実:拡大する通販需要

  高速道路では大型車だけではなく、FEDEX等の看板を掲げた中型車両も多く見受けられた。これはアマゾンを始めとするネット通販の進展に伴う小口対応によるものだろう。しかし日本のような2t車程度の小型車は余り見られない。ラストワンマイル対応は別なシステムが用意されているのだろうか。FEDEXの話は以前直接聞いたことがあるが、アメリカの中心のテネシー州メンフィスに巨大なハブがあり、そこへのアクセスは大型航空貨物機ということだった。もちろんこの国の航空機の活用は旅客・貨物も含め眼を見張らせるものがある。離着陸の状況は我が羽田空港の比ではない。
  外食産業は郊外型の大型店が多く、広大な駐車場と共に殆どにドライブスルー機能が併用されていた。マクドナルドよりサブウエイの看板の方が多いように思われた。やはり健康志向が、消費者の関心事となっているのだろう。そうすると低温輸送のウエイトが高くなっているはずだ。車載冷却装置はとてもコンパクトで、キャビンとコンテナの間に余り目立たないように設置されている。市街地の店舗でも全てトラックヤードが備えられ、店舗の前に横付けするような光景は見られない。

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  しかしウオルマートのような大型スーパーの店頭で見た野菜類は鮮度が低下しており、日本では殆ど売り物にならないような代物だった。肉・魚類は大半が冷凍であり、チルドのようなデリケートな温度帯は余り意識されていないのだろう。もちろん総菜の類は種類が非常に少ない。果物は基本的に常温で販売されていた。それにしても店舗は平屋建てで誠に広大であり、日本ではとても考えられない。物流センターも同様だ。店舗内で子供が買い物カートを乗りもの替わりにして遊んでいて、非常に危険だった。

3.3PLとはフォワーダー業界の戦略:ノンアセット型事業

  アメリカの物流業界に詳しい韓国の某物流企業社長から聞いた話では、3PLとは輸出入を主に手掛けるフォワーダー業界が、実運送のトラック業界に対抗するために編み出した戦略だと言う。アメリカのフォワーダー業界といえば、港湾ストで社会に大きな影響を与える強い存在の海員組合と接している。トラック業界は典型的な2PLであり、これに対しフォワーダーはノンアセットでワンストップサービスを組み立て、しかも料金建ては一気通貫が基本である。日本では原則としてこのかたちは認められていない。ロジスティクスの管理は本来的に荷主側の業務であり、そのリソースを提供するという立場に徹しているのか。日本ではロジスティクス部門さえ持たない荷主が多くなり、丸投げが罷り通っている。需給管理を始めとするロジスティクスのコア業務は、アウトソーシング出来るはずがない。アウトソーシングとは委託側にも管理すべきことがあり、一度管理状態から外れたらそれを直ちに修復する措置が取られなければならない。それがBCPに繋がっていく。
  日本の3PLはまずノンアセット型を重視し、情報システムを有力な武器に事業を組み立てようとする。しかし実態はロジスティクスレベルのアウトソーシング受託は極めて難しく、ビジネスとして中々成り立っていないのが実情であろう。つまり荷主との機能・責任分担が明確にならず、実事業者がリスクを負わされることが多い。単なる共同配送を3PLと称しているようなケースも見受けられる。情報システムを基本にコミッションビジネスとして存在するだけなら、余りにも脆弱である。
  アメリカで見た実輸送は一人事業者もいるだろうが、3PLの傘下で組織的に運営されている部分も多いはずだ。3PLとはノンアセット型経営だが、実務を重視する業態なのではないか。この点を日本は学ぶべきだろう。ノンアセット型経営も、リスク対応が充分でなければその意味がない。かつて2.5PLを提唱したことがあるが、それは実際の経験上リスク対応を重視したからに他ならない。その意味はアセット型とノンアセット型の併用という狙いである。最大の課題は何といっても危機管理対応と、それを的確に実行するための日常業務リスク対策である。このインフラが必須である。危機管理とは異常時における処置という、経営レベルの活動であることは言うまでもない。

(図表:3PLと実務システムの関係)
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4.厳密なドライバーの就労管理:検問所の設置

  長距離・長時間走行が前提となる業務では、ドライバーの就労管理が極めて重要になるが、その一面を乗っていたバスで何回も経験した。まず高速道路上には検問所が必ず設けられていて、乗用車以外は絶対にここを通過しなければならない。ここでは積み荷の重量や、走行記録等が厳密にチェックされるという。バスのドライバーとて例外ではない。ノンストップで走り抜ける乗用車を横目に、みなじっと順番待ちである。
  バスドライバーの場合、一日の最大走行距離は500Kmと聞いた。最初の訪問地であったヨセミテ国立公園では、サンノゼ空港から周遊してホテルに着くまでがそのリミットであり、夜の食事のレストランへの移動は別のドライバーが来て対応した。グランドサークルはラスベガスの発着で1週間のバス移動であったが、同じドライバーが全て一人でこなした。完全なワンマン運行でも、制約を守ればこのような長丁場も充分に可能なのだ。1週間も家族と離れ過酷な業務だと思うが、顧客ニーズがあれば法の下で対応するということだろう。
  トラックドライバーは走行車線を粛々と走行し、バスはそれを次々と追い越していく。日本の高速道路では追い越し車線をトラックが堂々と走行し、大型車でスピードリミッターが機能していないケースも多く見受けられる。ジャストインタイム性を要求される我が国では、ルールを守りにくいということなのだろうか。物流に対する社会的合意が改められないと、現状の危機は乗り超えられないのではないか。

5.インフラの充実とシステム支援:大量消費社会を支える

  高速道路はもちろん無料であり、通常の最大速度は毎時75マイルと表示されていた。つまり120Kmである。地方道でも最低片側2車線であり、それに幅広い路肩が確保されている。中央分離帯も、もう一本走行レーンが造れるくらい広くとってある。そういえば路肩に停まっているトラックもかなり見受けられた。故障車が多いのだそうである。これは日本の方がレベル的に上かもしれない。日本ではかつて高速道路無料化や石油燃料に対する暫定税率廃止等が実現したこともあったが、物流業界はこれを歓迎せず直ぐに引き戻されたという経緯があった。高いインフラコストをどうしようと考えているのか。
  走行中のドライバーへの情報システム支援も、かなり出来ているように思われた。バスドライバーが休憩のたびに何やらスマホで盛んに入力している。恐らく走行のデータベースが完全に作られていて、リアルタイムでフィードバックが掛かっているのだろう。これは日本でも決してひけを取らないレベルになっているはずだ。自動配車システムも、多くの業態で実用化が進んでいる。本家本元の物流業界ではどうか。そして高速道路の取り締まりは、ヘリコプターで行われていた。
  これだけの大量物資を運ぶトラックや鉄道を見ていると、アメリカという大量消費社会が目に浮かんでくる。観光地や街中の廃棄物処理もゴミと資源へ完全に分別され、ユニットロードとしてそのままトラックに積み込まれていく。このような高環境負荷社会を抱えておきながら、世界的な環境条約から離脱するとは、トランプ大統領の政策は誠に忌まわしい。これだけ豊かな資源を持ちながら、自国優先主義を掲げるのは如何にも狭量である。
(追記)旅程:2017/6/13~23

以上



(C)2018 Hideo Noguchi & Sakata Warehouse, Inc.

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第352号 成熟しつつある3PLを考える。(2016年11月22日発行) /logistics-352/ /logistics-352/#respond Mon, 21 Nov 2016 04:49:33 +0000 /?p=12174 有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長 髙野 潔

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執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(33年間)
    • (出向)株式会社バンテック(7年間)
    • (起業)有限会社KRS物流システム研究所(平成11年~)
    組織・履歴
    • 神奈川流通サービス協同組合・物流システム研究所所長(5年間)
    • 株式会社湘南エスディ-・物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営・客員研究員(7年間)
    • 物流学会・正会員(8年間)
    • 物流学会・ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会・個人正会員(JUAS-ISC)(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA:東商会員)正会員・理事(平成25年~)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省) 荷姿分科会委員・委嘱(1年間)
    • 運輸省(現・国土交通省)輸送分科会委員・委嘱(1年間)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(4年間)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(2年間)
    • 座間市観光協会・事務局長(2年間)
    • 座間市・都市計画審議会委員(2年間)
    著書・講師・履歴
    • 日本のロジスティクス (共著:日本ロジスティクスシステム協会)
    • 物流共同化実践マニアル (共著:日本ロジスティクスシステム協会・日本能率協会)
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流 (共著:同文館)
    • 雑誌掲載:配送効率化・共同物流で大手に対抗(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:情報化相談室回答担当者(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:卸の物流協業化・KRS共同物流センター事業(流通ネットワーキング)
    • 雑誌掲載:現場が求めるリテールサポート・ドラックストア-編(流通ネットワーキング)
    • その他  :執筆実績多数
    • 講師(セミナー、人材育成、物流教育・etc):実績多数

 

目次

1.はじめに。

  私の親しい省エネ関連企業の社長から、横浜市の法人会の会員相互の親睦(交流)と見聞を広めるための見学・研修会を計画したいとのこと、先進的な物流施設を含めた見学候補を紹介して欲しい旨のご要望を頂きました。見学エリアは横浜から片道100km圏内、参加企業は30社ほど、見学時間は約60~90分が条件でした。そこで、先進的な物流施設、物流と自動化・ロボット化、RFIDの導入施設、座間市にある乗用車のヘリテージコレクション(300~400台展示)など12施設を候補としました。最終的に物流の進化を求める総合物流ターミナル羽田クロノゲート、車メーカーのヘリテージコレクションの2施設に絞り込みました。候補決定前に地元の先進大型物流施設に問い合わせをした際、物流施設の管理者から学校関係の見学は常に受け入れOK、企業関係は、荷主の責任者の許可を得て物流施設側の広報、総務などの許可を取って欲しい旨のご指示を頂きました。時間と手間を考え、この時点で見学を断念を伝えました。その時、荷主企業から相談を受けました。3PL事業者が品質やコストダウンなど、荷主の要望に十分に応えてくれない、一方、3PL事業者からは、荷主の要求が多過ぎるとの声が出ていました。立派な外資系の物流施設に入居しているにも関わらず、双方相対した課題解決策の対応力に乏しく日本の3PL機能が2.5PLと言われる所以を感じる機会に遭遇してしまいました。双方の官僚的な姿勢とコミュニケーション不足が立ちはだかり、ウィンウインの関係づくりを阻害しているようでした。3PLの場合、双方が必要な条件をガラス張りにすることが肝要であり、3PLのよき環境を醸成する条件、仕組みが欲しいものと痛感した次第です。

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2.物流3PLとアセット型、ノンアセット型の動向

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  物流3PLとは、経営資源をコアコンピタンスへ集中するために、物流業務を外部に委託すること、例えば、社内で実施していた物流業務を外部に委託することを物流3PLと言い益々広まっています。物流業務を委託する企業の狙いとして、3PL事業者のノウハウ、専門家の目を駆使して徹底的に効率化を図り、納品精度・品質、スピード(納期厳守)を向上させ、コスト削減へのチャレンジと成果を出すことで荷主を満足させることだと考えます。荷主企業は、物流費などの固定コストを変動費化し、フレシキブルな経営構造に転換することが可能となります。日本で3PLが認知されはじめた頃、自らの物流資産を抱える「アセット型3PL」と物流資産をまったく持たない「ノンアセット型3PL」のどちらが有利なのかといった議論がありました、アセットを持つ事業者は、自社の資産活用を前提に考えるため荷主の立場から最適な選択ができないとの疑心暗鬼の議論もありました。そこで、荷主側は、短期契約年数で縛り、3PLの成果が得られないと契約年数毎に物流事業者を選択するコンペを繰り返し、自社(荷主)に適応する物流事業者を選択する傾向にありました。特に外資系荷主企業は単年契約が多く成果が見られた場合は契約を延長、見られない場合は打ち切りで設備投資もできませんでした。3PL事業者は、荷主が安易に事業者を変えられないように逆に情報システムで縛りを強める3PL事業者もありました。さらに、物流施設、人材、コストなどの縛りと物流委託後の物流戦略、経営戦略の策定まで踏み込む物流事業者も見受けられるようになりました。これに対して、ノンアセットの事業者はフリーハンドで荷主の物流を最適化できますとの売り込みで同業他社との取り合いが目立ちましたが、今では、アセット、ノンアセットなどとは関係なく物流システムの設計から管理・運営までの業務全般を3PL事業者に委託しているのが現状のようです。日本市場でもアセット、ノンアセットの二極分化が起こるという見方がありましたがこの手の議論は現状では、ほぼ終息、今ではノンアセット型を標榜する3PL事業者が少なくなったように感じます。米国、欧州などもアセット型の3PLが主流のようですが、米国では高学歴のエリートが数多くの3PL事業に参画、コンサルを主体に荷主の物流戦略を担うノンアセットを主流に活動している話しを日本で生活基盤を持ち、日本で活躍している外国人コンサル組織の人達から聞いたことがございます。

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3.3PLの動機・目的(狙い)

  私が今まで取り組んだアウトソーシング(&3PL)業務の経験から委託側(荷主)と受託側(物流事業者)の動機・理由として、主に以下の目的・狙いがありました。荷主も物流企業も単純に売上(増収・増益狙い)を伸ばしたい、所有物流資産(倉庫などの自社所有物件・賃貸物件)を有効活用したいが大半でした。また、荷主(委託)側の狙いの中に自社で行うよりも、コスト削減やコストの明確化と物流改善ノウハウや人材不足を補えること、新規投資の抑制、コアビジネスへの集中、包括的な物流サービスを享受できること、また、物流精度・品質、納入先・得意先へのサービスレベルの向上などを目的(狙い)としたことが挙げられます。委託側である荷主の狙いとしては、物流トータルコストの削減が一番大きい要因でした。某企業の作業費の内訳(見積書)を下記に添付しました。

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4.3PL事業者に求められるもの

  3PLは、利益体質の転換戦略の手段としてこれからも活用していくと思われます。荷主は、コア業務に特化するために物流力の強い企業(コストの安い?)に物流をはじめコア以外の業務を委託する動きが強くなってきています。そこで、物流業務を受託する企業の資質も考えてみたいと思います。物流ノウハウ(物流業務の実務能力、分析力、提案力、技術力、IT対応力)を蓄積していること、ネットワーク(情報インフラ、輸送網、拠点網)を備えていること、そして、3PL的思考(荷主に貢献すると共に3PL事業者にも応分のメリットが享受できること)を持っていることが必須条件であると考えます。さらに、物流事業者が荷主に対して荷主側の立場で、物流改革を提案し、包括して物流業務を受託し遂行することと言われています。基本的には、物流の専門的なノウハウを持った第三者である物流事業者が荷主の立場にたって、物流の企画・設計・運営を行うと共に企業の重要な経営課題として注目されている物流サービスレベル(納期、品質・精度、ローコスト)の 向上に寄与することだと考えます。それは、3PL事業者が荷主の物流部門に成り代わり、物流全体の企画、設計からリアル物流(実運用)を担うことだと考えます。さらに改善を続ける力量を持っていること、システム構築力、総合力が求められています。究極的には、荷主の売上増、物流コストの削減で荷主の成長に寄与できれば最高です。当然、荷主 と物流事業者という利益相反する関係による不都合を改善するために、荷主と3PL事業者の収益確保(ウィンウィンの関係)も求められる重要なポイントだと考えます。

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5.3PLで荷主(企業)を成長させることが重要

  3PL市場のニーズは、主に物流コストの削減にありました。例えば、自社雇用の従業員が物流業務を行っていた荷主の場合、それをアウトソーシングするだけで、3PL事業者がパート・アルバイトを多用するなどの人件費@の違いにより、物流コストが削減できることになります。近年においてもなお3PL市場の拡大トレンドが続いている理由は、3PLによる一時的な物流コストの削減に留まらず、継続的な物流コストの削減につながる提案や、荷主の物流ニーズに応える物流システムの構築など、提案型の3PLに進化していることが挙げられます。例えば、物流の「品質」「納期」「コスト」を大きく左右する物量波動への対処があります。物流の現場が、物量予測に関する情報を入手できない場合、人やトラックの確保が過剰・過少となって高コスト化し、人やトラックの確保が不足した場合、サービス精度・品質の低下、納期の遅延などを起こしたりします。提案型3PLであれば、荷主の適切な部門と連携しながら、必要なタイミングで物量予測情報を入手することで、物流コストの削減、納期など、荷主の物流ニーズに応える体制を構築する努力ができると思います。この努力が3PL事業者の収益に関わってくるからです。

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6.これからの3PL事業者

  これからは3PL事業者と荷主企業が共にコラボして、優れた能力を十分に引き出す土俵作りをすることが重要なポイントと考えます。それは、3PL契約は短期指向を改め、中長期的な視点に立って、荷主企業自らが良好なパートナーシップ を醸成し、荷主企業と3PL事業者、双方が努力に見合った成果を享受できるように変革していくことだと考えます。これからは、益々人件費@の上昇が見込まれ、労働集約型の物流業界においても労働力の分捕り合戦が早晩訪れ、人手不足の解消策に振りまわされる時代になると危惧しています。人集めと先進的な物流改革の荷主要望に対処できない3PL事業者は、自然と淘汰されてしまいます。また、人件費@の上昇は3PL事業者のコストアップ要因であり、これに対応しなければ不採算業務が増加することにつながり利益無き成長になってしまいます。自社物流を実施している荷主も人手不足対策の手段として3PLを検討する傾向が出て来ると思われます。反面、3PL事業者は逃げ道がありません。3PL事業者は、IT、マテハンやロボットなどへの投資で物流の自動化・省力化システムなどの導入で人手を最小限に抑え、人件費上昇への対応力を培い3PL市場を牽引していく気概で事業活動をして欲しいものです。但し、荷主あっての3PL市場であることを忘れないこと、3PL市場が拡大しているとはいうものの、人手不足、人件費@の上昇、配送コストの上昇などで3PL市場を取り巻く環境は、楽観視できるものではないと考えます。市場を成長させてきた3PL事業者でも同業との競合が熾烈になり生き残れる保証はありませんが提案型3PL事業を進化させ、物流の専門家として荷主の成長を支援することで市場拡大(優勝劣敗)を目指すことができると考えます。3PL事業者は、短期的な利益を放棄してでも長期的な成長を視野に入れて目に見えるもの、見えないものの物流課題を荷主に助言することを繰り返し、将来的な荷主の成長に寄与するという考え方もあるのではないかと考えます。荷主が成長することで3PL事業者や沢山の関連企業が共存共栄で成長します。荷主企業の成長こそが3PL市場の拡大を牽引すること、3PL事業者も共に成長していくのではないでしょうか。共存共栄で成長した実例は山ほどあります。これからの3PL事業者は、将来性を見据えて成長性のある荷主企業を探し当てること、その荷主企業を育てる意識を持ち、実行し、荷主と共存共栄の道を開拓するものが勝ち組となり、3PL事業者の成長の早道と考えます。3PL事業者が受託した事例を簡単にご紹介します。荷主の売上高年間≒280億円でスタート、15年後の売上高≒2,120億円と荷主が成長しました。同時に3PL事業者も取り扱い物量、売上高共に10倍増、収益も上々とのことでした。世の中には、荷主と3PL事業者が共に成長している業種業態が沢山あります。良き荷主を勝ち取ることが3PL事業者の勝ち組になる早道であり目指したいものです。

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7.最後に・・・。

  近年、物流事業者、荷主企業の双方で物流機能強化に向けた取り組みが積極化しています。この背景には経済の足踏み、高齢化の進展、ネット通販市場の拡大などによる消費者の購買スタイルの変化と著しい小口化、多頻度化、スピード納品などが挙げられます。具体的には3PLなどの物流関連テクノロジーの定着、REATを通じた近代的な素晴らしい物流施設が増えており、テナントで入居した3PL事業者(企業)の職場環境の充実、雇用の確保、定着率の向上、働く意識高揚にも繋がり、物流機能強化に向けた具体的な取り組みが始まっています。物流事業者は、輸配送・保管サ-ビスの高度化、流通加工機能の強化などを進めているほか、流通系の荷主企業も、店舗網の拡大や店舗運営の効率性向上のために一括納品、ドミナント方式の出店、ゾーン設定による2回転配送など高度化を進めています。こうした物流機能強化の動きは、高齢者や共働き・単身世帯の増加といった変化に対応したサービスを支援する日本独自の3PL事業の確立が望まれています。さらに、二極分化(優勝劣敗)は、世の常、日本のリアル物流を担う3PL市場の健全な発展とより良い方向に拡大・変化していくことを期待しています。

以上



(C)2016 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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第345号 物流会社のKPIにおける“オペレーション”と“戦略”の違いとは(2016年8月10日発行) /logistics-345/ /logistics-345/#respond Tue, 09 Aug 2016 00:18:35 +0000 /?p=11757 ロジスティクスコンサルタント 久保田 精一

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執筆者 久保田 精一
(ロジスティクスコンサルタント)

 執筆者略歴 ▼
  • 著者略歴等
    • 熊本県出身
    • 1995年 東京大学 教養学部教養学科 卒
    • 1995~1996年 国土交通省系独立行政法人
    • 1997~2004年 財務省系シンクタンク(財団法人日本システム開発研究所)
      産業振興、物流等の調査業務を担当
    • 2004~2015年 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所
      物流コスト、物流システム機器等の調査業務を担当
    • 2015年7月 独立

 

目次

1.はじめに

  荷主であるか物流会社であるかを問わず、KPI(重要業績評価指標、Key Performance Indicator(s))は、物流管理における主要な手法であると言える。そのため当ロジスティクスレビューにおいても過去2回ほど取り上げて来たが(注1)、これはいずれも荷主を対象とした内容であった。一方で近年、物流会社の3PL化、サービス高度化の流れが強まるに伴い、KPIを導入する機運が高まって来ているが、一般的な情報が不足しているうえ、物流における適用上の問題があまり議論されていない傾向がある。そこで今回は物流会社におけるKPI導入をテーマとして取り上げることとしたい。
  周知のとおり国土交通省では、物流事業者の経営高度化を図るため、平成26年度に「KPI導入の手引き」を作成し、公表している(注2)。同「手引き」では主として ①荷主(顧客)との連携におけるKPIの活用、②現場改善におけるKPIの活用 ─という2点に焦点を当て、導入に当たってのポイントなどを紹介している。手引きはウェブ上に無料で公開されているので、本稿と併せてご参照いただきたい(注2)。ただし「手引き」としての性質上、掲載できなかった論点もある。その一つが本稿タイトルにも掲げた「オペレーションと戦略の視点の違い」である。

2.様々なKPI利用パターン

  まず、KPIの実務的適用パターンを確認しておきたい。図表1は、KPIに関わる大手物流事業者の動きを(ランダムに)整理したものである。
  KPIの利用場面は多様である。KPI自体は管理ツール(道具)に過ぎないが、道具は「利用目的」によって如何様にも利用できるからである。
  図表1の例で言えば、ヤマト運輸のように、経営計画のマネジメントにおいて利用されるケースもあれば、業務効率等のオペレーション可視化・改善を目的とするものもある。また、顧客に対するサービスマネジメントの観点で、顧客満足度や品質KPIの高さを打ち出すケースもある。ここでは例示しないが、CSRやES(従業員満足度)などをKPI管理する例もある。
  とは言え、「ありとあらゆるパターンがある」というだけでは議論にならないので、利用パターンを想定して議論を進めることとしたい。物流会社のKPI利用事例を見ると、「オペレーション」、「顧客」、「経営戦略」の可視化・管理を目的として利用されるケースが多いように思われる。このうち本稿では「オペレーション」と「戦略」のケースに絞って検討を行う。

図表1 物流事業者におけるKPIに関する動向


資料:各社ウェブ、報道資料より作成

*画像をClickすると拡大画像が見られます。

3.オペレーション(業務)の可視化・改善とKPI

  輸送や庫内作業などのオペレーションの可視化・改善を目的としたKPIは、非常に広く利用されている。現場レベルでのKPI利用が先行している傾向が強く、特に生産性の管理にフォーカスした取組が進んでいる。
  その背景には、物流業の特性がある。
  物流業は、人件費を含む固定的支出が費用に占める比率が高い。トラック輸送業務であれば、人件費、車両の減価償却費・修繕費、租税・保険等がコストの過半を占め(注3)、庫内業務であれば、人件費、スペース費がコストの相当部分を占める。
  これに対して、収入は物量に応じて変動する。そして一般に物流は需給の調整弁としての機能を有することから、製造等に比して変動幅が大きいのが特徴である。すなわち、生産性(アウトプット÷インプットにより定義。図表2参照)の分母たる投入要素が固定的であるのに対し分子である処理量が大きく変動するため、生産性の安定化が重要な意味を持ってくるのである。

図表2 物流現場におけるKPI利用の背景とKPI設定の例(庫内作業)


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  また、物流会社の売上高経常利益率は5%程度とサービス業などと比べて低く(注4)、生産性のマネジメントが、事業の収益性を大きく左右することにも留意が必要である。
  図表3では、利益率が5%程度のビジネスにおいて、生産性が収益をどの程度左右するかをシミュレーションしている。これから分かるとおり、利益率の低いビジネスにおいては、売上高の増減は利益をそれほど左右しないが、生産性はわずかな増減であっても利益を大きく左右することになる。
  物流業はこのような背景から言って生産性の精緻な管理の必要性が高く、そのためにオペレーションレベルでのKPIの活用が進んでいると見られる。

図表3 生産性の改善による修正改善効果の大きさ


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4.オペレーションにおけるKPI活用のポイント

  オペレーションにおけるKPIの活用方法については、前述の国交省「手引き」に詳細に掲載されているので、ここでは最も重要と思われるポイントのみを述べる。
  結論としては、「フォーカスを絞ること」である。KPIは「定量化による効果・メリット」に着目されることが多いが、より重要なKPIのコンセプトは「対象を絞り込むこと」である。「KPIによる管理」の最も簡単な説明は、①管理対象たる様々な数値の中の一部にフォーカスを当て②その数値にコミットしていくということである。
  いま手元に、あるメーカーが作成したKPIの体系図がある。この体系図では100以上のKPIが管理対象として挙げられているが、これを全て現実的に管理できるとは考えづらいが、このように、必要以上に多くのKPIを取得するケースは非常に多い。
  その背景には、KPIを選定するに当たって利害調整型のアプローチを取ること、つまり、まず関連部署から必要なKPIを挙げさせ、その最小公倍数によってKPIの体系を作成すること ─がその主因だと考えられる。必要と言われた指標を取ったがために、指標体系が膨大になり、管理不可能な状態に陥ってしまうケースは良く見受けられる。
  よって、まずは効果が高く、容易に取り組めるよう「領域を絞り込んで」、「小さく始める」ことを心がけるべきである。

5.経営戦略の具現化ツールとしてのKPI

  前項はオペレーション改善という「ミクロレベル」に着目したKPIについて述べたが、企業全体の経営戦略という「マクロレベル」でKPIを用いるケースも多く見られる。
  前述のとおり、物流業においては、現場オペレーションレベルでKPIの導入が進んでいる実態があるため、KPIと言えば現場レベルの指標をイメージされるケースが多いかも知れないが、KPIを巡る議論の経緯から言えば、経営戦略における活用の方が、KPIの「本流」と言えるかも知れない。
  例えば、KPIを組み込んだ代表的なマネジメント手法として、「バランススコアカード(BSC)」というものがある。BSCとは、企業戦略を踏まえ、「財務」「顧客」「業務プロセス」「イノベーションと学習」という4つの視点からなる活動項目を導きだし、さらに活動項目同士を階層的に整理した「戦略マップ(図表4)」を描いたうえで、戦略マップに基づいて管理するといった仕組みである。
  BSCにおけるKPIは、経営戦略を活動レベルに落とし込むための手段であり、オペレーションの改善自体は従属的な位置づけに過ぎない。BSCの4つの視点の一つとして「業務プロセスの視点」が挙げられているが、業務プロセスを改善すること自体は主たる論点ではなく、「戦略上、どのような業務プロセスの改善に取り組むか」がポイントとなっている。
  また、KPIを活用する業務改善手法として、ベンチマーキングという手法が知られているが、業務効率の向上を通じた競争力の強化を指向するベンチマーキングにおいても、ベースとなっているのは経営戦略における視点である(注5)。
  例えば、ベンチマーキングの例としてよく知られているのはサウスウエスト航空の取り組みである。同社は、航空機の回転効率(ターンアラウンド)を上げることを目的に、空港における駐機時間等の削減を図ることとし、自動車レースのピットイン作業をベストプラクティスと見なして、ベンチマーキングに取り組んだことが知られている。
  ただ、同社のベンチマーキングにおいては、単に運行効率を上げることに焦点があるのではなく、他の大手航空会社がハブ&スポーク式の運行ネットワークを構築しているのに対し、小規模な空港同士を効率的につなぐといった活動システム全体としての優位性において、航空機の回転効率の削減が位置づけられているとされている(注6)。

図表4 BSCにおける戦略マップの例


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6.「経営戦略におけるKPI」と「オペレーションにおけるKPI」の関係

  前項で述べた考え方に対して、「戦略とオペレーション効率化を分けるべきではない」、あるいは、「個々の業務効率化も企業戦略の一環に位置づけるべき」といった指摘もあり得るだろう。しかしながら、こと物流においては、これは分けて考えた方が良い。
  なぜなら、企業がオペレーション効率化に取り組むのは、何も「コストリーダーシップ戦略」のように、「効率化」自体を戦略的に選択した場合には限られないからであり、業務効率化は企業の戦略にかかわらず、ほぼ全ての場合に実施する必要があるからである(図表5)。
  例えばAmazon社は創業時点からEC市場における戦略的ポジショニングを重視していることが知られているが、同時に業務効率化にも高い関心を有していることが知られている。例えば米国のある例では、カスタマーサービス担当は1分当たり6通のメールに回答することが求められているというように、数値に基づく業務効率の管理をハイレベルで実行していることが推察される(注7)。
  日本企業でも同様のことは言える。例えばコンビニエンスストアチェーンは、GMS等と比べると相対的に高コストな流通網を有しており、高品質・高サービスの物流を戦略的優位性の一つとしているが、同時にコスト削減にも熱心である(注8)。
  このように、戦略的優位性を追求することと、オペレーションの効率化を追求することとは、多くの場合に排他的な関係でないことは明らかである。
  また長期的戦略と短期的効率の追求では、管理すべき視点が異なることも留意すべきである。
  BSCにおいて良く論じられるとおり、効率化を目的とするKPIは過去の業績の財務的側面に注目して設定されることが多い一方、経営戦略においては、長期的な成長を担保するための人材やイノベーション、あるいは品質などの非財務的評価も重要である。これを踏まえ、BSCでは長期的観点でのKPIを設定することが推奨されている。
  この例からも分かるとおり、戦略とオペレーション効率は、いずれも重要であり、片方が他方を代替する関係にはない。

図表5 ポジションにおける優位性の有無に関わらず業務効率化を進める必要がある


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7.物流会社の経営戦略とKPI

  以上からKPIを経営戦略の視点で用いる必要性は確認できたが、一方で、物流会社の現実の経営においてどのようなKPIを使うべきであるか、については、企業の実例が入手困難であることもあり(注9)、具体的なイメージがつかみ辛いのも事実である。
  そこで以下では、ある経営戦略においてどのようなKPIが適応するか、もう少し具体的に考えてみたい。なお、戦略の類型については様々な考え方があるが、本稿の主題ではないため、ここでは極めて大ざっぱに、代表的な2つの類型を想定し整理することとする。
①市場におけるコストリーダーシップ戦略をとる場合
  サービスを定型化し、規模の利益を得ることで低コストでのサービスを提供するケース、LCCのように顧客が重視しないサービスを廃止してコストを抑えるケースなどが該当する。ただし物流業においては、高付加価値領域の拡大を戦略目標とする企業がほとんどで、コスト競争力の強化を全面に打ち出している物流会社は必ずしも多くない。
  その中でハマキョウレックスは、同社中期計画の冒頭に「高いコスト意識持ち・・日本一コスト競争力のある物流会社を目指す」ことを明記しており、コスト競争力を前面に掲げている数少ない企業である(注10)。同社は「日々収支(日次収支)」を全社的に取り入れ、高効率な経営を指向していることで知られているが、日次収支という財務指標が主たるKPIとして利用されていると捉えることができる。
  なお、一般に収支変動の影響が大きいビジネスにおいては、四半期などの単位では収支が悪化した場合に打ち手が無くなることから、早い段階で財務のKPIを把握し、PDCAを回す必要がある。これは物流以外の業界でも同様であり、例えばIYグループでは、ヨーカドー等の店舗毎の損益が日単位でほぼリアルタイムに確認でき、日次の収支に問題があれば即、役員室に関係者を集めて対策会議を開くという(注11)。
  物流会社は、図表2で示したとおり収支変動の影響を受けやすい業種であり、財務KPIの活用サイクルの迅速さが、KPI設定の重要ポイントであることは間違いない。
  もう一点の評価ポイントは、売上等の事業規模である。
  よく知られているとおり、成長率が高い市場においては、収益性を度外視した事業規模拡大競争が繰り広げられることがある。宅配業界は90年代初頭において2桁、それ以降も年率数%の高成長が続いた時期があったが、その間、企業間での熾烈なシェア争いが行われたことは記憶に新しい。現在はEC事業者がプレイヤーに加わり、各社のシェア競争が続いているところである。
  純粋な物流会社ではないが、ヤフーの連結子会社であるアスクルは、ヤフーが主導するBtoC通販事業の物流インフラを担っており、また、都市部に宅配ネットワークを有する「エコ配」の買収等により集配網を強化するといった動きもある。同社はBtoC事業において売上高(トップライン)の成長を最重視する方針を掲げ、大規模な物流拠点を各地に整備していることが知られている(注12)。
  これは一例であるが、成長期の市場においては、一般的に収益ではなく規模拡大を指標とすることも考えられる。
②特定の市場への集中化や市場における差別化を指向する場合
  前項で見たコスト競争に重点を置く方向性とは逆に、特定の(ニッチな)市場に集中化する戦略や、差別化を指向する戦略も考えられる。この場合は、当該特定市場を深耕することでコスト競争力を高めることや、品質やサービスレベルを差別化することなどがキーポイントとなる。また、品質やサービスレベルの差別化のためには、人材・設備などの事業インフラの構築もポイントとなる。これを踏まえて事例を見て行こう。
  良く知られている通り、日立物流は3PL市場のうち、得意とする業界に絞り当該業界の物流の「プラットフォーム」を形成することを戦略として掲げており、結果、収益面で見て長期的な成長を実現している。また、アルプス物流、ニチレイロジグループ、キユーソー流通システムといった企業は、電子部品物流、コールドチェーンといった特定のサービスに注力した事業展開を行っており、前二社は相対的に高い利益をあげることに成功している(以上は、いずれも国内事業についてのみの説明である)。
  この中でアルプス物流は、上記のとおり電子部品の物流に強みを持つが、易損品でありかつ在庫コストの高い電子部品物流においては、高い品質の物流が要求される。そのため同社は戦略として「絶対品質の保証」を掲げており、誤出荷率等のKPIを示したうえでPPM 管理を標榜している(注13)。品質に特化したKPIの取り組みは、食品・医薬品などの業界でも確認することができる(図表1も参照)。
  一方、特定の業界に特化した品質・サービスを担保するうえでは、人材教育やイノベーションなどの視点も欠かせない。実際、電子機器や医薬品等の特定の業界に強い企業は、教育に力を入れている企業が多く見られる。例えば上記の日立物流は、「日立物流グループ能力開発指針」などに基づいた体系的な人材育成で知られている(注14)。知りうる限りKPIとして定量管理しているという訳ではないようだが(注15)、「35歳までにTOEICスコア○以上」などの明確な目標を置いて取り組んでいるようである。
  このように、特定の市場への集中化や、市場における差別化を指向する場合には、品質やサービスレベルのKPIや、人材・イノベーションなどのKPIが適用可能だと考えられる。

8.最後に

  物流会社のKPIは、非常に多様な論点があるが、本稿では導入時点での大きな分岐点となる「戦略かオペレーションか」という問題点に絞って述べて来た。あくまで導入レベルの解説に留まるが、参考としていただければ幸いである。「オペレーション」や「顧客」のKPIについては、前述の国交省「手引き」のほか、雑誌記事(注15)なども入手可能であるので、必要に応じて参照して頂きたい。

注1: 過去の関連記事は以下のとおり
第307号 荷主はどのようなKPIでロジスティクスを管理しているか
-/logistics-307/
第168号ロジスティクスの指標管理に関する課題
-/logistics-168/
注2: 国土交通省「物流KPI導入の手引き」
www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000218.html
なお手引き作成には受託側事務局として筆者も関与している。
注3: 例えば全日本トラック協会「経営分析報告書-平成25年度決算版-」の「一般貨物運送事業損益明細表」によると、売上に対する費用の内訳のうち、ドライバー等の直接人件費37.2%、減価償却費・修繕費11.3%、保険料=2.2%となり売上高の50.7%を占める。
注4: 財務省「法人企業統計」によると、サービス業の経常利益率が5.8%であるのに対し、陸運は5.0%。製造業の5.5%よりも低い(平成25年度)。
注5: ロバート.C.キャンプ「ビジネスプロセスベンチマーキング」などを参照すれば分かるとおり、そもそも戦略ポジショニングを考慮したうえでなお、業務効率の日米差が大きいことがベンチマーキングの議論の出発点となっている。
注6: ウェブ上にも関連する文献は多数みられるが、例えばマイケル・ポーター「戦略の本質」ハーバードビジネスレビュー、2011年6月号など参照。
注7: リチャード・ブラント著、井口耕二訳「ワンクリック/ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛」。ただし同社のオフィシャルな情報ではないため事実関係が異なる可能性がある。
注8: 例えばセブンイレブンがオペレーションレベルでの輸送効率管理を精細に行っている実態は、信田洋二「セブン-イレブンの『物流』研究」などから伺い知れる。
注9: 例えばUPSでは以下の4つの指標を長期的改善目標としているといったレポートがあるが、「competitive position」をどのようなKPIで表現しているかなどは開示されていない。
・Customer Satisfaction Index
・Employee Relations Index
・competitive position
・time in transit.
資料:ハーバードビジネススクール「バランススコアカードレポート」より
注10: ハマキョウレックス新中期経営計画(平成27年5月)。なお同計画において「各支社・管理部が一体となり、日々収支を確認することで、会社全体として無駄なコストの削減を図る」ことがうたわれている。
注11: 2013年11月18日TBS「ニュース23」より。なおファーストリテイリング(ユニクロ)などでも同様の仕組みがあることが知られている。
注12: 2014年5月期および2015年5月期決算説明資料。なお同社のBtoC事業自体は低コスト戦略を指向している訳ではない。また、同社の説明では、BtoB事業を基軸にセンターを整備し、それを用いてBtoC事業を立ち上げることとしている。
注13: 決算説明会資料(2015年3月期)資料。
-http://www.alps-logistics.jp/pdf/ir/15/data2015/exp15.pdf
また100%の在庫精度保証など品質管理については以下資料参照。
-http://www.alps-logistics.jp/pdf/ir/14/gm_bizrep14.pdf
-http://www.alps-logistics.jp/pdf/ir/11/gm_bizrep11.pdf
注14: 多賀鉄朗(日立物流人事労務部)「相手の心に火を灯す、実践的で“情熱”を持った人材育成・能力開発の推進」ロジスティクスシステム、2009年2-3号
注15: 人材育成を定量的に評価している事例もいくつか知られている。例えば以下において、現場スタッフの能力評価を定量的に行っている事例が掲載されている。
「DHLサプライチェーンにおけるKPI活用事例」月刊ロジスティクスビジネス、2016年1月号

以上


(C)2016 Seiichi Kubota & Sakata Warehouse, Inc.

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第281号 物流料金体系が変わる:変動・包括契約への変革にどう対応するか(2013年12月5日発行) /logistics-281/ /logistics-281/#respond Thu, 05 Dec 2013 00:24:43 +0000 /?p=9332 ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表 野口 英雄

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執筆者  野口 英雄
(ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表)

 執筆者略歴 ▼
  • Corporate Profile
    主な経歴
    • 1943年 生まれ
    • 1962年 味の素株式会社・中央研究所入社
    • 1975年 同・本社物流部
    • 1985年 物流子会社出向(大阪)
    • 1989年 同・株式会社サンミックス出向(現味の素物流(株)、コールドライナー事業部長、取締役)
    • 1996年 味の素株式会社退職、昭和冷蔵株式会社入社(冷蔵事業部長、取締役)
    • 1999年 株式会社カサイ経営入門、翌年 (有)エルエスオフィス設立
      現在群馬県立農林大学校非常勤講師、横浜市中小企業アドバイザー、
      (社)日本ロジスティクスシステム協会講師等を歴任
    • 2010年 ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表
    活動領域
      食品ロジスティクスに軸足を置き、中でも低温物流の体系化に力を注いでいる
      :鮮度・品質・衛生管理が基本、低温物流の著作3冊出版、その他共著5冊
      特にトラック・倉庫業を中心とする物流業界の地位向上に微力をささげたい
    私のモットー
    • 物流は単位機能として重要だが、今はロジスティクスという市場・消費者視点、トータルシステムアプローチが求められている
    • ロジスティクスはマーケティングの体系要素であり、コスト・効率中心の物流とは攻め口が違う
    • 従って3PLの出発点はあくまでマーケットインで、既存物流業の延長ではない
    • 学ぶこと、日々の改善が基本であり、やれば必ず先が見えてくる
    保有資格
    • 運行管理者
    • 第一種衛生管理者
    • 物流技術管理士

 

目次

1.物流事業規制緩和:料金設定自由化

  平成以降物流事業の規制緩和が進められ、料金は事後届出制となり原則自由化された。
(物流事業の規制緩和要点:運送)
  ・認可制から届出制へ:料金事後届出制➝規定範囲内であれば原価計算書提出省略可
  ・営業区域の廃止  :従来は片地主義➝発・着地限定
  ・最低保有台数の縮小:新規参入緩和➝一方で安全重視等
  結局は従来通りの料金体系が維持されることになったが、そのレベルは国が定めている
基準値の30~40%レスといった実勢で推移している。これでも物流事業者の経営は成り立ち、物流業界も厳然として存在している。
  一方で消費領域における顧客の要求は大きく変わった。即ち変動かつ包括的な料金建てであり、従来の原価計算や契約概念を根本から揺るがすものである。
(顧客側のニーズ:物流~ロジスティクスへ)
  ・財務オフバランス化:固定設備を持たない➝ノンアセット化、変化への対応
  ・物流コスト変動費化:アウトソーシング➝リスク回避の狙いも
  ・歩率~包括契約  :センターフィーの設定に繋げる➝ベンダーに要求
  そもそも物流原価は物理的要素で構成されているが、これに商品価額準拠という要素が
持ち込まれた。これは商流要素であり、しかも変動的である。
  所轄官庁である国交省は、物流事業者に対し原価計算上認めない形を幾つか通達しており、この歩率方式も含まれる。しかし顧客側には何の規制もなく、現実的にはそのペースが罷り通っている。時代の変化は止むを得ないとしても、条件整備をしなければ事業者にとってこれは極めてリスクの高い契約方式となる。物流業界は著しい実勢相場の低迷と、料金体系の変化に一体どのような手を打っているのだろうか。

2.歩率契約の危うさ:商流条件の変化に耐え得るか

  歩率契約の基本は次のようなものである。
  ・歩率設定   :総物流コスト/商品通過金額➝一定期間の条件変更を包括的に容認
  ・一気通貫   :物流センターコスト~店舗納品コスト➝通関・調達コスト等を含める場合もある
  ・センターフィー:流通業はこれに利益を乗せてベンダー側に要求➝通常倍程度のレベル
  商品通過金額は市場の趨勢により変動的であり、また特売等の人為的な価格低下もある。昨今のデフレ基調ではこの契約方式は事業者側にとって明らかに不利であり、事業採算として成り立っているケースも極めて少ない。
  物流コストで変動的な要因となるのは在庫量やアイテム数に加えて、店舗数やその出店エリア等である。店舗の改廃は当然盛んに行われ、広域化する。これらの変化をある範囲内で容認するわけだが、基本を業務委託契約書でどこまでカバーし切れるかが問題である。通常契約期間が1年であれば、どんな事態が生じてもその間は耐えなければならない。
  さらには商品ペナルティーに関る取り決めも重要である。例えば欠品が生じた場合、それがどちらの責任であるのか明らかに出来なければ、通常は業務受託側の責に帰することになる。そしてその弁済額が販売チャンスロスとしての売価か、仕入れ価格としての納価なのかで、その間は倍程度の開きがある。これは物流事業採算を吹き飛ばすほどのものになる。まずは責任の所在を明らかにする日常業務データーの収集が不可欠で、これが管理状況の「見える化」である。いずれにしてもこれを含め契約書でどこまで明確化出来るかが問われていく。下表に主なコスト要素を示すが、この中でコストドライバーとその感度を充分に把握しておくことが重要である。

*画像をClickすると拡大画像が見られます。

3.顧客ニーズの変化:コスト変動費化・採算管理の簡素化

  従来からの物流料金体系は固定費要素が大きく、また設定根拠が分かりにくいということで、顧客側から改革への要望が出されていた。
(従来の物流料金体系:要点)

運賃: 車種別時間制・距離制➝原則車単位貸切
特別積み合せ(旧路線業)はトン・キロ制➝小口混載
各種割増
倉庫料: 保管料(月間)=積数×保管料単価➝積数とは月間入庫量+期別在庫量累計期は常温系が10日、
低温系が15日単位(その根拠は)単価は商品群別従価率+従量率、低温は従量率のみ
荷役料=商品群別単価設定(従量率のみ、数量比例)

  例えば保管料は、1日滞留しただけでもその期間におけるフル原価が課せられるのはどう考えても不合理であり、日割り要求は以前からあった。在庫回転を上げれば倉庫の滞留期間は短くなり、そのスピードに対応出来れば倉庫料トータルの収入は増えるはずだが、この考え方は依然として変わらない。
  運賃の個建設定やトン・キロ制は共同配送では古くから行われており、これをさらに理論的に拡大する方向はあるのではないか。保管料の日割り計算もこの範疇に入るだろう。但しこれらの前提は顧客毎の専用貸切りではなく、共通システムなので一定の制約がかかる。ある程度の幅で標準化された物流サービス内における、変動的な料金設定である。個別要求を重視するのであれば、当然物流コストは固定化される。
  顧客ニーズが歩率・包括契約であるということは、物流コスト把握の簡素化という狙いもある。仕入原価に歩率を掛ければ物流コストが算出出来るのは実に簡単で、採算管理もしやすい。難しい物流業界の論理に従わなくてもコスト管理が可能になり、もちろんセンターフィーの設定にも貢献する。お互いの利害の対立をどう合目的なものにするかかが今、問われている。業界としてこれらの要求を拒否し、従来方式でしか対応しないということでいつまでビジネスが可能になるのか。

4.原価計算の基礎はどうあるべきか:稼働率向上を図る

  物流事業者としての経営努力はまず如何にして設備稼働率を上げるかということであり、究極の形は365日・24時間稼働である。単位時間当りの固定費を削減し、扱い量当りの変動費効率を上げる。この体制を組むには当然要員コストが高くなる。即ち交代シフト編成の付加要員率、深夜割増等である。現状の労基法をクリアするためには、20~30%程度の増員が必要になる。予備車輌等のコストも同様である。コンビニ業務への対応は基本的にこの形で、全時間帯をフルに活用する。
  顧客はこの時間帯の必要部分をスポット買いするが、その場合は当然この付加コストを含めたものでなければならない。ところがこれを前述した従来の時間制で要求する。それはいいとこ取りというもので、理屈に合わない。フル稼働に近付けることでコスト効率や生産性は上がるが、リスクも増大し業務品質の向上が必須となる。この前提条件を顧客に理解してもらう必要があるが、中々そうならず非正規雇用や質を下げての対応になりがちである。
  これ以外に付加しなければならないのは安全・環境対応コストや、新規業務立上げ等の創業コストである。新規立上げには一定の訓練や、応援コストも掛かる。もちろんそれを最小化することが競争であり、それが高品質ということになるが、コスト要求に加えるべき要素である。物流原価は重量・距離・時間等の物理的な要素が基本となるが、これに商品価額や不定形コストをどう加味するかが重大な課題である。いずれにしても事業者側の収受料金が変動的になるのであれば、コストも変動的にして採算を確保する方策が必要になる。これが業務品質管理の課題でもあり、業務改革である。そこではリスク対策や危機管理が重要になる。

5.コンペの在り方:業務提案の競争であるべき

  どのようなビジネスでも競争は熾烈であり、大きくは需要と供給のバランスで価格が決定される。もちろん物流においても例外ではなく、コンペで横並び比較してコスト評価で落札するという過酷なことになる。顧客がこの一面的な判断で、業務の立ち上げや安定化までの時間等でトラブルを抱えるということもある。
(コンペの在り方:業務提案競争)
  ・必要な情報開示   :目的確認、守秘義務➝業務・コスト設計
  ・料金提案とコスト試算:専用か共同か、コスト改善額➝シミュレーション
  ・プレゼンの充実   :新システム運用➝ビジュアル化
  コンペは単に見積書提出程度のレベルではなく、顧客ニーズを踏まえた新規業務提案で
あり、膨大な作業が伴ってくる。これに対し参加社に何らかのフィーを支払うルールを形成すべきである。この実態は全くないわけではなく、理解ある顧客が真摯な提案を促すために運営している。
  いずれにしても顧客側も物流事業者側も、自らに都合のいい論理を並べ立てるのではなく、流通の変革を前提にあるべき姿を共有化して真のパートナーシップを再構築していくべきである。商物分離ということで物理的機能だけを前提にした料金体系に、商流的要素が加わるというロジスティクスの領域では、もはや避けられない事態が生じているのである。過去のコンサル経験の中で、タリフ通りに支払っているというケースが3件ほどあった。顧客が物流に無知であり、物流事業者としては正当な要求をしているという一方通行では、ビジネス関係にはならない。そして不公正な商習慣を是正するという、条件整備が必要であることは言うまでもない。

(ご参考までに:日本物流学会誌)
  ・2007年:一般研究論文、筆者著、「在庫管理の適正化を図る在庫日数に連動した保管料契約方式の考察」
  ・2008年:審査付き論文、筆者著、「3PLビジネスにおける契約料率設定に関する一考察」

以上


(C)2013 Hideo Noguchi & Sakata Warehouse, Inc.

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第140号3PLを考える:これで物流業界は変われるか(2008年1月22日発行) /logistics-140/ /logistics-140/#respond Tue, 22 Jan 2008 02:29:44 +0000 /jp/?p=2590 ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表取締役 野口 英雄

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執筆者 野口 英雄
ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表取締役
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1943年 生まれ
    • 1962年 味の素株式会社・中央研究所入所
    • 1975年 同・本社物流部へ異動
    • 1985年 同・物流子会社へ出向(大阪)
    • 1989年 同・株式会社サンミックスへ出向(コールドライナー事業担当、取締役)
    • 1991年 日本物流大賞受賞:「高密度共配による配送効率の飛躍的向上」
    • 1994年 同・本社物流部へ復職、96年退職(専任部長)
    • 1996年 昭和冷蔵株式会社入社(冷蔵事業部長、取締役)、98年退職
    • 1999年 株式会社カサイ経営入社 ~パートナーコンサルタント
    • 2000年 有限会社エルエスオフィス設立
    • 2001年 独立し現在に至る
      群馬県立農林大学校非常勤講師
      日本ロジスティクスシステム協会講師
    保有資格
    • 物流技術管理士(第26期)
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会正会員
    • 日本ロジスティクスシステム協会会員
    • 日本物流技術管理士会会員
    主要著書・論文
    • 『低温物流とSCMがロジ・ビジネスの未来を拓く』―鮮度管理システムで顧客サービス競争に勝つ
    • 『低温物流の先進企業事例』―生鮮流通の業態・チャネル別戦略モデル
    • 『低温物流の実務マニュアル』―経営戦略・マネジメントとの連動

目次

1.米国におけるロジスティクス・ビジネスの変遷:4PLという新しい概念の意味

  親しくしてもらっている韓国の某アメリカ通の物流企業社長から聞いたことだが、3PLという業態が発生した経緯は、既存の物流事業者と新しいノンアセット型事業者の激しい競争らしい。既存とはトラック事業者(1PL:アセット)であり、新しい勢力とはフォワーダー(2PL:ノンアセット)である。この両業界が勝ち残るために一つの目標にしたのが提案型事業であり、これが3PLという業態になったという。従ってアセット型でもノンアセット型でもなく、前提は顧客への提案機能でありこれが大変重要だ。
  コントラクトビジネスは代理人として実事業者をシステムに組み入れて行うわけだから、これは主にノンアセット型だろう。そして新たに4PLという概念も生まれて、これはさらにコンサルティング機能を持つことだという。それは提案型事業には必須であって、ことさら4PLとするのは何故なのか。単なるロジスティクス・ビジネスとしてのマーケティング戦略の違いを出す狙いではないか。
  昨年CLM(ロジスティクス経営協会)がCSCMP(Pはプロフェッショナル)という名称に変わったのも、考えさせられる。サプライチェーンがロジスティクスの上位概念なのか。SCMが企業間のロジスティクス連鎖であればその範囲の広がりであって、別に上位ということではないだろう。

注) CLM:Council of Logistics Management
CSCMP:Council of Supply Chain Management Professional

2.初めて聞いた3PLという言葉

  困難な物流事業で汗まみれになっていた平成3年(1991年)頃、この言葉を初めて耳にした。時あたかもバブル崩壊の直後であり、低温系全国ネットワーク運営事業で、強大なフランチャイズビジネスを展開する外食産業が主な顧客であった。全国で1,000店舗以上のフランチャイジーを有する企業体のビジネスが大きな曲り角に差しかかり、トラブルが続発した。この対策として全国に散らばる現場を再度組織化し、対顧客窓口をカスタマー・サポート・センターとして本社に一元化した。顧客側窓口はもちろんフランチャイザーとしての本部である。こうすることによりコミュニケーションも良くなり、トラブルはかなり減少した。もちろん積極的な改善提案も行った。これは物流業としてのコールセンターの走りであり、ネーミングも我ながら良かったと思っている。ここで代行する業務はもちろん有料である。これが顧客に中々理解されなかったが、今ではすっかり定着しているようだ。
  この本社窓口組織(事業所)を見て、米国系食品メーカーでそのロジスティクスを本場で学んだ某氏が、これは3PLという新しい業態だと励ましてくれたのである。思わず何ですかそれはと聞き返してしまった。この時点ではもちろん3PLという言葉は輸入されていない。ロジスティクスという言葉が漸く広まって行ったのがこの頃ではなかったかと思う。ちなみにJILSの発足は平成4年(1992年)である。
  ECRという言葉が日本に入ってきたのは平成6年である。これは正確に覚えている。効率的消費者対応という概念で、これを実行するのがSCMとされた。それには品揃え(カテゴリー・マネジメント)や販促等の4つの要素があり、その内の1つが連続的補充(ロジスティクス)であった。直感的にロジスティクスはその程度の位置付けの概念ではないと思った。そしてロジスティクスでさえ巨大なシステムなのに、これを企業間連鎖させるという考え方にはいささか息が詰まるような気がした。SCMの運営をアウトソーシングする受け皿として3PLという概念も輸入されたように思う。

3.日本における概念定義

  その後コンサルタントの世界に入り、ある講演会で3PLの話をする機会があった。自分の物流ビジネス体験も含めて、アセット・ノンアセットの区分は関係なく、顧客のロジスティクス業務を代行するビジネスであるとしたら、あるシンクタンクの方からそれは違うという指摘を受けた。その方はノンアセットが正しい定義であると言われた。
  別に3PLの定義が正しいか正しくないかはどうでもよくて、要はロジスティクス・ビジネスとして顧客の信頼を得て、育っていけばいいと思う。日本における定義は大きく2つの視点に分かれている。1つは国が総合物流施策大綱で定義している、物流事業としての立場である。顧客に対して提案し、包括的に業務を受託する事業とある。これは正確で分かりやすい定義であると思う。
  もう1つはJILSの定義で、これはロジスティクスの1つの形態であるとしている。つまり荷主として業務をアウトソーシングすることを3PLと呼ぶというニュアンスがある。どこに視点を置くかで定義が変わってくる。
  そこに至る日本の経緯は、まず製造者や流通事業者自らがロジスティクスを行う事を1PLといい、次にそれを物流事業者が代行するのを2PL、そのどちらでもない形態が3PLというように言われている。当然物流業種以外も参入してくる。冒頭の米国の話とはいささか趣が異なっている。

3PLの位置付け


  日本の物流事業は依然として業態毎にすみ分けされ、その間の競争は余りない。料金も原則自由化とは言っても、旧料金体系が未だ通用している。それは料金届け出が一定のかたちになるよう国が求められているからだ。郵政がロジスティクス・ビジネスに参入してこの競争環境がどう変わっていくのか見ものである。グローバル競争の一角に少しでも早く食い込まなければ、世界の競争にますます置いていかれる。SCMは既にグローバルレベルでの展開になっている。

4.ロジスティクスレベルの提案型ビジネス

  物流とロジスティクスが同義語と考えられているフシがある。物流コスト管理をやり尽くし、もう物流部門等いらないとしている企業もある。物流子会社を設置する動機も安易である。そこに全ての業務を委託し丸投げするケースが多い。ロジスティクスは物流管理を含む体系で単なる物流機能だけではなく、計画・統制というマネジメントがコアである。そしてロジスティクスはマーケティングと一対の体系としてビジネスモデルを構築する。
  さらにロジスティクスとサプライチェーンの関係はと言えば、米国ではロジスティクスがサプライチェーンの一部と位置付けられている。だからこそ昨年CLMがCSCMPに衣替えされたのではないか。日本では企業単位のロジスティクスが、企業間に連鎖されることをSCMとしている。
  最近は物流だけではなくロジスティクスまでアウトソーシングし、自らはマーケティングに特化するという流れが加速している。コアとしての計画・統制機能を果たし、それ以外をアウトソーシングするならまだしも、フルアウトソーシングとは一体何を考えているのだろうか。これも物流程度にしか考えていないということではないか。依然として物流やロジスティクスのステータスは低いと思わざるを得ない。ロジスティクスは経営そのものである。

ロジスティクス・アーキテクチャーと3PLの位置付け


  顧客側が管理基準を示し、その管理状況をチェックしフィードバックがかけられる体制を作れば、アウトソーシングは可能である。これが不明確のままではビジネスとしての遂行も難しい。これを前提に業務受託することこそが3PLの神髄である。つまり単なる物流管理レベルだけではなく、ロジスティクスレベルの業務を受託し、代行するのが3PLである。その事業の形態がアセットかノンアセットかは、顧客が選択すればいい問題である。私は以前から中間型(2.5PL)がいいと言っている。ロジスティクスレベルの業務を代行する場合、例えば欠品の責任がどちらにあるかというようなときに、管理基準や原因分析が正確にできないと、全ての責任が受託側になってしまう恐れがある。そのペナルティーは甚大であり、事業採算等直ぐ吹き飛んでしまう。

5.顧客ビジネスの土俵で戦う厳しさ

  3PLが閉塞し切った物流業界を活性化する切り札になるのかと言えば、そんなに簡単ではないだろう。まず物理的機能だけではなく、計画・統制の一部とはいえこれを代行する力を蓄えることは容易ではない。実務遂行能力や情報システムのインフラ、リスク対策・危機管理等、様々な課題がある。最大の問題は人材である。ロジスティクスとマーケティングの考え方を理解し、フィールドとしての物流実務も分からなければ何の対応も出来ない。顧客ビジネスが理解でき、そしてシステム設計ができる人材である。当然即戦力は少なく、育てなければならない。
  端的に言えば従来の物流業界という土俵ではなく、顧客ビジネスという異業種の中で戦わなければならない。象徴的なこととして一例を挙げれば、まず料金契約が商品通過額の%という難関が待ち構えている。顧客からすれば商流の代金決済に準じたかたちにしなければ、事業管理がやりにくいという前提がある。これに対応するには業務受託範囲を厳密に確認し、条件変化をある程度許容し得るコストレベルを設定し、事業採算に乗る自らのコスト構造を設計する必要がある。つまり収受料金が変動的なわけだから、コスト構造もそのようにしなければ採算が確保できない。このような料金契約方式は国が受理しないと言っても、現実にはこれが罷り通っており、真に3PLとして成功している事業者は少ないのではないか。ロジスティクスレベルではなく、単なる物流業務代行や共同配送を3PLと言っているケースも見受けられる。
  事業者選択がコンペで競合させられるということも大変な重さである。顧客は横並びで相対的に最も有利な提案を選べるわけで、不採用の提案でもいい部分は利用できる。これに勝つ提案を考えるのは容易ではなく、仮に受託出来たとしても業務改革が必須となる。多くはコストが最大の焦点になるからだ。
  しからばこの状況を打破する方策はあるのかと言えば、「虎穴に入らずんば・・・」の格言通り、この困難な3PLに挑戦するしかない。その原点はマーケットインとしての顧客への提案である。プロダクトアウトでは2PLという従来型の業態にすぎない。提案するためにはまず現状分析が必要であり、そこから改善への手掛かりを掴む。日常業務の積み上げ型の改善と、ブレークスルー型改革の両面が必要であることはQCでも学んだはずだ。一方で顧客がどのようなマーケティングを展開しているのかをよく分析し、それを支援する方策を考える。コンサルティング機能が重要ということは、これらを顧客起点で考えるということだ。さらに物流機能だけではなく、全てロジスティクスのレベルでのビジネスだ。これを少しずつでも学び、実行し体制を作ることにつなげる経営が出来るかどうかが問われる。

以上



(C)2008 Hideo Noguchi & Sakata Warehouse, Inc.

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第136号“失敗しない”物流アウトソーシングの進め方(2007年11月20日発行) /logistics-136/ /logistics-136/#respond Tue, 20 Nov 2007 02:40:21 +0000 /jp/?p=2599 株式会社サカタロジックス シニアマネジャー 木村 徹

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執筆者 木村 徹
株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    執筆者略歴 ▼
    経歴
    • 大手倉庫会社、米国系輸入商社、欧州系物流会社を経て現職。
    所有ライセンス
    • 通関士
    • ジェトロ認定貿易アドバイザー
    • 危険物取扱者
    • 海技士(Navigator)
    誌紙出稿
    • 流通設計21 (2001年1月~2002年12月、2006年2月)
    • ジェトロセンサー (2000年11月&2002年2月)
    講演実績
    • ジェトロ
    • 中小企業大学校
    • (財)静岡県国際経済振興会
    • しまね産業振興財団
    • 群馬県商工会連合会
    • 大手商社
    所属学会
    • 日本貿易学会
    • 日本物流学会

*サカタグループ出展「ビジネスシヨウTOKYO2007」のプレゼンテーションセミナー講演内容をもとに編集しご案内しています。

目次

  本日は弊社プレゼンテーションセミナーにご参加いただき誠に有り難うございます。弊社グループでは、「物流アウトソーシングサービス」、「物流ITの開発と販売」と「人材プロデュースサービス」を行っております。本日は、物流アウトソーシングサービスから、顧客企業から見たアウトソーシングの進め方についてお話し致します。

1.物流アウトソーシングをするにあたっての問題点と課題

  物流のアウトソースをするに先立ち、自社の物流を知る必要があります。
  「物流」はJIS規格の中で「包装・輸送・保管・荷役・流通加工・物流情報」の6つの活動で構成されると書かれています。まずは物流の基本をしっかりと押さえておく必要があるでしょう。
  アウトソースの検討には、これら物流の基本データの他に人的な問題(物流担当者の配置)やロケーション(物流センターの場所)等の問題が大きく関与しています。
  また、アウトソース検討時に一番重要な事は、アウトソースで何を行いたいのかを決めることです。多くの場合、コスト削減と効率化だと思いますが、アウトソースの目的が決められていないことが多々見受けらます。

2.課題の抽出とブレイクダウン

  しっかりとした課題抽出が出来ていないと、効率的な運営に支障をきたしたり、社内の関係者への説明が出来ないということになってしまい、物流アウトソーシングが頓挫してしまいます。
  今回は一例として、この課題の抽出を「目的」、「アウトソース先の物流企業」と「社内の問題」に分けます。抽出内容は、業種業態によって違う項目を挙げなければならないので、各社の実情に合わせ課題を抽出して下さい。

3.課題の抽出 「物流アウトソースの目的」

①物流の種類と範囲

  物流をアウトソースする方針が決まっても、何を、どこに、どうやってアウトソースするか決まっていない場合が多く見られます。
  アウトソースの範囲には、「輸送」だけ、「物流センター」だけ、「輸送と物流センター」等、様々なパターンがあります。何をしたいのかということを、まず明確にさせなければなりません。

②主導部署・検討委員の構成

  一般的には物流部が主導部署になる事が多いですが、他にも企画部、総務部、営業部、調達部、工場等のいろいろな部署が主導部署になりえます。然し、担当部署によってアウトソースの視点が違うので、その部署が主導部署として的確であるかどうか、検討委員会の構成人員は的確であるかどうかをしっかりと見極めないと、最終段階で「我々の部署ではそれは現実的ではない」という結果になってしまうことがあります。故に、事前に社内でのコンセンサスを得ることが重要です。

③アウトソースの目的

  アウトソースの目的の中でも、優先順位が高い「コストダウン」と「効率化」にはコンフリクトが生じる場合があります。
  効率化の為には、システムを導入や、誤出荷削減の為にバーコードラベルを導入するといった費用が発生します。この場合、効率化や誤出荷削減はクリアしますがロジスティクスコストは上昇してしまいます。
  故に、何を優先させるかということをしっかりと目標を持って決めていかなければなりません。

4.課題の抽出 「アウトソース先物流企業の問題」

  ここでは、「コスト」、「輸送」、「保管」、「荷役」、「流通加工」、「物流情報」、「品質」、「知識/経験」、「ロケーション」、「導入スケジュール」と「引越」という項目を一例として挙げてみました。

①コスト

  アウトソースの目的として、コスト削減が一番の目的であるという話しをよく聞きますが、物流コストを目先だけで考えていないでしょうか。これは、往々にして「対外的に支払われた費用」だけが物流コストだと捉えられていることが非常に多く見受けられるからです。
  例えば、パートさんの人件費は見ているが、自社社員の人件費をしっかり把握していない。支払給料だけを考え、保険や年金等の間接費用を算入していない。自社倉庫で発生している公租公課や光熱費をコスト勘定に入れていない等が見受けられます。
  その結果、現状の自社物流費用が非常に低く見え、物流企業からの見積額が高く見えてしまうと言うことが発生します。
  時間をかけてでも現実物流コストの把握を行わないと比較検討が出来ません。

②輸送

  輸送の方法(船・航空機・トラック等)も当然ですが、リードタイムも忘れてはなりません。物流アウトソースを行い物流センターのロケーションが変わると、顧客への配送リードタイムにも変更が生じてくる場合があります。
  新しい物流センターで顧客が希望するリードタイムを守れるか、今までよりも改善されるか等の検証が必要になってきます。

③保管

  温度管理、湿度管理、三温度帯管理等、様々な保管方法があります。また、危険品といった物もあります。建物は高床式・低床式のどちらが商品に適合しているかの検討も重要です。その他には、料金算出方法も個建や坪建等に分かれますし、在庫管理方法についても紙ベースで行われているのか、倉庫管理システム(WMS)を導入しているか等の保管方法と保管管理方法も気になる点です。

④荷役

  十分な人数とスキルを持った従業員が備わっているか。必要なマテハン機器が導入されているかも確認すべきです。マテハン機器の選定はコストと品質が複雑に絡んで来ますので十分な検討を要します。また、荷役に必要なスペースを確保しているかもチェックポイントになるでしょう。

⑤流通加工

  アウトソース先は必要な業界知識を持っているでしょうか。また、必要なマテハン機器の準備が可能かも確認すべきです。
  アパレル業界の場合を例に取ると、検針器での検品やミシンを使用したケアラベルの取り付け。化粧品業界の場合は、商品によっては横倒ししてはいけない、クール便で発送する等、いろいろな業界特有な事情があります。
  アウトソース先が業界知識を持っているかどうか確認しましょう。

⑥物流情報

  入出荷情報・在庫情報等の物流情報はどうやってやり取りしますか?
  現代では情報は物流に大事な要素の一つです。特にERPを導入されている企業は、物流情報を経営情報として使っています。1日数千件の出荷がある企業では、出荷情報・在庫情報等をFAXや電話でやり取りすることは到底出来ません。EDI、e-mailが必須条件になります。これらITのスキルをどれほど持っているか、アウトソース先は、コンピュータシステムの知識を持っているかということも重要です。

⑦品質

  アウトソース先の物流品質はどうでしょうか?
  CS運動に取り組んでいますか。KPIの知識を理解していますか。コストだけ見て品質に目をつぶってしまうと、後から思いがけない多大な出費を強いられることもあります。

⑧知識・経験

  提案書には十分な内容が盛り込まれていますか?皆様が希望している内容が網羅されていますか?良いことばかり言っていないでしょうか?
  営業担当者は、当然良いことをたくさん言うと思いますが、どこの企業にもデメリットが必ずあるはずです。それを正直に開示することによって、より良い関係を築く事が出来るでしょう。

⑨ロケーション

  倉庫のロケーションは適切でしょうか?近隣住民への配慮をしていますか?
  例えば食品輸送等で24時間稼働が必要な場合に、工業専用地域でなければ早朝や深夜の運営が出来ないということもあります。そういう点への配慮も必要です。

⑩導入スケジュール

  無理な日程を組んでいませんか?ガントチャートで管理していますか?
  5W1Hをしっかりと捉え進捗管理を行ってください。(Who, When, What, Whom, Where, How)

⑪引越

  入出荷への影響や在庫数量の確認がしっかりされていますか。

  以上が、物流企業に対する課題です。各々の課題の中で、更に課題の詳細がブレイクダウンされてくると思います。何階層作るかは、課題がどれだけあるかに起因するので、個々の企業で検討しなければなりません。

5.課題の抽出 「社内の問題」

  物流課題の解決は、「物流企業と相談して進める」、「見積書・提案書をもらう」、もしくは「部門内で検討する」ことで解決可能ですが。社内には非常に大きなハードルが沢山あります。ここでは、9つの問題を挙げてみました。

①説明と説得

  アウトソース時の社内の利害関係者は誰でしょうか?
  他部門から、「それは現実的ではない」と言われてプロジェクトが頓挫してしまうことがないように、プロジェクトには全ての利害関係者を巻き込むことが重要です。

②購買部

  物流センターのロケーション変更が決まった場合、いつから、どこに倉庫が変わるのか、サプライヤーへはいつ、どのように通知するか決めなければなりません。

③生産(工場)

  物流拠点の見直しを行い拠点数が増減する場合、在庫量の変動が生じます。拠点数が増えると顧客満足の向上に繋がりますが在庫量が増加します。その結果、生産量を増加させなければなりません。また、拠点数を減らせば在庫量が減少するため、生産量を減少させることになります。
  つまり、拠点数の変更は生産量や在庫量に直結するため、会社の経営やキャッシュフローにも大きく影響してきます。故に、物流拠点の見直しには、生産や調達も大きく関わってきます。

④マーケティング

  販促品の取扱いについても、どこで、だれが、どのように管理するか、しっかりと検討しなければなりません。

⑤情報システム部

  1日10~20件の出荷ならばFAXやe-mailでのやりとりで可能ですが、1日数百件、数千件を超える量の入出荷がある場合は、EDIの構築や物流会社から戻ってくるデータの取込を検討する必要があるため、物流会社とのEDIの連結が非常に大きな課題になります。その一つがセキュリティー対策問題です。一例として、私共のお客様でSAPを使っておられるお客様がいらっしゃいますが、セキュリティーが非常に厳しく、EDIで直接データ転送が出来ません。そのため、お客様のSAP端末を私共の物流センターに置き、SAP内の出荷データを一旦MDに取込、そのMDの情報を私共のシステムに取込む方法をとっています。

⑥営業担当

  顧客への通知はいつ、どのように行うか。いつの時点から、商品が送られてくる場所が変わるかというアナウンスをしっかりと行わなければなりません。また、返品はどこに、どのように行うのかということも、顧客へ通知することが必要です。

⑦物流担当者

  業務内容がどのように変わるのか周知徹底しなければなりません。

⑧人事部

  配置転換が必要か、住居を伴う転勤があるか等、人事的なことがクリア出来ないためにアウトソースが実現出来ず、効率化出来ないという事例も多く目にします。

⑨経営者

  コスト変化はどうなるか。アウトソースによるメリット/デメリットは何か。将来の物流設計は。売上が大きくなった時に対応可能か、等の説明が必須です。
  また、自社物流を行っている場合は、現在の倉庫、トラック、マテハン機器をどのように運用、処分するかということの説明も必要になってきます。

  今後の物流アウトソーシング時に、これらを参考にしていただけたらと思います。
  本日は弊社のプレゼンテーションにご参加有り難うございました。

以上



(C)2007 Toru kimura & Sakata Logics, Inc.

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第98号なぜ新規3PLが成功しないのか―昨今の3PLをとりまく状況と課題を考察する―(2006年4月20日発行) /logistics-98/ /logistics-98/#respond Thu, 20 Apr 2006 07:44:20 +0000 /jp/?p=2706 株式会社サカタロジックス シニアマネジャー 吉井 宏治

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執筆者 吉井 宏治
株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴   1989年 サカタ産業株式会社入社、工場内物流管理業務を担当。
    1990年 サカタウエアハウス株式会社(大阪本部)に異動。
    情報サービス部門に配属。
    1991年 鐘紡(現・カネボウ)株式会社 情報統括室コンピュータ部に1年間出向。
    1995年 サカタウエアハウス株式会社(門真営業所)に異動。
    アパレル物流管理業務を担当。
    1998年 株式会社サカタロジックスに異動。
    物流改善,物流情報システム構築,物流ABC導入,
    物流アウトソーシング等の提案営業およびコンサルティングなどを担当。
    現在に至る。
    株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    主な資格 物流技術管理士,第2種情報処理技術者,倉庫管理主任者,
    品質審査員補(ISO9000S)

目次

1.はじめに

  3PLという概念が普及し10年近くになるが、近年企業の付加価値を高める手段としても注目されるようになってきた。様々な企業が新規に3PLに取り組むにあたり、3PLという概念の浸透の割には成果をあげている企業が少ないように思われる。本稿では弊社の物流アウトソーシング等の経験を通じて最近の3PLをめぐる動向と、なぜ企業の新規3PLへの取り組みが成功しないのかについて考察する。
  なお3PLの定義については様々な解釈があるが、ここでは内容、範囲を問わず広義の提案型営業による物流アウトソーシングという観点で述べる。

2.新規に3PLを目指す企業形態

  3PLを新規に目指す企業形態には次のような企業が考えられる。
(1) アセット型企業
  ①運送事業者
  トラック運送事業を主体とする企業であり、倉庫事業を一部展開する企業を含む。
  ②倉庫事業者
  倉庫事業を主体とする企業であり、運送部門、情報システム部門は外部企業に委託している場合が多い。
  ③物流子会社
  メーカーの子会社という位置づけの企業であり、従来親会社の物流業務を中心に実施してきたような企業を指す。

(2) ノンアセット型企業
  ①人材派遣会社
  物流関連の企業向け人材の派遣、作業の請負業務を主体とする企業を指す。
  ②コンサルティング会社
  物流関連のコンサルティング業務を主体とする企業であり、アセットを持ったパートナー企業と協力して、3PLを目指す企業を指す。

(3)複合型企業
上記複数のアセット型企業またはノンアセット型企業をグループ企業として保有する企業がある。

3.3PLに求められる機能

  3PLを実践する企業に求められる能力として、実物流業務の実践能力に加えて、次のような点がある。
(1)コスト改善提案能力
  現在の物流フローを分析し、物流以外の部門を含む物流課題、物流業務上の問題点の抽出、およびその解決策を含む物流改善提案力を有する。
  また単価のみの値下げではなく、トータルな運用方法の改善による、コストダウン提案能力とそれを試算する能力が必要である。

(2)情報システム構築、維持能力
  物流センターの管理、運営に必要な倉庫管理システムと連携するサブシステムの構築能力、およびコスト改善提案を継続して実行するために必要な情報システムの改善と新規開発能力を有する。

(3)顧客(荷主)企業との交渉能力
  論理的に顧客企業に対して改善提案を行い、その改善効果をシェアリング交渉する能力、クレームが発生した場合に迅速に改善策を提案できる能力、顧客との業務委託契約締結時に対等の立場で交渉できる関連法律に関する理解と交渉能力を有する。

4.新規3PLが成功しない要因

  新規に3PLへの参入にあたり、課題・障壁となる事項として次のような点がある。
(1)顧客(荷主)企業のコストダウン要求
  顧客企業が物流業務のアウトソースを検討するにあたり、コストダウンを前提としていることが非常に多い。
  この点については、現在の物流コストに関する構成要素を正確に把握している企業は少なく、またアウトソース後の業務の運営方法や拠点立地、物流を委託する企業の委託範囲や前提条件が同一ではないため、コストを現在のコスト体系と正確に比較することは非常に困難であり、実際には契約単価の値下げを前提とする物流業務の入札が多い。このような単価の値下げによるコストダウンを重視した物流入札の場合、新規3PLに取り組む企業が参入するにあたって、受託を難しくしている要因の一つと考えられる。

(2) 企業環境の変化

企業の高コスト体質の脱却
  バブル経済の崩壊以降、メーカー等の物流を委託する側の企業の収益力低下に伴いコスト削減努力とそれによる高コスト体質からの脱却が、ここ数年非常に進んできた。特に企業の人材の流動化、人材派遣企業の台頭により、企業が自社で物流を運営している場合でも必ずしも高コストといえなくなってきた。
  一方物流事業者側も近年の労働力不足と物量の変動への迅速な対応、およびリスク回避のため、人材派遣会社と物流センター内のリフトマンや作業者の派遣契約をする場合が多くなってきた。
  これにより物流業務を委託する企業と受託する企業間の物流センターを運営するために必要な人件費コストの差がほとんどなくなってきたといってよい。したがって、単に人件費単価の値下げを実施するような提案は困難となってきており、逆に物流事業者側の管理コストが発生するため、本来はアウトソースする側にも管理コストは発生しているのだが、見かけ上アウトソースを実施した方が作業にかかる人件費が高くなる場合が多くなってきている。
  実際どのように企業はコストダウンを実施しているのか、あるいはその中で3PLとして提案できる要素、および以降に述べる今後の3PLのあるべき姿を考察する参考例として、製造業における物流コスト削減策の統計資料を以下に記載する。

図.製造業における物流コスト削減策

出所:社団法人日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト調査」アンケート(2004)

デフレ経済下の物価下落に伴う運賃の下落
  従来は企業間で格差があった運賃は、物価下落に伴いより運賃の低い運送会社への代替が進み、近年は運賃の下げ止まり状態となっている。さらに最近の原油価格の上昇やトラックの規制強化にともない一部では値上げの動きが出始めている。
  これにより、物流を委託する企業と物流専業者の運賃体系の差がほとんどなくなってきており、新規参入企業がこれらの企業並みの低い運賃を提示することは難しくなってきているといえる。
高度な物流サービスに対応する情報システム
  情報システムの構築費用については、大抵の企業では大きなコスト削減効果を見込める物流改善はすでに実施済みであり、新規情報システム導入に伴う投資額に見合うようなコスト削減効果は、企業の物流作業における人件費単価の下落とともに非常に困難になってきている。
  また一方で、多頻度小口物流の要請の増加や翌日納品の常態化、さらには時間指定配達、受注締め時間の延長といった高い物流サービスレベルを実現し維持する上でのインフラストラクチャとして、高度な物流管理を行う情報システムは必要となってきており、新規3PLに参入する上で、すでに物流情報システムを保有していない場合、高額な情報システムへの投資が必要である。
物流システムパッケージの普及と高機能化
  物流情報システムについては、WMS(倉庫管理システム)をはじめとしてパッケージ化とその高機能化が進んでおり、このようなパッケージシステムを導入することにより、荷主企業、物流事業者を問わず物流情報システムのインフラを構築することが可能である。ただし多頻度小口物流などに対応した高度な物流システムをパッケージシステムを用いてフルセットで導入する場合、数千万円の投資が必要となる場合が多い。
  したがって、物流事業者の提案するシステムが既存の物流システムに比べて物流業務を運営管理する上で、必ずしも高機能なシステムであるとはいえなくなってきている。また同様の理由により、物流事業者間の提案するシステムの機能的な格差も小さくなってきている。
  このため物流管理に必要な情報システムは、3PLの物流提案にあたり他社との差別化要因とはいえず、3PLとして物流提案を実施するうえでの前提条件の一つとなってきているのである。

(3) 新規3PLを実施する上でのアウトソーサー側の課題
新規3PLを実施する上でのアウトソーサー側の課題として次の点が考えられる。

コスト提案力
  見積もりを作成する上で、主な費目として倉庫賃貸費用、作業人件費、配送費がある。これらの見積もりを行う上で、すでに自社の物流拠点等のインフラがある場合コスト競争力の面において、既存のボリュームディスカウントにもとづく契約およびそれらを提供するパートナー企業のネットワークを活用することができるため、一般的に有利である。
  しかし、自社の物流基盤がないエリアへ新規に進出する場合、パートナー企業の契約料金はそれぞれ管轄営業所ごとに取引実績により異なるため、これらのメリットを活かすことが難しい。このため新規エリアへ単独で参入することが難しくなっている。
物流提案能力
  3PLとして、物流提案を実施するにあたり、通常現在の物流センターを1日程度見学する機会を与えられ、このときの視察結果にもとづき、改善提案およびその業務フローの提案を行う。
  顧客である荷主企業が、3PL提案企業に対して業界の商品取り扱い知識を保有しているかどうかを判断する基準のひとつは、この時いかに3PL提案企業が業務を理解した提案を提出できるかにかかっている。
  このような提案を実施するにあたり、実際に同様の業種、業態の取り扱い経験がないと、実物流における商習慣、商品取り扱い方法や納品方法等の提案が難しく、この点からも、業務経験のない業種、業態に向けた3PL事業の新規展開は困難なものになっていると思われる。
人材の育成
  3PLとして企業が提案型営業および業務を実施するにあたり、必要となるのは次のような人材の育成である。
(イ)提案営業を行う人材
上述したコスト改善提案およびそれを継続する仕組みとして情報システムの提案ができ、かつ業界の物流特性に関する知識をもった人材の育成が不可欠であり、3PL企業内の人材育成カリュキュラムにおいてこのような人材を計画的に育成する制度を作り上げる必要がある。また、最近の手法としては必要とする人材を新規に採用することも選択肢の一つとして考えられる 。
(ロ)受託後の業務立ち上げを管理する人材
営業部門にて獲得した受託案件の業務立ち上げには、営業時に投入する工数以上の人的資源を必要とする場合が多く、この体制が整備されていないと受託した顧企業の物流業務の立ち上げがうまくいかず、業務の運営が軌道に乗らない場合、場合によっては委託契約が解除されるようなことも起こりうる。
したがって、新規3PLを実施していく上で、事前に営業部門と業務運営部門の連携と整備が必要であり、このような組織体制が確立されていない企業の場合、ゼロから構築することは非常に困難である。

5.今後3PLを実施していくうえであるべき姿

  このような要因により、企業が新規に3PLを実施していくにあたり、先行し準備が必要な事項とその実施に必要な経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を計画的に準備し投入する必要があるため、新規参入が難しい要因となったり、またはすべての条件を兼ね備えていない企業が参入した場合、3PLによる売上拡大が伸び悩む要因となっていると思われる。
  また、近年の物流コンペの状況として非常に多くの経営資源を投入したにもかかわらず、得られる利益が低く、またサービスに対する対価を交渉する能力が低い企業では収益が得られないことも予想され、企業にとって新規参入のメリットを得にくい状況になりつつあるのではないかと思われる。
  このような中で、今後3PLを実践していく企業として、企業の大小を問わず次のような能力を持った企業が生き残っていくのではないかと考える。
(1)専門性
この分野(業種・業態)であれば他社に負けないと自負できるような、企業のマーケティング戦略(物流、商流、情報流)から関連する法制度にいたるまでの幅広い知識とノウハウをもつこと、またそれを活用した提案能力をもつこと。

(2)戦略的情報システム
同業他社と差別化できるような、物流戦略・計画系システム(シミュレーションシステム等)あるいは、物流管理・計画系システムを構築、提案できる能力。

(3)論理的な交渉能力
企業との料金交渉、契約締結にあたり、論理的に交渉できる能力、およびそれに必要な根拠を分析し明確に提示できる能力、業務遂行にあたり関連する法律知識をもち交渉時に利用できる能力を持つことが重要である。
弊社の物流アウトソーシングおよび物流ソリューションの経験、および最近の動向から気づく点を述べた。これから3PLを実践していこうとする企業の皆様に参考になれば幸いである。

以上

【引用文献】
社団法人日本ロジスティックスシステム協会
「2004年度物流コスト調査報告書」アンケート「物流コスト削減策(製造業)」



(C)2006 Kouji Yoshii & Sakata Warehouse, Inc.

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第92号今一度Third Party Logistics(3PL)について考える(2006年1月26日発行) /logistics-92/ /logistics-92/#respond Thu, 26 Jan 2006 08:08:40 +0000 /jp/?p=2720 双日ロジスティクス株式会社 営業本部営業開発部 担当部長 中谷 祐治 

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執筆者 中谷 祐治
双日ロジスティクス株式会社 営業本部営業開発部 担当部長
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • センコー株式会社にて、業務改善、事業改善、各種コンサルティングなどを担当
    • コンサルティング系サードパーティロジスティクス会社にて、ロジスティクス再構築
      プロジェクトなどのコンサルティングを担当
    • 双日ロジスティクス株式会社にて、大手鉄鋼商社、外食チェーンのコンサルティング、
      輸送/物流センター業務の企画提案/運用管理などを担当
    主な資格
    • 物流士
    • 第2種情報処理技術者
    • 初級システムアドミニストレーター
    寄稿/講演など
    • 日経産業新聞、輸送経済新聞などへの寄稿
    • 日本ロジスティクスシステム協会での講演/講師
    • 米国ロジスティクス学会東京支部にての講演等

目次

1.はじめに

  3PLは日本の物流関係者をはじめとして、よく使われる言葉となったと感じる。しかし、残念ながら「はやりことば」としてや「営業のためのことば」として使われている場合も多い。また、その捉え方があいまいなため、本来目指すべきレベルの議論まで発展していないこともあると感じる。筆者は約10年の間3PLを追いかけ、その真っ只中に身を置いてきた。その中から、「3PL」は物流に関係する者がキーワードとして、より高いレベルを目指すために使うべき言葉と考えている。3PLについてできるだけポイントを絞って今一度考えることで、3PLの進展の一助となれば幸いである。

2.3PLの歴史

  欧米での3PLは、日本より古く1990年頃には多くの企業が設立され、市民権を得た言葉となっていた。一方、日本では、以前より物流業務を物流事業者や物流子会社に委託するなど、アウトソーシングはいろいろな形で行われていた。その委託を受けた物流事業者は、荷主に代わりきめの細かい多頻度小口配送を行ったり、荷主の元請として複数の物流事業者を束ねたりする機能を発揮する事業者も存在していた。
このような状況下において、日本にも1996年頃から3PLブームと呼ぶべき時代が到来した。1997年に閣議決定された物流総合施策大綱にも3PLは登場し、「荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務」と定義づけられている。この頃から、3PLを営業上の差別化点としてアピールする物流企業が出始めるとともに他の業態からも多くの3PL企業と自らを称する企業が登場し、言葉として「3PL」は一般的となったのだ。

3.3PLの本質

●キーワード
  3PLの本質を考えるキーワードは、「ロジスティクス業務」「荷主の立場」「パートナー」である。

●ロジスティクス業務
  3PLの「L」はロジスティクスの「L」である。よって3PLは、ロジスティクス業務を対象としていることが基本である。物流業務だけなら3PPD(Third Party Physical Distribution)でもよいのではないだろうか?
  日本では「物流=ロジスティクス」という間違った理解もまだまだあり、物流会社が自社の営業上のイメージから「○○ロジスティクス」に社名を変更するようなことが行われてきているため、さらにあいまいとなっているのである。物流はあくまでも輸送、保管、荷役、包装、流通加工、情報の各機能を組み合わせて提供するひとつのシステムであり、ロジスティクスはさらに、生産、販売との最適な形を追及するところまで範囲を広げており、その違いは明確である。つまり、従来型の物流事業者より、扱う範囲が広いのが3PLだ。

●荷主の立場
  従来の荷主と物流事業者の立場は、いわゆる上下関係である。荷主が範囲を定め、その中で最適な物流サービスを提供することが物流事業者に求められることである。よって物流事業者に提案を依頼した場合、不明な条件があると条件提示を求めてはこなかったであろうか?
  しかしながら、荷主と3PLの関係は上下ではなく、パートナーなのであり、その視点は荷主の立場である。この視点が欠如した議論が見受けられことがより3PLを複雑なものとしている。
  元請物流事業者が3PLであるという考え方もあるが、多くの場合物流事業者は荷主に積極的に改善提案はしない。これは自社の売上/利益の減少に直結するため、少なくとも現場を預かる責任者は自分で自分が不利になるようなことはできないのである。また、物流体制変更などの場合においても自社の設備の生産性が低い場合、どうしてもそこに誘導したくなるものであり、それが文化である。
  つまり、従来型の物流事業者とは異なり、荷主の立場から改革/改善/効率化を進め、最適なロジスティクス体制を維持するのが3PLだ。

●パートナー
  荷主と3PLはパートナーであることはすでに述べた。これは単に上下関係でないことだけを意味するのではなくメリットもリスクもシェアする関係のことである。
  従来、荷主が腰の重い物流事業者に改善を迫り効率化を進めた場合、多くの場合その成果は荷主が享受してきた。逆にリスクはできるだけ物流事業者に押し付けてきたが、実はそのコストは物流委託料金の中に含まれる形で荷主が負担していることとなり、その損得勘定は一層と見えないものとなっている。
  一方、3PLはパートナーであり、そのメリットもリスクも見える形で共有化していくことが理想である。
  荷主側が3PL事業者を「3PL業者」と呼んでいれば、その関係がパートナーかどうかは一目瞭然だ。

4.3PLの現状と課題

●3PLの現状
  日本においても3PLは注目されている。それは企業間競争が激しく、コストダウンが至上命題の現在、今までにない形でコスト削減を期待させるからである。しかし、ロジスティクス面での先進企業は社内にそのような組織を持ち、成果をあげているため、3PL活用の必要性は低い。本当に3PLを必要とするのは、それらの企業まで体制を整えることができていない企業である。
  その3PL業務のマーケットに物流会社をはじめとし、コンサルティング会社、ソフトウェア会社、マテハン機器会社などいろいろな業種から参入があるが、本当に3PL業務と呼べるものは少なく、3PL業務を担当できる3PL事業者も少数ないのが現状だ。

●荷主側の課題
  3PLを必要とする荷主は、すでに高度化されたロジスティクスを構築している物流面での先進企業ではなく、主に中堅企業が中心と考えられる。たとえば、自家物流から営業物流へ、独自物流から共同物流へ、国内物流から国際一貫物流へ、商物一体から分離へ、個別直送物流からセンター一括物流へなど、体制を変えていきたいときに3PLを活用することが有効である。
  しかしながら、3PLを活用していく上でいろいろな課題がある。その大きな原因は、3PLがまだ浸透していないことや誤解されていることである。
  よって、ロジスティクス改革は経営課題であり、その課題解決の一方策として3PL活用が有効であることについて、経営者層へ啓蒙活動がまず必要である。
  荷主側の最大の課題はいままでの荷主文化にあり、3PL時代にはその変革が必要だ。

●3PL事業者側の課題
  3PL事業者は荷主側がパートナーとして認めるに値する実力が必要で、そのためにはまず多彩な業務内容に対応できる人材が必要である。すでに国土交通省をはじめとして人材育成が進められており、これをもとに幅広い物流の知識をつけて提案型元請物流事業者としての役割を志向することはできる。しかしながら、戦略コンサルタント、商流面やファイナンスのわかる人材なども当然必要であり、さらにいろいろな観点の違いを理解し、コーディネイトする人材も必要である。たとえば、戦略コンサルタントの支援により今後取るべき戦略が決まったとしても、そのままでは実行に移せない。戦略を決める考え方と実行計画を作る考え方を理解し、そのプロジェクトが開始したときから戦略決定、実行計画策定をスムーズに進められる人材も必要なのである。
  3PL事業者側の最大の課題は人材であり、現在の希少な人材を活用して、育成することが急務だ

5.今後期待すること

  本来経営そのものといっても過言でないロジスティクスが日本の企業の多くではまだまだ注目度が低く、地位も低いのが実態である。3PLについても、今の言葉の使われ方を見ているとこのままではその言葉の本質を理解せずに流行り言葉で終わってしまうのではないかと危惧している。
  ここまで述べてきた3PLに対する考え方は、よく使われている3PLより狭義で理想形かもしれないが、これも一つの考え方として3PLの本質についての議論を進めるべきである。
  そして、各省庁と一体となり、人材、資金、契約、3PL事業者評価、サービスの商品規格基準作りをはじめとしたロジスティクス関連の各種方策が実行されることが必要である。
  その結果として、物流/ロジスティクス業界の地位が向上することが、各企業の経営効率化につながることである。
  その大切なキーワードが「3PL」だ。

以上

(参考文献)
国土交通省 日本における3PLビジネスの育成に関する調査(2004年3月)



(C)2006 Yuji Nakatani & Sakata Warehouse, Inc.

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第84号3PLとロジスティクスのKPI(2005年9月21日発行) /logistics-84/ /logistics-84/#respond Wed, 21 Sep 2005 08:42:10 +0000 /jp/?p=2737 センコー株式会社 事業開発本部副本部長 坂 直登

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執筆者 坂 直登
センコー株式会社 事業開発本部副本部長
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1973年 扇興運輸入社
    • 1985年 技術士(経営工学部門)取得 専門ロジスティクス
    • 1996年 経営戦略推進室 部長
    • 1997年 情報推進部 部長
    • 2005年 事業開発本部 副本部長
    所属団体
    • 技術士包装物流会副会長
    • 物流技術管理士会会員
    • 物流技術管理士専任講師(JILS)
    主要著書
    • 『物流デザインハンドブック』共著(JILS)
    • 通信教育用テキスト『物流管理』共著(産能大)

  KPIとはKey Performance Indicatorの略で、主要成果指標のことである。ロジスティクスのKPIについては、KLPI(Key Logistics Performance Indicator)と呼ぶ場合がある。KPIは目標管理の指標として、または同業他社とのベンチマークに利用されたり、スコアカード(採点表)の評価要素として利用されたりする。
  ロジスティクスを3PL企業にアウトソーシングした場合には、毎月のKLPIが3PL企業の活動実績の指標として荷主にとって重要な管理手段であり、3PL企業とのコミュニケーション手段となる。荷主企業は3PL企業に対しこのKLPIの達成度に応じてマネジメントフィーを上下させたり、達成度があまりに低いと3PL企業を切り替えたりすることも起こる。3PL企業にとってもKLPIは荷主に自社の価値をアピールする最大の手段となる。

  この指標が標準化されれば、3PL企業のスコアカードとして3PL企業のランク付けをすることも可能となる。また各指標の達成目標を適切に設定することで、ロジスティクスの関係者全員に具体的数値目標が共有化され、より早く且つ低コストに成果の向上を図ることも可能になる。

  しかしながら、日本には標準化されたロジスティクスのKPIは未だ存在しない。現在、㈱流通研究社のマテリアル フロー研究センター(RCC)が主催になって、有志で毎月一回KPI研究会を行っているが、ここでは私見に基づいたKLPIの概要についてご報告したい。

  KLPIに関連のある研究成果として公表されたものの内、筆者が知っているものは次の通りである。

  (1) ㈱流通研究社が発刊している月刊誌『マテリアル フロー』1997年11月号の「Dr.フレーゼルのロジスティクス・マネジャー実践講座」にロジスティクス・パフォーマンス指標が翻訳掲載された。各指標がマトリックスに見事に体系化され、非常に完成度の高いKLPIである。横軸にカスタマーサービスとオーダー処理、在庫管理、調達、輸配送、配送センター運営、ロジスティクス・パフォーマンス・ゴールの六項目を採り、縦軸には品質・精度、リードタイム、生産性、コストの四項目を採って、各マトリックスに具体的パフォーマンス指標が合計34個採り上げられている。

  (2) サプライチェーンカウンシル日本支部が翻訳発刊した『サプライチェーン・オペレーションズ・レファレンスモデル』SCOR第4.0版(2001年5月)にサプライチェーンの良悪を判断するための測定指標としてMetricsが129個採り上げられている。この129個について個別の定義が行われ、サプライチェーンの各企業間のコミュニケーションが正確に行われるようにしている。このメトリクスの中には(1)のパフォーマンス指標と同一の指標も含まれている。

  (3) 社団法人日本ロジスティクスシステム協会 LEPマネジメントワーキング委員会で取り纏めた『SCM/3PLスコアカード』がある。企業戦略と組織間連携、計画・実行力、ロジスティクス・パフォーマンス、情報技術活用の仕方の四項目について個別の指標が設定され、定性的な五段階評価を行う。ロジスティクス・パフォーマンスについては七つの指標となっている。これらの指標も(1)のパフォーマンス指標と同一のものも含まれている。

  (4) 『LOGI-BIZ』2005年8月号に掲載された米CLM報告「3PLのリレーションシップ管理《測定編》」クリフォード・F・リンチが発表したロジスティクス・パフォーマンス測定指標がある。測定できないものは管理できないとして、主要成果測定指標の重要性と主要測定項目とその利用の仕方について述べている。これらの指標も(1)のパフォーマンス指標と同一のものも含まれているが、食品などに対する衛生管理やセキュリティ管理など独自の項目も含まれているのが特徴的である。

  (5) 『Logistical Management』The Integrated Supply Chain Process Donald J. Bowersox & David J. Closs著 1996年 22章にロジスティクス・パフォーマンス測定の目的や管理の特徴などが述べられている。また製造業、卸業、小売業の各業界に於ける各パフォーマンス指標の利用状況のデータが提示されている。

  これらの資料を概括すると、KLPIの体系としては(1)のマトリックスをベースとして、横軸に作業工程のカスタマーサービスとオーダー処理、在庫管理、調達、輸配送、配送センター運営、総合指標としてのロジスティクス・パフォーマンス・ゴールの六項目を採り、縦軸には品質・精度、リードタイム、生産性、コストの四項目の他に、安全衛生、環境負荷、セキュリティなどの観点をどこに付加あるいは項目を増やすのかの検討が必要となる。次に各項目に入れるべき具体的指標の選定と各指標を計数化するための分母と分子の定義、そしてその計数のレベル設定の定義が必要となる。各指標は測定できる必要があり、それもなるべく人手を煩わせずにOMS,WMS,TMSなどでデータウェアハウス化され自動集計されることが望ましい。
  全ての指標を同時に測定するということではなくて、ターゲットとする複数の指標を荷主と協議して選定し、一定の年月で目標を達成したら、次にターゲットとすべき指標を再度選定し直してボトムアップしていくことが現実的アプローチである。勿論、新たな指標に切り替えた途端、もぐら叩きにならないような仕組み作りと管理体制が必要である。

  計数のレベルの定義については(3)に倣ってレベル1から5の五段階評価が適当ではないかと思う。これがベンチマークの水準となる。ある程度のベンチマークのデータが集まるまでは水準の調整が必要である。例えばピッキングミス率50ppm以下を最上位のレベル5と定義してしまうと、ほとんどの事業所がレベル1か2に収束してしまうとするならチャレンジ意欲がなくなるので、当初は平均的な水準がレベル2か3に来るように定義しておく必要がある。パフォーマンス・アナリシス&コントロール(PAC)を導入すると当初は急速に生産性が上昇する傾向があるので、KLPIを導入した場合も同様な傾向が想定できる。

  具体的に代表的な指標を見てみよう。ロジスティクスの品質・精度の観点で究極の評価尺度はパーフェクトオーダー達成率である。
  (5)の『Logistical Management』によれば、米国でのパーフェクトオーダー達成率は最高でも55~60%しかなく、大多数は20%以下と報告されている。
  パーフェクトオーダーとは顧客の注文通りオーダーエントリーが一回でなされ、与信チェックが正しく行われ、注文された全てのアイテムと数量に引き当てられる在庫が全数あり、正しくピッキングされ、完璧に包装され、必要なラベルや帳票が正しくセットされ、定められた納期に、顧客の指定した場所に完全な状態で届けられ、完全な請求書が発行されたオーダーを言う。受注から納品、請求まで完璧に行われたオーダーのことであるが、我が国でのパーフェクトオーダー達成率の実績データは知らない。米国では一般的に用いられている指標だそうである。
  我が国でもKLPIのスタンダードが確立し、ロジスティクスのベンチマークとして広く活用される日が早く来ることを期待したい。

以上



(C)2005 Naoto Ban & Sakata Warehouse, Inc.

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第70号―弱体化する荷主の物流力―これからのロジスティクス人材と組織について(2005年1月14日発行) /logistics-70/ /logistics-70/#respond Fri, 14 Jan 2005 04:25:34 +0000 /jp/?p=2890 株式会社カサイ経営 代表取締役社長 河西 健次

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執筆者 河西 健次
株式会社カサイ経営 代表取締役社長
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 旭硝子株式会社で営業・経理・物流を担当
    • 82年物流専門コンサルティング会社カサイ経営設立。
    • 著作、講演、コンサルティングと幅広く活動。早稲田大学システム科学研究所講師、日本物流学会監事、日本経営士会会員。郵政省、通商産業省、農林水産省等の各審議会・研究会アドバイザー、委員等歴任。83年全国能率大会最優秀論文通産大臣賞受賞。著作は『物流請負作業料金の決め方』、『実践物流管理読本』、『すぐ使える実践物流コスト計算』など多数。
    • http://www.kkasai.co.jp

目次

はじめに

  昨年(社)日本経営士会の全国大会で祝辞を述べた経産省の方から、中小下請事業者が親企業の購買担当者の無能に泣かされているという話があった。
  下請事業者がVA提案を行い、「当社の納入する部品価格は5%アップするものの、他の部品や組立作業の削減が可能となるため、全体として2倍以上のコストダウンになるので採用して欲しい。」と訴えたところ、親企業の購買担当者から返ってきた答えは「トップから一律5%のコストダウンを指示されているので、お前のところだけ例外は認められない。いい提案なので採用するが現行価格の5%ダウンでなければ他社から購買する」と脅かされたという。経産省の方は、「親企業の購買部門のリストラでプロの購買担当者が減ってしまった結果だ」と締めくくった。
  陽が当たってきたと言われる荷主の、ロジスティクス部門でも、似たようなことが起きている。その具体的な事例から問題提起を行って、今後の改善の方向性を述べて行きたい。

1.現状と課題

  荷主のロジスティクス部門が弱体化している事例を、いくつか述べていこう。
(1)物流技術管理士受講者の構成変化
  (社)日本ロジスティクスシステム協会(以下JILSとする)が主催する資格認定講座「物流技術管理士」は、極めて盛況で、年5回延約500人の研修生が参加している。私が受講した前身の「物流士」(当時は2団体だったが)は、77年不況のせいもあるが年1回で20名だから隔世の感がある。
  ところが受講生の構成に変化が起きている。77年当時の参加者は、荷主7割物流事業者3割程度であったが、最近は、荷主2割、物流業7割(残り1例がシステム系その他)と、荷主の割合が激減している。
  又、物流子会社がJILSに入会しているので親会社が大会する例もあると聞く。「経営トップは、口を揃えてロジスティクスは経営の最重要課題」だと言っているのに...。
(2)ロジリング・ジャパン南部社長の談
  2000年9月に設立された我が国の求貨求車システムの本命として旧通産省、JILSをはじめ日本有数の企業が共同出資して誕生した(株)ロジリング・ジャパンが、今年4月20日あえなく解散した。
  4月27日付カーゴニュースに同社南部周一郎社長は撤退の弁として
  ①使い勝手が改善できなかった
  ②荷主の「丸投げ」が主流になって...
  ③物流業者は情報を出さない
  ④本格的なサイトには固定費の助成を
  の4点を挙げたが、私は②に注目した。その内容は次の通りである。
  「当初このシステムは荷主の物流マネージャーが主に使うことを想定していたシステムだった。方面別に運賃などの条件を比較して、最適な事業者を選ぶことのできる”物流市場”を創造するという大きな目標もあったが、ここ数年、大手荷主は物流部を廃止したり、物流子会社を統合、廃止、売却するなど、中心的なユーザーとして想定していた優秀な物流マネジャーがどんどん少なくなっていった。『企業経営にとって物流は重要』とよくいわれたが、実際には物流管理部門はリストラの対象となり、物流事業者へ業務を『丸投げ』する企業が増えていった。これは誤算だった。」
  南部社長の言う通り、物流部門や物流子会社の統廃合、売却が相次いでおり、
(1)の流れと一致する。
(3)運賃、料金実態調査から
  今年全日本トラック協会が「輸送秩序に関する実態調査」を行って、1,242社の回答を得た。同調査によって「運賃水準低下の要因」が、次の通り明らかになった。運賃について平成14年度の平均運賃が平成5年に比べ「減少した」と回答した事業者は85%に達し、その要因とは次の通りとなっていた。
  1位 荷主からの一方的な引き下げ要請       85.2%
  2〃 元請け事業者からの値下げ要請        70.0
  3〃 事業者同士の運賃ダンピング         57.7
  4〃 他事業者による帰り荷等の運賃ダンピング   33.2
  5〃 トラック協会未加入業者による運賃ダンピング 11.2
  6〃 その他                    3.4
  直接「荷主からの一方的な引き下げ要請」というのが第1位、物流子会社等を含めた「元請け事業者からの値下げ要請」が第2位になっていた。
  荷主からの要請が第1位で、しかも一方的というのが気になる。一方的値下げなら誰でもできる。そうならロジスティクス担当者のノウハウもシステム構築力も必要ない。
(4)コンペに参加して
  仕事上、私は物流コンペに関する案件が増えている。事業者の場合、荷主側の場合、いずれも経験している。また、関連した情報も豊富に得られる立場にある。以上から総合的に判断して、荷主側の優秀な物流人材が減っていることを痛感している。
  物流に対して、システム的アプローチが必要であることを理解している人材が少ない。スタッフは現場を知らず、机上での空論が多い。また、現場は総じてコンペの目的に対する認識不足や、コンペに必要な情報の提供に消極的である。
  そのなかで、第3者から助言を求め、コンプライアンスの遵守と、オープンフェアーなコンペと取引関係を築こうとする企業は、結果として
  ・コンペの目的、業務範囲、詳細な業務内容提示
  ・見積や提案に必要な物流諸元の開示
  ・現場案内と説明会の開催
  ・提案書の統一書式による
  ・目的に沿った業者選定基準の事前設定
  など、適正な手順とルールを踏んで進めていくために、荷主、物流事業者双方が納得する正しい選択をされる。そこには「一方的な要請」という言葉は存在しない。物流アウトソーシングを成功させるためには、プロのロジスティクス担当者による優良な物流事業者を選定する評価能力を欠かすことができない。アウトソーシングが拡大すればするほど少数であっても優秀な物流人材が必要である。

2.購買と物流のアウトソーシングとの違い

  物流のアウトソーシングに際してコンペが主流になってきているが、購買と物流の違いを理解しておく必要がある。
(1)購買と物流の基本的な違い
  調達物流から販売物流までがロジスティクスの範疇だと言われているので、類似しているように見えるが、基本的な考え方、必要とされる人材、スキルはまったく異なる。一言で言うと
  ①購買はネゴシエーション能力
  ②物流はシステム構築力
  という違いがある。購買は、日産のゴーン社長のようにコストカッター、イコールタフ・ネゴシエーターが理想とされる。
  物流は正販物の一体化、サプライチェーンマネージメント力が問われる。つまり、物流、経営全体、サプライチェーン全体でのシステム構築力のできる人材が求められる。
  いかに物流業務のアウトソーシングを拡大していこうと、経営戦略、SCMと、物流システム斉合性を検証し、常にあるべき姿を追究していく人材、スキルを欠かすことができないのだ。
(2)モノとサービスの違い
  有形の物の購買と、無形のサービスである物流業務の管理は当然違う。
  私が勤めていたA社は、エネルギー多消費型の産業であるために、第1次オイルショックの際多大の影響を受けた。それに懲りて備蓄用の石油タンクと省エネルギー対策を実施し、危機に備えるようになった。ところが物流業務はサービスで即時財(備蓄、在庫ができない)という宿命をもっている。
  生産しても、販売が努力して受注しても、物流力を伴なっていないと売上は立たない。物流は空気と水のように当然あるものだというのが理想であるが、それが物流の重要性を忘れさせていないか?阪神淡路大震災を想い出してみよう。物流はライフライン、生命線であり、ロジスティクス部門はこれを守る使命がある。
  ネゴシエーション能力のみに頼っていてはいけない。物流力の安定供給とシステム構築力による効率化が、ロジスティクス部門の任務なのだ。
(3)適正な価格の決定方法
  (1)項では購買は一言で言うとネゴシエーション能力と述べたが、すべてをこれで片付けることはできない。購買対象品の特性によって、適性な価格決定の方法は当然違ってくる。次が、購買品の特性による適正な価格の決定方法である。
①汎用品(コスト志向型)
品質、規格、納期、数量等をチェック
・どこでも、いつでも手に入るもの
徹底的な競争入札方式
電子入札(市場相場の把握)も検討
②特殊品(コストと安定供給バランス型)
・かなり入手先が絞られているもの
安定供給を配慮
ⓐ複数競争見積による購買
ⓑVA提案等に基づく購買
ⓒ最優遇条件を引き出した1社購買
原価計算の重要性
③稀少品(安定供給重視型)
・入手さきが非常に少ないか、独占の場合
ⓐ設計段階のVA協議
ⓑギブアンドテーク方式
ⓒ系列化の検討
原価分析の重要性
  以上の特性別価格決定の方法を、物流業務、輸送を例にあてはめてみると
①汎用品(コスト志向型)
普通車、貸切、パレット又は定型一般貨物、復路便利用などの輸送
②特殊品(コスト安定供給バランス型)
納品先から厳しいサービス要求があり、ドライバー、車両指定など、経験も
含めたノウハウを必要とする輸送など
③稀少品(安定供給重視型)
高度な技術を要する組立、据付、工事等を伴うような輸送や、荷主専用特殊
車両を要する輸送
  となり、コスト志向と、安定供給のいずれを重視するかによって、適正な価格決定の原則は変わる。物流業務は安定供給、サービス確保が第1であることは前述の通りである。また、物流業務は多品種少量化、多頻度化、JITの増加に伴い②、③に該当する業務のウエイトが大きくなっていることを認識しておくべきである。②と③では原価計算、原価分析とVA(Value Analysis:価値分析)が重要で、VAを物流ではロジスティクス、SCMのシステム構築力と考えればいい。プロの物流人材の確保は絶対に必要である。

3.改善の方向性

  物流業務のアウトソーシングの拡大、3PL事業者の発展の一方で、環境課題は山積みしている。しかし、経営資源をコア事業、コア業務に集中する流れを止めることはできない。
  しかし、ロジスティクス部門の役割りとして事業戦略における物流戦略(ビジョン )の立案、物流コスト管理、物流事業者の選定、契約業務は残る。
  これに対処するために、ロジスティクス部門の組織と人材について、次に改善の方向性を述べることとする。
①経営トップのロジスティクスに対する再認識(正しい理解)
②少数精鋭の優秀な物流人材の育成
・経営企画的位置づけをもったロジスティクスに精通した本社スタッフ
③製造現場等でIE、QC活動を主導するインストラクターの活用
・ロジスティクス現場の改善、監査も可能な現場スタッフの強化
④本社スタッフと現場スタッフの融合
・経営(事業)ビジョンと現場主義の一致
⑤ 物流事業者とのパートナーシップと業務監査(品質、安全、サービス)
制度の確立
・合理化提案に対するゲインシェアリングを含めて
⑥IT活用の先頭集団に立つ
・ERP、SCMとの連動

むすび

  むすびとして、私と諏訪東京理科大津久井教授と共著の「SCMへの道」の一節から、「SCM時代に求められる人材」としてあげた3項目を紹介しておく。
①トータルアプローチに習熟すること
②異なる組織、異なる企業とのコミュニケーションできる能力をつけること
③事実(データ)に基づく意志決定の習慣を社内に定着させること。

以上



(C)2005 Kenji Kasai & Sakata Warehouse, Inc.

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第63号3PL-わが国物流史上画期的な概念(2004年9月21日発行) /logistics-63/ /logistics-63/#respond Tue, 21 Sep 2004 04:38:16 +0000 /jp/?p=2908 株式会社湯浅コンサルティング 代表取締役社長 湯浅 和夫

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執筆者 湯浅 和夫
株式会社湯浅コンサルティング 代表取締役社長
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1946年 3月 埼玉県生まれ
    • 1969年 3月 早稲田大学第一商学部卒業
    • 1971年 3月 同大学大学院商学研究科修士課程修了。専攻は「管理会計」
    • 1971年 4月 株式会社日通総合研究所に入社
    • 1993年 4月 同社経営コンサルティング部企業物流研究室長
    • 1996年 4月 同社経営コンサルティング部長
    • 1999年 6月 同社取締役
    • 2001年 6月 同社常務取締役
      (経営コンサルティング部・情報システム部担当)
    • 2004年 5月 株式会社湯浅コンサルティング設立 代表取締役社長に就任
      現在に至る
    委員・所属団体等
    • 株式会社日通総合研究所 顧問
    • 社団法人 日本施設園芸協会「野菜産地流通システム検討委員会」
    • 社団法人 全日本トラック協会「物流経営士資格認定委員会」
    • 財団法人 中部トラック総合研修センター
      「カリキュラム検討・資格認定委員会」
    • 全日本運輸産業労働組合連合会「21世紀物流フォーラム」
    • 社団法人 日本ロジスティクスシステム協会「調査・情報委員会」等委員
    • 東京商船大学 客員教授
    • 日本物流学会 理事
    • 財団法人ふるさと情報センター 評議員
    主な著書
    • 「物流管理入門」日本能率協会
    • 「多品種少量物流への挑戦」同友館
    • 「物流マネジメント革命」ビジネス社
    • 「90分でわかる物流の仕組み」かんき出版
    • 「手にとるようにIT物流がわかる本」かんき出版
    • 「これからの物流がわかる本」PHP研究所
    • 「現代物流システム論」(共著)有斐閣
    • 「物流管理ハンドブック」(共著)PHP研究所
    • 「物流ABC導入の手順」(編著)かんき出版
      *CD-R付き

目次

1.3PLをどう解釈するか

  これをお読みになっている皆さまは、おそらく物流のプロといってよい方々が多いと思われる。そこで、お聞きするのだが、皆さまは、最近よく見聞きする「3PL(サードパーティ・ロジスティクス)」という言葉についてどう理解されているであろうか。「3PLについては諸説いろいろあってわからん」などと言われては困る。新しい言葉は、新しい概念を提起しているものであり、自分なりの理解を持つことが求められる。
  たしかに、3PLの解釈については諸説ある。3PLというのであるから、1PLもあれば2PLもある。諸説というのは、このそれぞれに何を当て嵌めるかというところで分かれるとみてよい。たとえば、1PL;荷主企業、2PL:物流業者、3PL:荷主・物流業者以外の第三者という解釈もあれば、1PL:メーカー、2PL:流通業者、3PL:物流業者といった主張もある。ただ、このような、そこにどういう主体を当て嵌めるかという点は、実は重要ではない。どの説を採ろうと、言っていることは同じだからである。
  これは、上であげた主体が一体何を担う主体であるのかということを考えてみればわかる。何を担うかは明らかである。もちろん、物流を担うのであるが、輸送や保管といった物流活動を担うわけではない。物流活動だけを担うのであれば、主体としては物流業者しか出てこない。流通業者や第三者などという主体が登場しているのは、個々の活動ではなく、物流システムそのものの構築・運営・管理を担うということを意味しているといえる。
  さて、ここでポイントになるのは、どういう主体の当て嵌め方をしようが、共通するのは、3PLの主体から「荷主企業」が外れているということである。ここが3PLを解釈するポイントである。つまり、3PLとは、荷主企業以外の主体が、物流システムの構築・運営・管理などを行う形態をいうと解釈するのが妥当だということである。

2.これまでわが国企業では「1PL」が主流だった

  3PLをこのように解釈すると、ちょっとオーバーな言い方をすれば、3PLはわが国物流史上において画期的な概念であるといえる。これまで、わが国においては、物流システムは荷主企業の物流部というところが構築し、管理を行ってきた。物流業者は、輸送や保管など実作業レベルを担うという役割分担が当たり前だったのである。
  このように、荷主側が物流システムの構築・管理を行い、物流業者がそのシステムにおける実作業を担うという分担関係を1PLといい、わが国ではこの関係が主流で来たのである。振り返ってみると、1970年以降、物流が企業経営において注目され、多くの企業で物流部のような物流を専門に管理する部署が作られてきた。これら物流を管理する部門は、物流コストを削減するため、物流拠点の集約や拠点内作業の改善、共同化、果ては輸送効率の向上や配車にまで取り組んできた。ここで疑問に思うのは、なぜ物流を管理する部門が作業や輸送という実活動の効率化に取り組んできたのかということである。これらは、本来、実活動を担う物流業者に任せればよいことだからである。
  ところが、物流業者は、これまで、荷主企業から指示されたとおりに活動すればよいという認識を当たり前のように持っていた。そのため、荷主企業の物流部が活動の効率化までを自分の仕事として行ってきたのである。その結果、物流システムの構築・運営・管理という中で、物流業者は運営だけを行い、そのシステム作りと管理が荷主企業側の仕事であるということが当たり前の関係となってきてしまったわけである。
  このような関係で30年が経った。余談になるが、このような関係でどんなことが起こったかというと、荷主企業間での物流格差の発生という事態が起こったのである。物流部主導の場合、それぞれの社内における物流部門の位置づけ、人材配置、予算額等により物流への取り組みに違いが生じてしまう。これが、物流レベルの格差となって現れる。
  もちろん、企業間で物流の格差が生じてもいいではないかという意見もあろうが、いい悪いの問題ではなく、企業間の物流格差の発生は1PL特有の現象であるということが言いたいのである。仮に3PLが主流の場合、それほど大きな企業間格差は生じない。3PLで荷主企業の物流レベルに格差が生じるのは、3PL事業者側のレベルの格差によるものであり、そもそも、低レベルの事業者は必然的に淘汰されてしまうからである。3PLという市場においては、品質の低いサービスは淘汰が避けられない。それゆえ、1PLほどの格差は生じないのである。
  ちょっと話が横道にそれたかもしれないが、要するに、3PLの登場は、これまでのわが国における荷主企業と物流業者との役割分担関係を大きく転換させる意味合いを持っているということである。その意味で、3PLは画期的な概念なのである。敢えてふれてこなかったが、3PLはアウトソーシングと同義である。物流システム構築という業務をアウトソーシングするという物流形態を3PLというというのである。
  それはともかくとして、1PLと3PLが登場したとなると、2PLとは何かという疑問がわく。答えは、2PLは、1PLと3PLという対極を成す概念の中間に位置するものであるということになる。物流システムの構築において部分的に物流業者が提案したシステムを活用するとか、過渡的に1PLと3PLが混在する形態といえる。概念的には、あまり重要性を持たないと言って過言ではない。

3.3PLはこう定義されている

  さて、ここで整理してみると、3PLは、1PLとの比較で画期的な意味を持っており、これまで荷主企業の物流部で担うのが当たり前だと思われていた物流システムの構築・管理という業務を物流業者などに代表される荷主以外の事業者が担うという役割分担になるということである。そして、敢えて言えば、これが本来的な役割分担なのであるということでもある。これまで物流業者が果たすべき役割を果たしえなかったため、やむなく荷主企業がその役割を果たしてきたが、それを担い得る事業者が登場してきたということである。
このように理解して、ここで3PLについての定義を二つ紹介しよう。

*総合物流施策大綱
「荷主企業に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務」
*日本ロジスティクスシステム協会
「荷主企業に対してその立場に立ってロジスティクスサービスを戦略的に提供する事業者を活用すること」

  著名な二つの定義であるが、これら二つの定義はまったく違った表現をしている。しかし、表現内容は違っても、実は、これら二つの定義は同じことを言っているのである。それぞれに使われているキーワードから共通する要素を引き出し、改めて、3PLとは何かということを探ってみよう。
  まず、物流施策大綱の定義であるが、ここにおいてキーワードと思われるのは「物流改革」と「包括」という二つの言葉である。「物流改革」という言葉が何を意味するかは明らかである。この言葉は「大幅な物流コストダウン」を意味している。つまり、荷主企業に大幅なコストダウンを提案するということである。また、「包括」という言葉は「輸送、保管という単機能ではなくもっと広い範囲」を意味する。
  また、日本ロジスティクスシステム協会の定義におけるキーワードは「荷主企業の立場に立つ」と「戦略的」という言葉であろう。「荷主企業の立場に立つ」ということは、物流事業者が自己の利益を優先せず、荷主企業の利益を優先するということを意味する。荷主企業の利益とは言うまでもなく「物流コストダウン」に他ならない。「戦略的」という言葉は、荷主企業に対し「ライバル会社と比べコスト優位に立つこと」という意味であろう。つまり、この定義も、荷主企業の立場に立って、コスト優位に立つようなサービスを提供するということである。
  このように見ると、ここで紹介した二つの定義は、いま荷主企業が行っている輸送や保管という業務を低コストで請け負いますというこれまでの物流事業とは次元が異なるサービス提供が3PLであると言っているのである。当然のことながら、大幅なコストダウンは現在行われている物流活動を請け負うということを前提にしては不可能である。荷主企業の立場に立って物流システムそのものにメスを入れることが必要である。
  ただ、これら二つの定義を見ても、もう一つわかりづらい印象を持つのは、肝心な記述がないからである。「これまで荷主企業が行っていた物流システムの構築・管理という業務を荷主企業に代わって行うこと」というように、これまでの経緯を踏まえてその新規性を強調することが必要だと思うのだが、いかがであろうか。

4.3PLはこれまでの常識を破壊する

  3PLは、画期的だと強調してきたが、言葉を換えれば、3PLはこれまでの常識を破壊する概念だということができる。
  すでに述べたように、荷主企業の物流部においては、もはや物流活動の効率化という業務は存在しなくなる。配車や車両効率の向上などは言うに及ばず、拠点の集約も作業の改善も共同化もすべて3PL事業者の業務に入ることになる。それでは、物流部門は何をすることになるのか。これについては考えるまでもない。在庫管理を原点にしてロジスティクスを導入し、SCMへの展開を守備範囲にすることが望まれる。また、物流ABCをベースにして物流サービスのマネジメントを行うことも重要な仕事である。やや抽象的な表現になるが、物流部の仕事を活動レベルからマネジメントレベルに移行していくということである。もともと、これが物流管理の本来業務なのである。
  また、3PL事業者は、本来の意味で、「荷主企業の立場に立つ」ことが求められる。よく言われるように、アセットを持っている物流事業者が3PLを行おうとした場合、自社の保有する物流施設が荷主の物流システムにおいて適切な立地にないとしたならば、自社のアセットは使わず、適切な立地にある他社のアセットを躊躇なく選択することが要求される。自社のアセットにこだわるのは自社の利益を優先しているということであり、それでは「荷主の立場」に立ったことにはならない。
  「初めに荷主の利害ありき」であり、自社のアセットを売りたいなどという自社の利害が先に来るようでは3PLとは言えない。簡単に言えば、荷主企業の物流担当者ならどう考えるだろうと発想することが重要だということである。
  このように、3PLは、これまでのわが国の物流の常識の範囲内には存在しなかったまったく新しい物流形態なのである。わが国の物流の発展のために大事にしなければならない概念といえる。その意味では、3PLをこれまでの延長線上で理解し、活動レベルの業務受託範囲の拡大程度にとらえると、3PLは、その本来の画期的な概念を失ってしまう恐れがある。物流事業者にとっては絶好の新規業務領域であり、その本来の概念を踏まえて自社に取り込むことが不可欠である。
  企業物流のあり方を大きく変革する可能性を持つ3PLを自社の変革に活用する姿勢が荷主企業、物流業者双方に求められるといえよう。

以上



(C)2004 Hideo Noguchi & Sakata Warehouse, Inc.

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第20号アウトソーシングにおける荷主企業の課題(2002年11月21日発行) /logistics-20/ /logistics-20/#respond Thu, 21 Nov 2002 06:19:11 +0000 /jp/?p=3007 高橋技術士事務所 代表 高橋 昭博

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執筆者 高橋 昭博
高橋技術士事務所 代表

 執筆者略歴 ▼
    経歴
    • 1957年3月 慶応義塾大学 経済学部卒業、キリンビール(株)入社
    • 1980年4月 キリンビール(株) 物流部担当部長
    • 1994年1月 同社 退社、 同月 (株)カサイ経営 取締役
    • 1997年3月 同社 退社
    • 1997年4月 高橋技術士事務所を設立 代表
      現在に至る
    経営コンサルタントとしての資格等
    • 技術士(科学技術庁登録JR-691号 経営工学部門
      専門分野:物流および包装)
    • 早稲田大学 アジア太平洋研究センター 講師
    • 日本物流学会正会員、物流士、事務管理士、
      宅地建物取引主任者
    専門分野
    • 物流管理組織、物流コスト管理、物流ネットワーク、 輸送システム
    • 物流子会社管理、物流共同化、トラック運賃制度、物流作業料金制度
    • 物流マン教育 他
    著 書
    • 1998年 『物流部業務完全マニュアル』
      アーバンプロデユース (370p)
    • 1997年 『-現場から発想した-物流マン必携マニュアル』
      プロスパー企画(339p)
    監 修
    • 1999年 『図解 物流のしくみ』 ナツメ社(174p)
    共 著
    • 1994年 『実例 業種別のトラック運賃がわかる本』 日本流通新聞社
    • 1994年 『物流共同化 実践マニュアル』 日本能率協会
    • 1993年 『物流効率化 大事典』 産業調査会
    • 1986年 『物流メカトロ戦略』 同文館
    誌紙出稿
    • 輸送経済新聞(94年から50回連載)
    • LOGISTICS(94年から連載中)
    • 物流情報(財)情報技術センター(97年)
    • 流通設計(97年)他

目次

1.はじめに

労働力の流動化とあいまって、業務の外部化が手軽に行われるようになった。アウトソーシングは、今や安易なコスト削減の手段と化しているといっても過言ではあるまい。受け皿となるアウトソーサーの中には、「安かろう悪かろう」を地でいく例も仄聞する。この結果として委託側の荷主企業は、コスト削減と引き換えに新たな操業上のリスクを背負い込んでいると考えられる。
今回は、アウトソーシングの現状・問題点を整理し、これに関わる業務委託者(簡単のために、以下荷主という)の課題と解決の方向を考えることにする。

2.業務委託のルール

この問題の根源は、荷主が業務委託の基礎知識がないまま、勝手な理解のもとにコスト削減を求めてアウトソーシングに走るところにある。
本テーマの展開に直接関わることなので、はじめに最低限の業務委託ルールを掲げる。

(1)受託業者の独立性

業務委託とは、荷主が業務や事務の処理を委託し、受託業者がその処理を承諾して、自己の責任において受託業務処理をある程度の自由裁量をもって、独立して行うことをいう。請負の場合と同様、受託業者が自社の事業として行うものであり、このため労働者が委託者の事業所で業務に従事していても、荷主は労務管理を全く行わず、労務指揮は全て受託業者が行い、労働者は受託業者の指揮命令下で業務や事務を遂行する。

(2)安全管理は委託者と共同で

受託業務が荷主の事業所内や工場で行われる場合は、施設管理・災害事故防止、警備や機密保持の理由から所定の拘束を受けるのはやむを得ないが、その遵守義務を負うのはあくまで受託業者側であり、荷主が直接これらの指揮監督をしてはならない。このように、受託業務の遂行については受託業者の独立処理が原則であるが、安全上の管理等の指図は荷主側が行っても問題はない。

(3)「混在」の解釈

受託し、就労する「作業場所」については、同じ部署や同じ部屋で作業する場合でも、業務が独立しており、客観的に区分されて受託業者側の責任の管理下にあれば混在には該当しないとされる。

(4)対価の算定

対価設定については、実費ではなく、一定金額または作業工程別工数×作業工程単価の形で算出されることが望ましい。業務委託では、対価は処理した業務の報酬として支払われるものであり、一般的に労務費による計算は請負の趣旨に反するので、仕事の対価として一定の金額を見積もり算出することが多い(労働者数×従事日数×単価という形は労働者の労務に着目する決め方なので避ける)。

3.アウトソーシングの問題点

荷主は、工場長のみならず購買担当者・現場管理者を含めて、外部委託に関わる問題点をまず理解するべきである。以下、筆者がお手伝いした企業の事例等から、問題点をまとめてみよう。

(1) 業務の外部委託は荷主企業の購買規定上の購買対象物品外であることから、業務移管目的は事業所ごとにまちまちで、独自の方法で契約を行うことが多い

工場の場合、基本的に工場長は製造計画遂行の一環として製造コスト責任を負っている。このため工場長は、これまでは製造部門関連の作業はコア作業として製造能力規模・製造アイテム・地域性に則った作業現場労働力の調達方法を伝統的に採用し、自社従業員(正社員・臨時社員・アルバイト等)のみに従事させてきた。最近になって、労働力を外部から調達することによってコストダウン策とする動きが活発になったが、自然発生的に工場ごとに行われるようになったことから、外部委託の目的・委託範囲・契約取り決め方も工場独自のものとなっている。
ただし物流関係作業については、これまでも請負作業の形で外部業者に委託してきた。多くの荷主企業では、総物流費を把握する必要から、製造コストの一部である工場構内物流費については本社の物流部門が契約ルールを定めており、そのルールは委託作業範囲・地域性を加味した職種別人件費単価・間接費の許容率など、かなり精緻な取り決めを備えている。したがって、物流部門では上記1の外注ルールは理解されているようである。

(2) 荷主企業における業務委託に関する管理体制は、いずれも概括的な運営ルールにとどまっている

製造ライン作業または周辺作業を外部業者に委託するに当たって、法規制によって自らの指揮命令が受託業者作業員に及んではならないことを末端まで徹底せず、大まかな管理体制となっている。作業現場では労務提供的な運営となり、二重管理の弊害が生じることが多い。

(3) 受託業者作業員の技能いかんが荷主企業事業所の操業度に与える影響度が大きくなっている

これまでのように荷主企業が製造ライン全ての稼動管理を自ら行う場合は、厳格な指揮命令系統を構築し、必要な技能レベルの適材を必要数配置するとともに、組織的・継続的に技術訓練を実施してきた。しかし製造機器の運転・修理などまで業務委託範囲が拡大するに伴って、受託業者サイドの作業員の技能いかんが製造ライン全体の操業度に与える影響度が大きくなっている。とくに製造ラインの上流から中間にかけて外部委託する場合には、最悪の場合操業停止に至ることもあり得る。
しかし、このような事態を想定して、個々の作業について技術的な要求レベルを受託業者に示すことは少ない。

(4)荷主企業は、業務委託の目的の重点を経済性追求におき過ぎる

荷主は、業務委託の主目的を経済性(人件費格差)追求のみにおくことが多い。契約担当者が委託契約を締結するに当たって、荷主は少しでもコスト低減を図るために高賃率の監督者や作業リーダーを認めず、配置人員数を制約するなど、作業管理体制に不備を招かざるを得ないケースが多い。
裏腹に、荷主の現場管理者は一方的に高技能者を指名して定常的かつ固定的に配置することを要請する。この結果、受託業者は契約職種より高技能レベルの作業員を配置せざるを得ず、高い人件費が受託業者の採算を圧迫している。

(5)作業コストを度外視した競争事業者の参入が頻発している

受託業者側の作業コストのほとんどを占める人件費は下方硬直的である。荷主が求める技能レベルの作業員を所定の人数だけ配置すれば、作業コストは一定の金額以下には下がらないことは自明のことである。また作業条件が荷主側の設備状況によって決まることから、受託業者の工夫による作業改善の余地は少ない。このため、いったん作業委託を行って初年度にコストダウンが実現した後は、荷主側が人員削減につながる設備改善を実施したり大幅な増産体制をとらない限りは、それ以上に受託契約金額を低減することは容易ではない。
しかし、コストを度外視した競争事業者の参入提案が頻発している。この参入を許す結果として、操業停止や労働災害などのリスクが現実に増えるだけでなく、荷主企業は真のパートナーであった物流事業者を排除して禍根を残す愚を犯すケースが出てきている。

(6)製造コストに占める外注コストの比率が増えている

業務委託に伴う「コストと作業品質とのトレード・オフ」に直面する中で、業務委託の拡大に伴って製造コストに占める外注コストが急速に増えている。例えばA社では業務委託費が年間で72臆円に上っていることから、今後は適切なコスト管理が求められている。

4.業務委託者(荷主)の課題と解決の方向

この問題の根源は、荷主が業務委託の基礎知識がないまま、勝手な理解のもとにコスト削減を求めてアウトソーシングに走るところにあることは既に述べた。外部委託の基本ルールが理解されたことを前提として、上記の問題点を踏まえて、荷主が抱える課題と解決方策を考えることにする。

【課題1】業務委託に伴う操業リスクを回避すること

業務委託の範囲が末端の現場作業を超えて生産関連等のコア周辺業務に拡大する結果、受託業者の作業品質が荷主企業の操業度に及ぼす影響が一段と大きくなるだけでなく、業務委託作業について安全管理の見直しが求められている。
因みに、B社における労働災害発生状況を見ると、業務委託範囲拡大の結果、この1年間で荷主が雇用する作業員(社員)の災害件数は半減する一方で、業務委託先の災害件数は1.8倍になっている。
【解決方策】
業務委託する結果として、これまで荷主が社員教育を通じて保ってきた運転管理技術・メンテナンス技術および安全知識の水準が、そのまま受託業者に引き継がれることはないと考えた方がよい。コスト削減が外部委託の目的であるとすれば、この「コスト」はあくまでトータルコストでなければ意味がない。
荷主がISOシリーズを取得しているならば、当然受託業者にもそのレベルでの作業遂行を期待しなければならない。そのためには、とくに委託業務範囲と荷主サイドに留保する業務との接点に着目して作業マニュアルを再整備し、まず受託業者の管理者を教育指導し、その上で受託業者内での社員教育を徹底させることが必要である。また、安全を含めた改善チームを荷主・受託業者が共同でつくり、日常的に作業現場の巡回点検を行うことを制度化することも有効である。

【課題2】業務委託に伴う低レベル作業員配置を回避すること

荷主企業が契約料金の低減を強く求める結果、委託業務の難易度やリスクに対応できない低賃金(=低レベル技能)労働者が投入され、技術上・安全上の問題が発生する可能性がある。
【解決方策】
荷主企業は、業務委託範囲の作業マニュアルに準拠して、作業品質・コスト面での目標を明示した「契約基礎資料」を作成することが必要である。これにより、荷主企業と物流事業者の双方が、委託作業現場の実情に即した作業遂行上の必要条件(とくに配置人員の技能レベル)を共有することができる。また、新規参入業者の資質や経営方針をチェックするツールともなる。

【課題3】業務委託に伴う受託業者の採算圧迫を回避すること

業務全体を丸投げする場合は別であるが、例えば製造ライン作業の一部を業務委託する場合は、荷主サイドに留保する作業と委託する作業とが機能的な連続関係にあることが一般的である。このため荷主企業の現場においては、自らの職場の操業リスクを避けるために、業務委託契約内容を無視して一方的に高技能者を定常的に固定配置することを要請することが多い。受託業者は力関係からこの要請に屈して、契約よりも高技能作業員(高人件費)を配置せざるを得ず、受託業者の採算が悪化する。これは、最終的に荷主のリスク増となって撥ね返ることになる。
【解決方策】
【課題2】で述べた[解決方策]が実行されれば、この課題も解決する。業務の外部委託が荷主企業の購買規定上の購買対象物品外であるとはいえ、契約内容に沿った人員配置がされているならば、それ以上の現場の要求は不当(契約違反)である。
荷主管理者は、契約内容(サービスレベル)が使用者(利用者)である荷主現場管理者のニーズに合致したものであることを確認したうえで、契約を締結するべきである。

【課題4】業務委託に伴うコストと作業品質とのトレード・オフを回避すること

荷主企業と受託業者がコストと作業品質とのトレード・オフ問題で対立し、パートナーとして納得した上で最適な人材配置を実現することができない。
【解決方策】
契約交渉データとして「荷主企業が求める作業品質を確実に保証するための職種および職種別の作業工数」を整備する。製造ライン全体の操業を安定確保し、あわせて作業安全を確保できることが契約の前提条件である。対価設定のルールとしては、契約上のあるべき姿として対価を決め、技術ランク別の時間単価、もしくは作業工程別単価で算定する。人員数に端数がありえない以上、上位ランクの単価の高い人が安い仕事を兼務し処理した場合でも、当然上位者の単価を適用する。
このような業務外部委託の基本ルールを確立することで、荷主・物流事業者双方の協調意識を高めることができる。このような形でパートナーシップを醸成していくことによって、はじめて健全な取引関係を保ちながらコストダウンを推進する素地が作られることを荷主企業・物流事業者双方が理解するべきである。

以上



(C)2002 Akihiro Takahashi & Sakata Warehouse, Inc.

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