SAKATA /en 一世紀以上の経験と実績に基づき「楽々倉庫」を通じて新たな価値創造を目指す Fri, 09 Jan 2026 05:49:52 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.3 /en/wp-content/uploads/2021/07/sakata_icon4-130x130.png SAKATA /en 32 32 第572号 すべての人に優しい物流センター(前編)(2026年1月20日発行) /en/logistics-572/ /en/logistics-572/#respond Tue, 20 Jan 2026 00:00:00 +0000 /en/?p=21208 執筆者  長谷川 雅行 (一社)日本物流資格士会 顧問  執筆者略歴 ▼ 略歴 1948年 生まれ 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締 […]

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執筆者  長谷川 雅行 (一社)日本物流資格士会 顧問
 執筆者略歴 ▼
    略歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    • 2017年(一社)日本物流資格士会 顧問
    活動領域
    • 日本物流学会
    • (一社)日本SCM協会
    • (一社)日本物流資格士会会員
    • 流通経済大学客員講師
    • 港湾短期大学校非常勤講師
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
  • 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
  •  

    目次

    • 1.はじめに
    • 2.荷動きなど「世間」の動向
    • (1)荷動きの動向
    • (2)トラック運送業界の景況感
    • (3)「2024年問題」に対する企業の意識調査
    • (4)賃金・労働時間の動向
    • (5)トラック運送業の倒産動向
    •   

      1.はじめに

      「物流の2024年問題」については本ロジスティクス・レビュー誌で、これまでも数回にわたって状況報告などをさせて頂いた。直近では、「『負のスパイラル』から『正のスパイラル』へ」(2024年11月7日 第543号~2024年12月17日 第546号)で4回にわたって、 1.はじめに 2.荷動きなど「世間」の動向 3.適正運賃での取引に向けた国土交通省などによる4つの支援策 4.取引の適正化に向けた公取委・中小企業庁の動き 5.運賃・料金の改定で労働環境・労働条件の改善を 6.おわりに をご説明して、トラック運送の経営を「正のスパイラル」に乗せて頂くための方策を、読者の皆さんと一緒に考えてみた(以下、「前稿」という) 本稿(2025年8月末執筆)が配信されるのは、2025年11月の予定なので、2024年4月スタートから既に1年半以上が経過していることになる。しかし、国土交通省・トラック協会などが述べているように、「物流の2024年問題」は長期的、かつ構造的な課題なので、引き続き、関係者(トラック運送事業者・荷主・行政・業界団体など)が協力して取り組んでいく必要がある。 ともすれば、喉元過ぎれば熱さを忘れるかのように「物流の2024年問題は、もう終わった」という傾向もみられる。 本稿では、前稿で述べたことを振り返りつつ、その後の各施策(通称、「新・物流二法」「トラック新法」など)の動向などを踏まえて、読者の皆さんの「物流の2024年問題」への息の長い取り組み策を述べたいと思う。

      2.荷動きなど「世間」の動向

      本項を実証的研究というのか否か分からないが、前稿で挙げた各種データと、その最新版を比較して、現在のトラック輸送・労働力不足などの傾向をフォローしてみたい。 誌面の都合で、前稿データは省略するので、バックナンバーから前稿を開いて比較しながら読まれたい。

      (1)荷動きの動向

      NX総合研究所の「2025年度の経済と貨物輸送の見通し」(2025年7月14日発表)によ ると、2024年度の実質経済成長率は0.2%増と微増にとどまり、国内貨物輸送量は、上期が 1.1%増と堅調に推移したが、下期は建設関連貨物が大きく落ち込んだことを受けて3.8%減となり、通年で1.4%減に終わった。 ちなみに新聞報道では、生コン・セメントなどの出荷減が続いており、その要因の一つは「建設の2024年問題」(時間外労働の上限規制、人手不足)にあると言われている。 この時点では「2025年度の実質経済成長率は0.6%増と加速も、力強さを欠く動きに」と予測されているが、筆者は、その後のトランプ相互関税の動向を考慮すれば、不透明と言わざるを得ないと思う。 2025年度の国内貨物総輸送量については、上述のように、建設関連貨物を中心に全品類にマイナスが予測されるなか、通年では2.1%減と4年連続の減少と予測されている。筆者は、生産関連貨物についてもトランプ相互関税により輸出が減少すれば、4項で述べるように、港湾や空港までの国内輸送にも影響が出ると思う。
      図表1 経済活動と輸送量
      (出所)NX総合研究所「2025年度の経済と貨物輸送の見通し」
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      1)営業用トラック 2024年度は0.0%減と微減し、2025年度は2.2%減とマイナス幅が拡大すると予測されている。これは、上述のように、建設関連貨物の不振が、堅調な生産関連貨物・消費関連貨物の足を引っ張る状況が続くことによる。 2)自家用トラック 建設関連貨物の比率が高い自家用トラックは、さらに影響が大きく、2024年度は4.2%減、2025年度も2.1%減とマイナス継続と予測されている。 さらに、2025年6月の「企業物流短期動向調査」(2025年7月31日公表)では、前稿との対比を見ると、図表2のように、荷主の国内向け荷動き指数は、「物流の2024年問題」がスタートした2024年4~6月「実績」も、従前どおり「見込み」を下回る状況が続いていることが分かる。
      図表2 荷動きの実績(見込み)と見通しの『荷動き指数』
      (出所)NX総合研究所「企業物流短期動向調査(2025年6月調査)」
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      以上のことから、前稿に引き続いて、少ないパイを多くのトラック運送事業者が取り合う状況は続いていると思わざるを得ない。

      (2)トラック運送業界の景況感

      (公社)全日本トラック協会(以下、「全ト協」という)の「第129回トラック運送業界の景況感(速報)」(2025年5月19日公表)では、2025年1~3月におけるトラック運送業界の景況感(DI=動向指数)として、以下のように述べている。 1)今回の状況 輸送量は増加傾向にあるものの、燃料価格の高止まりや物価高による輸送原価の上昇分を十分 転嫁できず、営業利益・経常利益が悪化傾向にあることから、景況感は前回▲18.2から▲18.7へ 0.5ポイント悪化した。 2)今後の見通し 2025年4~6月期の見通しは、米国関税政策がもたらす事業環境の不透明化や人材不足、物価上昇等を反 映し、景況感は今回▲18.7から▲26.2へ7.5ポイント悪化する見込みである。 上記(1)同様に、貨物輸送量・景況感については厳しい見通しとなっている(図表2参照)。
      図表3 トラック運送業界の景況感の推移(H20以降)
      (出所)全日本トラック協会「第129回トラック運送業界の景況感(速報)」
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      また、本稿の主眼点である、運賃・料金、労働時間等については、以下の通りである。 ①実働率は▲1.8(前回▲0.6)と1.2ポイント悪化、実車率は▲2.7(前回0.6)と3.3ポイント悪化し、輸送効率は悪化した。2025年4~6月期は▲8.4(今回▲1.8)と6.6ポイント悪化、実車率は▲9.8(今回▲2.7)と7.1ポイント悪化 する見込みである。 ②運転者の採用動向は▲27.6(前回▲4.5)と23.1ポイント低下、運転者の雇用動向(労働力の不足感)は91.1(前回84.4)と6.7ポイント上昇し、労働力の不足感は一段と高くなった。2025年4~6月期は▲23.6(今回▲27.6)と4.0ポイント上昇し、運転者の雇用動向は95.1(今 回91.1)と4.0ポイント上昇し、労働力の不足感は一段と強くなる見込みである。 (筆者注:前稿でも述べたが、実働率・実車率が悪化してトラックが動かなくなるのに、ドライバー不足が強まるのはなぜか?転退職者が増えるからか?) ③所定外労働時間は▲37.3(前回▲35.1)と2.2ポイント減少、貨物の再委託(下請運送会社への委託割合)は▲14.2(前回▲1.9)と12.3ポイント減少した。2025年4~6月期は▲28.4(今回▲37.3)と8.9ポイント増加し、貨物の再委託は▲16.0(今回 ▲14.2)と1.8ポイント減少の見込みである。 (筆者注:再委託割合の減少は、所定外労働時間の減少による「自社運行」の増加によるのか、再委託先が見つからないのかは不明) ④一般貨物(特別積合せ運送貨物を除く)では、運賃・料金の水準は34.3(前回47.1)と12.8ポイント悪化したものの、輸送数量 は1.9(前回1.3)と0.6ポイント改善したことから、営業収入(売上高)は4.3(前回3.3)と1.0ポイン ト改善した。2025年4~6月期は、輸送数量は▲1.4(今回1.9)と3.3ポイント悪化、運賃・料金の水準は17.9(今 回34.3)と16.4ポイント悪化することから、営業収入(売上高)は▲6.8(今回4.3)と11.1ポイント 悪化する見込みである。 (筆者注:前稿同様に、ドライバーの所定外労働時間だけが「好転」する見込みであるが、これはドライバーの手取りが、ますます減少することを示唆するのではないだろうか。また、再委託比率の減少により、所定外労働時間が増加する見通しであるが、これが一時的なものか構造的なものか見極める必要がある。この辺りは、(4)の賃金・労働時間の動向、(5)の倒産動向と重ね合わせて読み取る必要がある)

      (3)「2024年問題」に対する企業の意識調査

      前稿では、帝国データバンクが2023年12月に実施した「2024年問題に対する企業の意識調査」を活用して、以下の調査結果の概要を紹介した。同社調査でいう「2024年問題」とは、「建設業、トラック・バス・タクシードライバー、医師などの(中略)人手不足による工期の長期化や業務の停滞などの諸問題、いわゆる『2024年問題』」とされているので、下記①②⑤は「物流」に限定していないことに留意して読まれたい。 ①「2024年問題」全般に対して「マイナスの影響がある」とする企業は59.9%となった。とくに、「物流の2024年問題」では、68.6%の企業が「マイナスの影響がある」と回答した ②「2024年問題」に対して具体的な影響を尋ねたところ、「物流コストの増加」が66.4%と最も高かった(複数回答) ③「物流の2024年問題」への対応策、「運送費の値上げ(受け入れ)」が43.3%でトップであった(複数回答) ④「物流の2024年問題」へ「特に対応しない」理由、「これまで通りで問題が生じず、対応する必要がない」が34.6%で最も高かった(複数回答。図表3参照) ⑤「2024年問題」に対する支援策は、「金銭的支援」(34.0%)と「人材育成・確保支援」(32.3%)が3割台で上位になった(複数回答) 前記の労基法(時間外労働時間上限の年間960時間規制)施行前の調査のためもあるが、3分の1以上の企業が「物流の2024年問題は、これまで通りで問題が生じず、対応する必要がない」と無関心ともいえるのには驚かせられた。 同社では、その後、フォローアップ調査もしていないようなので、今回は、(1)で紹介した、NX総合研究所が「企業物流短期動向調査(2025年6月調査)」に追加して同時調査した「物流の2024 年問題に関する追加調査(2025年6月調査)」を活用することにした。 本調査は、企業物流短期動向調査回答企業のうち653社が回答しており、同社では「物流の2024年問題」に対する現場の課題と今後の見通しを整理するとともに、調査の連続性という観点からか、今後も継続的・定期的に調査を実施していく予定としているので、調査結果に期待している。 調査結果の概要と筆者のコメント(筆者注)は、以下の通り。 ①物流の2024年問題は業種を問わず影響を及ぼしており、その影響はトラック輸送量の困難さや、トラック運賃に反映されるようになっている。日本銀行「企業向けサービス価格指数」によると、陸上貨物輸送は徐々に指数が高まっている。特に海上貨物輸送は2021年から急上昇し、2025年においても120を超える水準で高止まりしている。 ②前回調査に比べて、物流の2024年問題に取り組んでいる企業の割合は増加している様子がうかがえる。主な取組として、「輸送スケジュールやリードタイムの緩和」、「モーダルシフトの推進」、「バラ積みを廃し、発着一環のパレット利用を推進」など自社内で完結できることから取り組んでいる割合が多い。 ③今回の調査では、物流の2024年問題の影響を「今後は厳しくなる」と回答した割合が10ポイント以上減少した。この認識が妥当なものか楽観的なものかについては、今後も継続的に注視していく必要がある。 (筆者注:調査対象を「物流の2024年問題」に絞り込み、荷主企業の物流(出荷)担当者からの回答ということもあり、上記の帝国データバンク社調査よりも、具体的かつ有益な結果と思われる)
      図表4 貴事業所における2025年5月現在の「物流の2024年問題」の影響
      (出所)NX総合研究所「物流の2024 年問題に関する追加調査(2025年6月調査)」
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      図表5 足元(2025年6月)における影響
      (出所)図表4に同じ
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      図表6 トラック運賃の状況
      (出所)図表4に同じ
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      図表7 「物流の2024年問題」への取り組み状況
      (出所)図表4に同じ
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      上述したように、毎日のトラック手配に追われている荷主の物流(出荷)担当者からの回答であり、それだけに、新聞紙上の経営トップ層アンケートとは異なった、切実な現場の回答とも言えよう(図表6のグラフ「横ばい」と「やや高くなった」は、表示ミスか)。

      (4)賃金・労働時間の動向

      8月6日に公表された2025年6月の毎月勤労統計調査(速報)では、運輸・郵便業の全労働者の現金給与総額は51万5642円で、2024年6月に比べ4.4%減っている。全産業の給与総額は51万1210円で2.5%増となっているのに対して、トラックドライバーの実収入は「物流の2024年問題」への取り組みにも関わらず、減っていると言える。 運輸・郵便業の給与の内訳をみると、所定内給与が1.2%減の28万399円、所定外給与が2.4%減の4万2289円で、所定内・所定外とも減少傾向にある。就業形態別の現金給与総額は、一般労働者(トラックドライバーが多い)が1.3%減の60万1853円、パートタイム労働者が2.5%増の14万5520円だった。 運輸労連・交通労連のトラック運送業労組の賃上げ率(2~3%)より、UAゼンセンのパートタイム労働者の賃上げ率(約5%)が高い実態となっている。「トラックドライバー(正社員)の父ちゃんより、物流センター勤務(パートタイマー)の母ちゃんの方が、賃上げ率が高い」と、肩身を狭くしている父ちゃんもいる(賃上げ額では高くとも、実収が減っていては威厳が保てない?) 労働者数は全産業で5174万5000人と、2024年6月比で1.5%増一方で、運輸・郵便業は295万4000人で0.4%減少した。就業形態別では、パートタイム労働者は55万7000人で24%増加した一方で、一般労働者は239万7000人と4.7%減少している。 一方、労働時間は全産業で月間139.7時間、運輸・郵便業は164.1時間(対全産業より24.4時間増)となっている。出勤日数も全産業の18.1日を1.4日上回る19.5日である。労働時間は、一般労働者(フルタイム労働者)・パートタイム労働者が合算されているが、相変らず労働時間は2割弱(17.5%)長い。 毎月勤労統計だけ見れば、「物流の2024年問題」を解決するための「働き方改革」の取り組みは遅れているように感じられる。
      図表8 労働時間の動き
      (出所)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年6月分結果速報」
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      (5)トラック運送業の倒産動向

      2024年は帝国データバンクの資料を利用したので、2025年は東京商工リサーチの資料を参考にしたい。 東京商工リサ一チから7月半ばに公表された、2025年上半期(1~6月)のトラック運送業の倒産は、件数が146件(2024年上半期比24.7%減)で、5年ぶりに前年同期を下回った。 とくに「物価高」を理由とする倒産は43件と、前年同期から4割減と大幅に減少しており、燃料コストを中心に価格転嫁が進んだともいえる。 本稿執筆中の2025年8月4日時点の軽油価格は3週連続で値上がりしているものの154.3円であり、落ち着いていると言ってよい(今後、ガソリンの暫定税率の見直しで、軽油引取税も変更が見込まれるので予断は許されないが)。 一方でドライバー不足による受注減や人手確保のための人件費アップは、引き続き、厳しい経営状況となっている。「物流の2024年問題」などによる「人手不足」関連倒産は30件(2024年上半期比18.9%減)と前年を下回ったものの2年連続30件台が続いている。「人手不足」関連倒産の内訳は、「人件費高騰」が11件、「従業員退職」が6件と2024年上半期を上回った。全産業的な傾向として「従業員退職」イコール「人員補充できない」と倒産パターンが増加している。 最近は、どこの業界でも人手不足が顕著になっており、労働者がよりよい待遇を求める人材の流動化傾向が「運送事業者間だけでなく、産業間でも人材の獲得競争が激化」している。スマホなどで容易に募集情報を入手できることから、「地域」や「業種」を超えて「即時」に移動する傾向もみられる。 こうした状況の中で「ドライバーの待遇改善が進まなければ、トラック運送事業の『人手不足』倒産は今後も高水準が続く可能性が高い」(東京商工リサーチ)と分析している。さらに、後述のように「特定技能外国人労働者」を採用しようという動きも出ている(3-(3)参照)。
      図表9 道路貨物運送業の倒産 上半期推移
      (出所)東京商工リサーチ
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      以上、(1)~(5)の5つの統計データを取り上げた。それぞれのデータは算定方法も異なり、データ収集時期もズレているので、はっきりしたことは言えないが、「物流の2024年問題」対策は、荷主・トラック運送業者とも、引き続き着実に進めていかねばならないことは間違いないようである。 ※後編(次号)へ続く 【参考資料】(全て西暦表示に統一した) 1.NX総合研究所「2025年度の経済と貨物輸送の見通し」2025年7月、「企業物流短期動向調査(2025年6月調査)」2025年7月 2.全日本トラック協会「第129回トラック運送業界の景況感(速報)」2025年5月 3.NX総合研究所「物流の2024 年問題に関する追加調査(2025年6月調査)」2025年7月 4.厚生労働省「毎月勤労統計調査2025年6月分結果速報」2025年8月 5.東京商工リサーチ「2025年上半期(1~6月)のトラック運送業の倒産動向」「2025年7月 6.国土交通省「交通政策白書」2025年版 7.厚生労働省「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導・送検等の状況」2025年8月 8.中央職業能力開発協会編「ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト『ロジスティクス・オペレーション3級(第4版)』2024年10月 9.全日本トラック協会・日本貨物運送協同組合連合会「『求荷求車情報ネットワーク「WebKIT』成約運賃指数について(令和7年7月期)」2025年8月 10.全日本トラック協会「機関誌『広報とらっく』6月5日号【号外】」2025年6月 11.湯浅和夫「物流コンサル道場No.279『トラック事業適正化関連法』成立」ロジスティクス・ビジネス誌2025年8月号 12.日本ロジスティクスシステム協会「2024 年度 物流コスト調査報告書【概要版】」2025年4月 13.豊川浩気「『2024年問題』による物流費上昇の背景と物価に与える影響について」内閣府マンスリー・トピックスNO.74 2024年11月 14.その他、本稿で引用した内閣府・国土交通省・厚生労働省・経済産業省・中小企業庁・公正取引委員会等の資料・ホームページ。 15.長谷川雅行「500日を切った「物流2024年問題」前編・後編」2023年1月 ロジスティクス・レビュー第500・502号 16.長谷川雅行「100日を切った『物流の2024年問題』前編・後編」2024年1月 ロジスティクス・レビュー第523・524号 17.長谷川雅行「『負のスパイラル』から『正のスパイラル』へ」2024年11~12月 ロジスティクス・レビュー第543~546号) (C)2026 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.

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    第571号「2024年問題その後~中小運送業者のいま」(2026年1月8日発行) /en/logistics-571/ /en/logistics-571/#respond Thu, 08 Jan 2026 00:00:00 +0000 /en/?p=21202 執筆者 山田 健 (中小企業診断士 流通経済大学/文教大学非常勤講師)  執筆者略歴 ▼ 著者略歴等 1979年日本通運株式会社入社。 1997年より日通総合研究所で、メーカー、卸の物流効率化、 コスト削減など […]

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    執筆者 山田 健
    (中小企業診断士 流通経済大学/文教大学非常勤講師)

     執筆者略歴 ▼
    • 著者略歴等
      • 1979年日本通運株式会社入社。
        1997年より日通総合研究所で、メーカー、卸の物流効率化、
        コスト削減などのコンサルティングと、国土交通省や物流事業者、
        荷主向けの研修・セミナーに携わる。
      • 2014年6月山田経営コンサルティング事務所を設立。
      • 著書に「すらすら物流管理(中央経済社)」「物流コスト削減の実務(中央経済社)」
        「物流戦略策定のシナリオ(かんき出版)」などがある。
        中小企業診断士。

      • URL:http://www.yamada-consul.com/

     

    目次

    • 1.かかってきた電話
    • 2.時間外労働は減ったか
    • 3.運賃は上がったか
    • 4.中小運送会社には政府の支援を
    •   

      1.かかってきた電話

      昨年秋、筆者のもとに一本のメール着信があった。旧知の中小企業診断士からのほぼ20年ぶりの連絡であった。現在かかわっている中小運送会社の経営支援計画作りを手伝ってほしいとのこと。運送会社に精通した診断士を探す中で筆者を思い出してくれたという。
      彼は中小企業診断士の第3次実習を共にした仲間である。第一次、二次の筆記試験を通過した後の最後の関門が、この実戦形式の実習である。5人の受験生に一人の指導教官が付き、その指導の下2週間で2社の診断とレポート作成、報告会まで行うというなかなかハードなスケジュールである。1週間に1社の診断ペースにくわえて、2週間連続で会社を空けなければならず、勤め人にとってはなかなかハードルが高い。ただ、企業の財務から販売、マーケティング、事業戦略まで診断するこの濃密で刺激的な2週間の経験は貴重であった。筆者がコンサルティングの魅力に触れ、本気でコンサルタントを志したきっかけとなったのがこの第三次実習である。
      実習を共にしたメンバーは在職中、定年後を問わず、何らかの形で独立診断士として活動している。また2週間寝る間を惜しんで(?)「同じ釜の飯を食った」メンバーとの絆は深まる。彼もその一人であった。現在は、中小企業を専門とした支援会社の中枢メンバーだという。
      そのような経緯で、その後何社かの中小運送会社の経営改善のお手伝いをすることになった。それまでコンサルタントとして運送会社のお手伝いは経験していたものの、社員研修や現場改善、営業支援など業務レベルのコンサルが中心であり、経営者を対象とした経営戦略や財務分析まで踏み込んだ本格的な経営支援、いわば本来の中小企業診断士としての活動は初めてである。そして、もっとも現場に近いところで運送会社の経営実態に触れたことであらためてトラック運送事業の課題を認識することになった。
      いつもながら冒頭からの私事で恐縮であるが、折しも2024年問題の真っただ中の今、その実態と課題について現場の視点も踏まえて整理していきたい。

      2.時間外労働は減ったか

      水面下での実態はどうかという点は別として、現時点で時間外労働についての課題は表立っては聞こえてこない。問題となるトンキロベースで6割強を占める長距離輸送についても、大手を中心とした中継輸送や鉄道、RORO船へのモーダルシフトなどの対策が紹介されており、深刻な影響は見られていないように思える。
      支援した運送会社も比較的時間外労働の少ない地場配送をメインとしており、ギリギリではあるものの、上限は何とかクリアできているようである。もっとも、上限を超えそうなドライバーは期末に勤務時間を調整するなどの柔軟な対応がとられていることもある。むしろ現場から聞こえてくる問題は、昨年から適用となった厚労省の「改善基準告示」である。こちらは時間外労働からさらに枠を広げた、年間、月間の拘束時間規制である。年間拘束時間が3,516時間⇒3,300時間(最大3,400時間)、月間293時間⇒284時間(最大310時間)へと変更となった。年度末での調整が可能な時間外規制と異なり、毎月対処しなければならない規制であるため調整が難しく、対応にはより神経を使う。
      現場レベルでは悲痛な声も聞こえてくる。先日のNHKクローズアップ現代「やっぱり物が届かない」で紹介されたトラック運送の実態は、それまでの宅配便中心の偏った(?)テーマから大きく転換し、中小運送会社の現場実態にかなり踏み込んだものとなっていた。番組では、時間外を増やす大きな原因である「荷待ち時間」がほとんど改善されていないことが紹介されていた。昨年、荷待ちと荷役にかかわる時間は1運行当たり平均3時間2分で、目標とする2時間を大幅に上回ったという。実際、カメラにはドライバーが納品先近くの路上で3時間待機している様子が捉えられていた。
      ある長距離ドライバーは時間外上限をクリアするための運行をすれば、手取りで月7万円の収入減に見舞われるという。その分会社が賃金を上げてくれるわけではなく、歩合給が多くを占める給与体系では「生活するために時間外を増やさざるを得ない」悪循環に陥っている現実が紹介されていた。長距離運転から久しぶりに帰宅したわが家で、幼い娘が「パパ、次のお祭りには帰ってくる?」とせがみながらカレンダーに書き込んでいる姿がいじらしく切なかった。
      一方、地場配送で問題になっているのが東京港発着の海上コンテナ・ドレージ(輸送)である。ここ何年も前から東京港のコンテナ・ターミナルの混雑のために、入構待ちのトレーラが列をなしているのである。通常で3~4時間待ちは当たり前、ひどい時は6~7時間もあるという。コンテナ・ターミナルが集中立地する東京大井ふ頭などの周辺道路では、中央分離帯寄り1~2車線が入構待ちのトレーラで完全に「占領」されている(ちなみに、筆者が40年以上前に周辺事務所に勤務した頃はもちろんこのような混雑はなく、ガラガラの速度制限40km道路で速度取締にひっかかったほどであった)。この状況もすでに2019年のNHK特集で紹介されていたが、現在に至るまで大きな改善はみられていない。運送会社の経営者によれば、待機時間のおかげで家に帰れず、周辺の路上駐車の車中で寝泊まりしているドライバーが少なくないという。
      原因は、340万TEU(20フィートコンテナ換算)の容量に対して450万TEU以上が集中する完全なキャパオーバーである。周辺に拡張余地は少ないことを考えれば、荷主が京浜地区の港の利用を避けることくらいしか対策はなさそうである。
      運送会社としては、この待機時間によって時間外が増えることが納得できない。北関東からは1日当たりトレーラ1回転が限界で、それでも時間外が発生する。本来、2回転で運賃も稼げるところ、運賃は減る、時間外規制には抵触するという二重苦である。「こんなの国が何とかしてくれないと」という悲痛な叫びももっともである。
      最後に極論ではあるが、「月80時間くらいで人間死にはしない」という時間外規制に対する経営者の不満の声もあったことも報告しておく(もちろんそういう問題ではないのだが)。

      3.運賃は上がったか

      時間外労働の原因はこうした商慣行によるところも大きいが、根本的にはやはり運賃にある。待機時間が長いことが解決できないのであれば、その分ドライバーと車両を増やせばいいのであるが、それができないのは収受運賃でそのコストを賄えないからである。東京港発着のコンテナ・ドレージが1回転しかできないのであれば、1回転で十分採算がとれる運賃が確保できればすむ話である。しかし、こうした運賃の話を物流業界以外の方に話すと、決まって「そんな短絡的な」「運賃だけの問題ではないでしょう」といった反論を受けるが、現実にほとんどすべての原因は運賃に帰結する。そう思いたくない人は思わなくてもしかたないが、誤解を恐れずに言えば、「運賃の問題がほぼ9割」と考えてよい。
      まずは客観的な指標として、以前にも紹介した日本貨物運送協同組合連合会(日貨協連)の公表しているWebKIT成約運賃指数を確認してみよう。WebKITは公益社団法人全日本トラック協会が運営する会員企業(運送事業者)同士の求荷求車情報ネットワークで、直近では約6,500の加盟社、年間約190万件の荷物情報(求車)件数と約29万件の成約件数を持つ国内最大級のトラック・マッチングサイトである。したがって公表している成約運賃指数はおおむね実際の相場を反映したものと判断して差し支えない。
      図表1で示した折れ線グラフの月ごとの数字は2010年4月の成約運賃を100とした指数で表されている。グラフによれば、「宅配クライシス」で2018年に上昇したトラック運賃は2020年の新型コロナによる物量減少で下落したのち、2024年問題が話題となり始めた2023年から上昇に転じ、昨年から2025年度にかけ統計開始以来最高の水準で上昇を続けている。直近では、ボトムの2020年度に比較し、20ポイント近くのアップとなっている。

      図表 1 成約運賃指数の推移(日本貨物運送協同組合連合会)
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      ただ、成約運賃指数は必要の都度トラックを調達するスポット運賃の相場であり、通常の長期契約運賃より高めに反映されることを考慮しなければならない。そこで、より長期・継続的な運賃契約の動向を検証するために、全日本トラック協会実施の「2024年問題対応状況調査」を図表2に示す。

      図表 2 「物流の2024年問題対応調査」
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      値上げ率は5%未満が3割強、5~10%未満が半分である。つまり約8割の事業者の値上げ率は10%に達していない。これも以前取り上げたが、昨年政府が公表した、運送会社が健全に経営するための運賃指標「標準的運賃」に対して、実勢運賃は6~8割の水準に留まっている実態を考慮すれば、この程度の値上げでは不十分と言わざるを得ない。実際、「全然足りない」という運送会社の声はよく聞く。ドライバーの待遇を他産業並みに引き上げていくにはより踏み込んだ値上げが必要なのである。
      先の例では海上コンテナ輸送の運賃が典型である。海上コンテナは関税法上の免税コンテナであり、原則として内国貨物は積載できない(特別な許可があれば可能ではある)。したがって片道が空の往復輸送を前提としているため、海上コンテナ輸送の運賃体系はラウンド運賃といって、通常の輸送が片道距離であるのに対し往復の距離が計算基準となる。北関東~東京港の輸送距離が片道100kmであれば、往復の200kmで計算するのである。
      ところが、実勢運賃はほぼ片道運賃に等しく、しかも標準的運賃を下回っている。これにくわえて東京港の混雑による待機時間を考慮すれば、現在の運賃では「全然足りない」のは当然かもしれない。
      極端な例であるかもしれないが、経営支援中の運送会社はここ10年間、賃上げ、賞与とも0、平均給与、退職金は業界平均を下回る。それでいて業績は赤字が続く。トラックの積載効率や稼働率などの運行効率は、国交省公表の平均と比べても遜色ない。人件費が高いわけでもトラックの運行が非効率なわけでもないのに赤字となると、運賃が低いことが赤字の最大要因としか判断できない(もちろん経営責任はあるが)。早急な値上げを行わないと経営の持続性すら厳しい状況にある。

      4.中小運送会社には政府の支援を

      さまざまな情報を確認する限りでは、一定規模以上の3PLや特積、運送元請けなどの値上げ交渉はある程度進んでいるようである。中堅から大手までが加入する全日本トラック協会会員企業を対象とした図表2の結果にも多分に反映されているものと推測される。ただ、中小運送会社の現実はやはり厳しい。
      経営者の多くは依然として過去のトラウマにとらわれている。値上げ要請をした時点でより安い運賃を提示する他社に仕事をとられてしまった苦い経験である。NHK「クロ現」でも、時間外規制を遵守し賃金を維持するため運賃値上げ交渉を行ったところ、何度も断られたという事例が紹介されていた。「この運賃で今までやっていたのに何でできないんだ」「お前のところができないならやるところはいくらでもある」と言われ、撤退したため昨年度は1,700万円の収入減に見舞われたという。ルールを守る会社が経営難に陥る「正直者がバカをみる」結果を招いているのが実態である。このように交渉力が弱い中小運送会社では、2024年問題の追い風を味方にできず、以前と状況はほとんど変わっていない。
      事業者数で9割以上を占める中小運送会社の状況が変わらなければ、本来の趣旨であるトラック・ドライバーの働き方改革は「絵に描いた餅」である。これも以前に書いたが、もう圧倒的な格差がある中での企業同士の交渉に頼っているのは限界にきていると考えざるを得ない。
      この問題を政府はかなり深刻にとらえているようで、直近で思い切った政策を発表したところである。その点については項をあらためて検証していきたい。
      以上


      (C)2026 Takeshi Yamada & Sakata Warehouse, Inc.

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    第570号 これからの物流について一緒に考えましょう(後編)~物流2024年問題、物流統括管理者(CLO)など~(2025年12月16日発行) /en/logistics-570/ /en/logistics-570/#respond Tue, 16 Dec 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=21192 執筆者 浜崎 章洋 氏 大阪産業大学 経営学部商学科 教授  執筆者略歴 ▼ 略歴 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。 タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会 […]

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    執筆者 浜崎 章洋 氏
    大阪産業大学 経営学部商学科 教授

     執筆者略歴 ▼
    • 略歴
      • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
      • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
      • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
      著書
      • 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社)
      • 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社)
      • 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所)
      • 『通販物流』(共著、海事プレス社) など

    *サカタグループ2024年10月23日開催 第28回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
    *今回、大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋 先生の講演内容を3回に分けて掲載いたします。
    *掲載内容は、講演が開催された時点でのデータや情報を基にしているため、現在の状況と異なる場合があります。
    *前号(2025年12月4日発行 第569号)より

    目次

    ちょっと一息 (参考)

    *画像をClickすると拡大画像が見られます。

    ここで、ちょっと一息なのですが、「グリーン物流」が今から20年ぐらい前に流行りました。
    このとき、荷主の経営層が積極的に採用したのです。これはなぜかというと、ちょうど、CSR(企業の社会的責任)とか、「環境報告書」 *2 が流行った時です。国交省の2023年度統計値では、運輸部門から日本の温室効果ガス排出量、CO2の約20%が排出されていて、これを削減すると消費者に大きくPRできるので、物流の効率化、CO2の削減、モーダルシフトをどんどん進めていこうということで、荷主の経営層が理解を示してくれました。
    さらに今から10数年程前に、「ホワイト物流」 *3 が流行りました。
    【注】
    *2. 環境省hp,「もっと知りたい環境報告書」 https://www.env.go.jp/policy/hairyo_law/post_160.html
    *3. 「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト https://white-logistics-movement.jp/
    倉庫で働く人やドライバーさんとか、物流部門で働く人の、長時間労働を是正していきましょうとか、きちんと休みを取らせてあげましょう、というホワイト物流という言葉(取組み)が出てきたのですが、それって物流部門の役割でしょうとか、物流会社で解決しなさいということで、荷主の経営層は、あまり関心がありませんでした。
    今この、「2024年問題」ということで、当初、ちょうど1年6ヶ月程前、2023年の年度が始まった2023年4月ごろは、荷主の経営層はあまり関心がなかったと思います。このときは、1年後に2024年問題が始まりますといった、ニュースとか新聞の報道が、「宅配の荷物を受け取れなくなる」という報道に偏重していた、ということもあると思います。
    「これだけ通信販売が増えているのに、宅配でモノが運べなくなります、皆さんどうしますか」、みたいな報道ばかりだったのです。去年の秋頃、ちょうど1年ぐらい前から、例えば、九州の宮崎県から農産物が運べないとか、北海道からの水産物が東京の豊洲市場のセリに間に合わなくなる、みたいな報道が増えてきて、そのあたりから荷主の経営層の方々も、物流は大丈夫なのかと言って、多分、(物流関係者である)皆さんのところに声がかかったのも、ちょうど1年ぐらい前ではないかと思います。
    私は去年の秋、ちょうど1年ぐらい前の今頃、2024年問題バブルとなり、いろんな会社から講演依頼とか、社内研修の依頼をいただきました。これは、何を言いたいのかというと、物流2024年問題について、我々物流関係者、物流会社、あるいは関係省庁が、いろいろ言っていましたが、荷主の経営層はあまり関心が無かったのです。
    半年位前から、ようやく動き始めたという印象を、非常に強く持っています。多分皆さんの会社でも、大なり小なり、似たりよったりではないかなと思います。

    2.物流2024年問題について 2)2024年問題の影響

    *画像をClickすると拡大画像が見られます。

    では、この物流の2024年問題はどんな影響があるのかということで、懇意にしているビジネスパーソンの方々へヒアリングをしました。加工食品系の物流子会社の方で、傭車だけでなく、自社でもトラックを保有し配送を行っている企業ですが、「近距離の配送なので、自社の配送部門は、今のところ大きな影響はないですよ」、ということでした。ただし、全国でビジネスをされていますので、年末12月と、年度末、3月にかけて幹線輸送の部分では、例えば、東名阪の東京と大阪を結ぶ高速道路とか、関東から東北、北海道、といったところの幹線輸送の部分が厳しくなると想定されているということと、長距離輸送は既に、モーダルシフト、あるいは中継輸送を導入をされつつあるということです。
    それともう一つは、今、物流拠点の再編、つまり在庫拠点の増設に取り組んでいるということです。その他に、納品リードタイムの延長とか、ドライバーの付帯作業の廃止を交渉しています。この会社の非常に優れたところは、自分の会社だけではなくて、業界として取引先、つまり小売業と卸売業との交渉を行っています。何が言いたいのかというと、自社だけで小売業や卸売業へ交渉に行っても、恐らく進まないのです。
    次に、アパレル卸売業の会社の方です。この企業は、いわゆるアウター商品ではなくて、どちらかというとインナー関連のコンパクトな商品を取り扱い、毎日受注し毎日発送していました。これを、受注は毎日受けているのですが、数日分をまとめて発送するように変更しましたということです。元々、大きさが小さいので、数日分でも1納品先にはダンボール1ケースで収まるということです。最初は、物流現場でもそうだし、納品先さんでも若干混乱があったそうですが、今はお互いに慣れて、落ち着いているということです。
    また、現在でも、関西から西に向かうトラックの手配は厳しいと言われていました。これは実は、私も関西にいるのでよく聞きますが、九州方面行きのトラックを確保するのは、どの会社でも厳しいと伺っています。年末とか年度末に向けて、これからどんどん厳しくなっていくと言われています。
    2024年問題は、2024年4月からスタートして、上半期、9月までは、皆さん何とかやっていけたと思いますが、これから12月の年末繁忙期と年度末3月の決算とかの、繁忙期を迎えてくると、対応が更に困難になる、こんな危機感を持っているのではないかと思います。

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    これは参考までに、タイミーってご存知ですか。今、朝ドラの主役の橋本環奈さんがコマーシャルをしている、スキマバイトのタイミーさんがアンケート調査をされました。「2024年問題」について、約4割の企業が対策のめど立たず、だそうです。燃料費とか人件費が上がってますとか、「時間外労働時間規制」で働きやすさは変わらないが、67%という結果が出ています。これは、ネットで検索すると報告書(「タイミー、物流2024年問題に関する実態調査レポートを発表」https://corp.timee.co.jp/news/detail-3651/)がありますので、興味のある方はぜひ一度ご覧ください。

    2.物流2024年問題について 3)2024年問題への対策についての例

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    先程の、2024年問題について、中継輸送とか、モーダルシフトとか、在庫拠点の見直しとか、いくつか対策例を挙げてみました。荷主のどの部署が対応するのかということで、もちろん物流部が全部対応するのでしょうが、例えば、大阪、東京間の中継輸送では、トラックで行って帰ってくるのではなくて途中の静岡辺りで、ドライバーさんがトラックを入れ替えて戻ってくるので、日帰り運行ができます。これだと物流部が、物流事業者さんと調整すればできます。営業部とか生産部とは、特に調整が必要ないのかもしれません。
    次に関東発九州行きの便を、今までトラックで行っていたのですが、今後は長時間運転ができないから、モーダルシフト、JR貨物さんで運びます、となってくると、これは物流部と物流会社さんだけの問題ではなくて、営業部にも耳に入れておかないといけないのです。というのも、パレット単位の鉄道輸送になると衝撃・振動の影響で、商品のダンボールがちょっと擦れるかもしれないとか、営業部から取引先さんへ、2024年問題に対応のため、JR貨物さんに変更しますと伝えてもらわないといけないのです。つまり、物流部だけでは完結しないのです。

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    在庫拠点の見直しになってくると、これは物流部や、営業部、生産部だけではなくて、投資が必要ですから、経営層へも相談しないといけません。在庫拠点の見直しというと、私が物流の勉強し始めた頃に学んだのは、上の図から下の図に変わったようなイメージです。
    例えば、メーカーさんが、全国9拠点、いわゆる、北海道、東北とか、各経済圏に物流センターを持っていたものを、関東と関西に物流拠点を統合しましょう、物流コスト削減と在庫の削減をするために在庫拠点を集約しましょう、というものです。
    これは、なぜこのように拠点集約ができたのかというと、運送会社さんの輸送距離が延びたということと、卸売業さんが全国化、規模拡大をしていったので、メーカーの在庫拠点は2拠点でもいけるようになり、これでコスト削減ができます、とういうことです。
    実は2拠点にすると、例えば北東北とか南九州へは、翌日午前中の納品できないから、九州とか、北東北とかに、小型の物流センター、デポを作りましょうとか、北海道にもう1拠点作りましょうというのが、今から20年から、25年ほど前の話です。これだと輸送距離が伸びるので2024年問題に対応できなくなってくると、先ほどの物流子会社さんのように、在庫拠点を今後増やしていかないといけない、ということも今後起こり得るのです。
    在庫拠点を増やすということは、経営の判断ですから、物流部門だけではなくて、経営層が関係してきますということです。参考までに、これはBCPの視点からすると、日本海側にも物流センターが必要だと思います。
    今、皆さんの物流センターがあるのは、関東と関西、どちらも太平洋側に設置していることが多く、中には(太平洋側の)中部圏に設置している企業もあるかと思います。これは、南海トラフ地震・東南海地震が発生したときに、確実に被災します。ですから九州の北部とか、もう一方の新潟とか、日本海側の方にも、(物流拠点が)必要ではないかと思っています。

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    では、納品リードタイムの見直し、となってくると、これは、営業に相談しないといけないし、取引先にも相談しないといけません。今までは納品リードタイムが、午後13時受注締め切りで、当日の午後に出荷作業をして、夕方に運送会社さんに荷渡して、翌日午前中に納品をするとなると、作業をする人もトラックも全部見込みで事前に手配しないといけないのです。ですから今後、受注の締め切り時間を夕方にして、翌日の作業の量とトラックの台数を決めてから手配をして、翌日作業をして運送会社さんへ荷渡しをして、翌々日の納品にすれば、非常に効率化できます。つまり納品リードタイムを見直す必要があるということです。
    これは、物流部門だけではなくて、営業部とか取引先にも関係してくるし、経営層にも理解してもらわないといけないのです。

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    最後にもう1点、一貫パレチゼーションです。トラックへのケース単位でのバラ積み、バラ降ろしを止めて、パレット単位で流通させましょう、川上のメーカーから、川下の卸売業、小売業の店頭まで、同じ(規格の)パレットでフォークリフトにより、荷役をしていこうというものです。一貫パレチゼーションをすると、物流の合理化、トラックドライバーさんの荷役時間削減のために、非常に役に立ち、物流コスト削減等、作業の効率化に役立つと思いますが、これは、営業部とか生産部門だけではなくて、製品の設計部門にも関係してくるのです。

    *画像をClickすると拡大画像が見られます。

    一貫パレチゼーションをするためには、「包装モジュール化」といって、このパレットのサイズに合わせて、外装箱とか、商品の外装の大きさを決めていかないといけませんから、包装設計とか製品設計の部署まで関係してくるので、これは、物流部門だけでは解決できないのです。

    さいごに

    *画像をClickすると拡大画像が見られます。

    つまり、これらの諸問題が解決できる、CLOは、やはり役員クラスでしか対応できないということなのです。本日はいろいろとお話させていただきましたが、このCLOにしても、2024年問題にしても、大変貴重なチャンスなのです。だから、あくまで何か規制の対応とか、物流の生産性向上とか、そういうことではなくて、自分の会社の最適化と、サプライチェーン全体の最適化を目指して、持続可能な社会の実現に向けて、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思っています。
    本日ご参加いただいている皆様の会社の、益々のご発展と皆さまのご活躍を祈念いたしまして、以上で私の講演を終わりにしたいと思います。本日はお忙しい中、ご清聴いただき、誠にありがとうございました。



    (C)2025 Akihiro Hamasaki & Sakata Warehouse, Inc.



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    第569号 これからの物流について一緒に考えましょう(中編)~物流2024年問題、物流統括管理者(CLO)など~(2025年12月4日発行) /en/logistics-569/ /en/logistics-569/#respond Thu, 04 Dec 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=21179 執筆者 浜崎 章洋 氏 大阪産業大学 経営学部商学科 教授  執筆者略歴 ▼ 略歴 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。 タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会 […]

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    執筆者 浜崎 章洋 氏
    大阪産業大学 経営学部商学科 教授

     執筆者略歴 ▼
    • 略歴
      • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
      • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
      • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
      著書
      • 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社)
      • 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社)
      • 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所)
      • 『通販物流』(共著、海事プレス社) など

    *サカタグループ2024年10月23日開催 第28回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
    *今回、大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋 先生の講演内容を3回に分けて掲載いたします。
    *掲載内容は、講演が開催された時点でのデータや情報を基にしているため、現在の状況と異なる場合があります。
    *前号(2025年11月18日発行 第568号)より

    目次

    1.CLOについて 2)CLOに対する各社への問題提起

    私は大学教員という立場なので、物流業界とか、皆さんの物流のお仕事を外から見ているのです。中に入って日々業務をしているわけではないですし、オペレーションを行ったり計画を作っているわけではないので、外から見ているからこそ見えることがあると思うのです。そういった視点で発言しているということを、ご理解いただければと思います。

    *画像をClickすると拡大画像が見られます。

    こちらは、これから取り組まれるであろう、各社さんに対する問題提起ということで、こちらに取りまとめています。特定荷主に選ばれようが選ばれまいが、改正物流効率化法が2026年4月より施工予定ですが、数年後にいずれ実施するとして、法律や規制の対応だけで終わるのですか。これは多分、すごく手間と時間とお金がかかると思いますので、それだけではもったいないのです。
    つまり、物流コスト削減とか人手不足対応だけで終わってしまうのか、あくまでも物流部門の中で解決させていくとか、物流会社の中で対応するだけで終わってしまうのかというと、このあたりは非常にもったいないと思います。折角実行するのだったら、少なくとも自社の、調達とか生産、販売、物流、全体を一括りにするロジスティクスの最適化、そんなところを目指していただきたいと思います。
    更に次の段階では、仕入れ先とか、販売先、取引先も含めたサプライチェーンの最適化を目指していただきたいと思います。これは売上を上げるためだけのことではないのです。いろんな無駄があり、それを改善して、廃棄物を減らすとか、CO2を減らすとか、フードロスを削減するとか、持続可能な社会を実現するために、折角始めるのならここまで取り組んでいきましょう、こういうふうに、問題提起をしたいと思います。
    そんなこと言うだけだったら、と思われるかもしれませんが、実はこういう時は、かえってビジネスチャンスなのです。例えば、荷主企業の物流部門の方は、今まで営業部門とか製造部門とかに、かなり悔しい思いをしていませんか。一生懸命努力して、物流コストを削減して、物流改善をして、生産性を高めているのに、緊急出荷が1件か2件あっただけで物流コストが跳ね上がるとかですね。あるいは、一生懸命、業務改善していたのに、これまでの出荷形態が変わってしまい、元の木阿弥みたいになってしまったようなことがあるかと思います。
    そのような悔しい思いをされてきた物流部門の方にとって、このような機会は、千載一遇のチャンスではないかと思います。もう一つ、物流会社の方にとってみれば、これは確実にビジネスチャンスなのです。
    今日、荷主の物流部門の方が、たくさん参加されていると思いますが、荷主の物流部門の人数は、5年前、10年前と比べて減ってきており、人数が削減されています。皆さんの会社でも以前に比べて減ってきているかと思います。
    更に、仕事の範囲は確実に増えています。例えば、新たに海外との輸出輸入が始まったりとか、従来の物流だけではなくて、BCPや、災害時の物流対応について考えないといけないとか、環境負荷軽減策について考えて取りまとめないといけないとか、人手不足の対応策を考えないといけないとか、5年前10年前と比べて確実に業務量が増えているのに、(物流部門の)人数は減らされてきているのです。
    その限られた数の物流部門の人員で、次のCLOの業務への対応、いろんな企画をして、改善を行っていくということは、到底無理なのです。ということは逆に言えば、提案力のある物流会社さんにとっては、大きなビジネスチャンスなのです。
    取り組みたくてもできない、こういった時は、間違いなくビジネスチャンスなのです。今日ご参加の、荷主企業の皆さん、あるいは、物流事業者の皆さん、物流に関連しているサービスを提供されている皆さんも、ビッグビジネスのチャンスがやって来た、こんなふうに考えていただけるとよいのではないかと思います。

    LSCと経営成果との関連性分析

    *画像をClickすると拡大画像が見られます。

    これは、私が今から25年ぐらい前に、東京工業大学の圓川先生と共同研究を実施したのですが、荷主企業の方々に、LSC(ロジスティクス・スコア・カード)という、その会社のロジスティクスのレベルを診断する簡単な診断シートを使用して、これに回答していただいたものと、その会社の業績を統計分析した結果になります。
    ロジスティクスのレベルの高い会社は業績がよく、ロジスティクスのレベルの低い会社は業績が良くないということを、統計学的に証明しました。これは実は日本だけではなくて、東南アジアの企業とか、ヨーロッパの企業、中国の企業にも協力していただいたのです。
    例えば、業種を問わず国を問わず、ロジスティクスのレベルの高い会社は業績が良くて、ロジスティクスのレベルが低い会社は業績が良くない、という結果が出ていました。今回のCLOにも関係してくるのですが、在庫を適正化して、ローコストオペレーションを行って、取引先と交渉し、サプライチェーンの最適化に取り組んでいる会社とそうでない会社は、業績が違って当たり前なのです。それで、何が言いたいかというと、こういったCLO(チーフ・ロジスティクス・オフィサー)の、対応をされるのであったら、自社の経営改革、あるいは荷主の経営改革を、どんどんと進めていっていただきたい、こんなふうに思っている次第です。
    では、どんな人が向いてるのかですが、これは私の経験則から少し事例を集めてきました。私は日本ロジスティクスシステム協会時代に、物流技術管理士講座の事務局を担当していたのです。当時、私は関西担当だったのですが、1期あたり100人から120人位の参加者がいて、計15期を担当し延べ1,500人ぐらいの卒業生をサポートしてきました。あとは、コンサルティングをやっていたときも、物流管理部門のお客様がいたりとか、大学教員になってから、いろんな企業の方とお付き合いしている中で、お会いする方の役職は各社様々で、サプライチェーン担当役員とか、ロジスティクス担当役員、物流部長とかなのですが、いわゆるCLOの立場のお仕事をされていた方の役職は、大体3パターンあります。

    1.CLOについて 3)CLOの事例

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    1番目のパターンは、一番積極的なタイプの方で、元々物流が専門ではないのですが、例えば、元々生産部門とか、営業部門、そういった方が調達とか、生産、販売の責任者をされてから、物流・ロジスティクス部門に来られて、いわゆるチーフ・ロジスティクス・オフイサー、CLOのようなお立場になられた方です。
    例えば、関西に本社がある、食品メーカーさん、日用雑貨メーカーさん、小売業さんで、生産、購買、調達、営業部門の複数の部署を経験されてきた方が、物流の責任者をされたというパターンが結構ありました。そんな方々に、いろいろお話を聞いていると、「物流部門へ来て、今まで自分がどれだけ営業のとき、酷いことしていたかというのがよくわかった」、今は、営業部門に当時の部下がいるので、「もうアカン、(締め時間を過ぎており)緊急出荷を止めてくれ」と言ったら、元上司ですから聞いてくれるとか、「実は営業の手の内がわかっている」とか、「元部下がいるから説明しやすいんだ」等、そういったことを言われていました。
    2番目のパターンは、他部門の経験があまりなくて、物流・ロジスティクス部門一筋の方が、その部門長になり、CLOになられている方です。こちらも関西に本社がある、電機メーカーさんとか、大手加工食品卸売業の方で、どちらも元々ずっと物流、ロジスティクス畑の方です。物流、ロジスティクス馬鹿なのかというと、決してそうではなくて、非常に全体を俯瞰して見られているのです。こうあるべきではなくて、営業とか調達部門の方の話もよく聞かれますし、「理想はこうだけれども、とはいえ、取引先のあることだから」と言って、その辺りは非常に上手くバランスを取られており、(部門間の)調整が非常に上手い、という印象を受けています。
    どちらが良い悪いというのではなく、その会社の、例えば社風だとか、あるいは業界の特性だとかがあるかと思います。
    3番目のパターンは、たまにあるパターンなのですが、中途採用の方が、そのままそこの会社のロジスティクス部門の責任者になられたという方で、もちろん元いた業界でそういった立場におられた方なのですが、同業者であったり異業種であったりしますが、その会社へ来て、ロジスティクス部門の部門長に着かれたという場合があります。この場合は、関連部署の方とコミュニケーションがとれるまで、少し時間がかかることもあるかと思います。
    また時々、管理部門の管理職の方が、ロジスティクスの担当者、あるいは、責任者になられることもあります。例えば、総務とか経理の担当の方が、責任者としてくるということもあるかと思います。
    私は、経理部門の方は、ロジスティクスの責任者に向いてるのではないかなと思っています。物流は、全部数値で表すことができます。コスト、生産性、品質について、経理財務部門の方は、数字で語る、数字を見ることに、非常に長けているからです。
    どのパターンの人材がよいのかというのは、私がアドバイスできる立場にはないのですが、皆さんの会社で、CLOを選ぶときのご参考になればと思います。
    荷主企業だけではなく、物流事業者の方にとってみれば、皆さんの取引先の荷主さんとか、主要荷主さんは、どんな人がCLOになるのか、これも皆さんにとって重要な問題かと思いますので、確認をされるとよいと思います。

    2.物流2024年問題について 1)2024年問題とは①

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    それでは、2024年問題ですが、概要については既にご存知かと思いますので省略し、一番下のところ、今後規制がもっと厳しくなると思われる、トラックドライバーの時間外労働の上限、年間960時間ですが、これはいずれ必ず他の産業と同じように、年間720時間が上限になるかと思います。
    ということは、物流2024年問題はゴールではなくてスタートなのです。これから始まります、ということです。では、どんな影響がでるのかというと、物流コストが上がると思われるかもしれません。

    2.物流2024年問題について 1)2024年問題とは②

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    物流会社さんにとったら、一時的に売り上げが減ったり、利益が減ったりするかもしれないし、ドライバーさんの収入が減るかもしれない、ということなのですが、これは少し怒らないで聞いていただきたいのですが、運賃が上がったのではないのです。これまで運賃が安すぎたのです。物流コスト上がったのではなく、これまでが安すぎたのです。これは間違えないでください。ここ数年で、物流コストが上昇した、運賃が上がった、倉庫費用が上がった、人件費が上がった、のではなくて、これまでが安すぎたのです。過去25年間、皆さんはこの安価な物流コストの恩恵を受けてこられたのです。
    それがちょっと値上げをしたら、運賃が上がったと言って大騒ぎしているというのは、外から見ている私からしたら、いやそれはちょっと違いますよ、と言いたいのです。今までが安すぎたのです。人件費が上がっているし、燃料費も上がっているし、法規制(残業時間規制他)も厳しくなっている、だから運賃が上がって当たり前、倉庫の費用が上がって当たり前なのです。こちらの(スライドの)上の3つはお金で解決できる問題なのですが、一番困ることは、荷物が運べなくなることですから、この辺りをどうやって解決していくのかがポイントだと思います。
    ※後編(次号)へつづく


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    第568号 これからの物流について一緒に考えましょう(前編)~物流2024年問題、物流統括管理者(CLO)など~(2025年11月18日発行) /en/logistics-568/ /en/logistics-568/#respond Tue, 18 Nov 2025 01:00:00 +0000 /en/?p=21168 執筆者 浜崎 章洋 氏 大阪産業大学 経営学部商学科 教授  執筆者略歴 ▼ 略歴 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。 タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会 […]

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    執筆者 浜崎 章洋 氏
    大阪産業大学 経営学部商学科 教授

     執筆者略歴 ▼
    • 略歴
      • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
      • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
      • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
      著書
      • 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社)
      • 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社)
      • 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所)
      • 『通販物流』(共著、海事プレス社) など

    *サカタグループ2024年10月23日開催 第28回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
    *今回、大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋 先生の講演内容を3回に分けて掲載いたします。
    *掲載内容は、講演が開催された時点でのデータや情報を基にしているため、現在の状況と異なる場合があります。

    目次

    • これからの物流について一緒に考えましょう
    • はじめに ロジスティクスとは
    • ロジスティクスとは②
    • ロジスティクスとは③
    • 1.CLOについて
    • (以上前編)

    • 本論文は、前編、中編、後編の計3回に分けて掲載いたします。
    • これからの物流について一緒に考えましょう

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      皆さんこんにちは、ただ今ご紹介いただきました、大阪産業大学の浜崎でございます。
      本日はお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。少しの間お付き合いよろしくお願いいたします。
      私は、今日京都から来たときは、気温が28度位で暑いので半袖を着て駅まで行ったら、汗だくになりましたが、東京に着いたら少し涼しいなと思いました。今もう10月下旬で、あと2ヶ月で年末です。こんなに暑いというのは、地球温暖化だと思います。我々はいいとして、若者世代とか、次の世代に向けて、こういった環境問題とかに、取り組んでいかないといけないなと思った次第です。
      それでは、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は元々メーカーに勤務して、その後、日本ロジスティクスシステム協会(以下、JILSと記載)に約10年勤務し、物流会社でコンサルティング業務に携わったりとかの経験して現在、大学の教員になっている、このような経歴です。

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      このような本を書いていたりしています。ということで、本日は本の宣伝に来たわけではないですよ。私の本は売れているので、特に宣伝しなくてもよく売れております(笑)。
      さて、今日はこんなテーマ「これからの物流について一緒に考えましょう
      ~物流2024年問題、物流統括管理者(CLO)など~」について、お話をさせていただきます。

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      先ほど自己紹介のところでありましたが、メーカーに在籍していたことを、一つキーワードとして挙げたいと思います。メーカーの海外営業部なのですが、野菜とか花の種を扱っている企業です。入社してすぐ2年間は貿易実務、物流関連事務を担当し、その後実際に担当のお客さん持って営業をしていたのですが、営業の仕事のなかで、実は在庫調整というのが非常に重要な仕事だったのです。
      というのは、種というのは、植えて花が咲いて実が実る、というのが年に1回、もしくは南半球を使ったとしても年に2回なので、生産のリードタイムは約1年とか、8ヶ月とか、そういった長い期間が必要なことと、種自体が生き物なので、実際の在庫期間は長くても3年位なのです。
      そういうところなので、営業はどんどん売り上げを伸ばしたいのですが、在庫がないと売れないということもあって、今年売り切って来年の分の在庫がなくなったら困るとかですね、あるいは天候次第で、もう今まさに種を収穫するときに台風がきたら、今年の生産は無くなってしまうことも起こり得るので、在庫とか天気を見ながら営業を行ってきたという経験を持っています。
      一方で、30年ぐらい前の話なのですが、南半球で生産を始めたりとか、海外生産が増えてきたことに伴って、実際に生産するための親の種を輸出するのが私の役割でもあったので、生産部門とも仲良くさせてもらっていました。つまり、生産も、営業も、そして物流の方にも、関与していたのです。
      また、物流会社のコンサル部門にいたときには、繁忙期には、実際に現場を手伝ったりしていました。こういったバックグラウンドがあるということを、ご承知おきいただきたいと思います。

      はじめに ロジスティクスとは

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      ではまず、ロジスティクスの定義です。今、皆さんに説明するのは、ご存知のとおりですが、元々「兵站」を意味する軍事用語です。前線基地に軍事物資とか生活物資、例えば、兵隊とか、武器、弾薬、燃料とか、食料品、飲料水、医薬品とかを計画的に補給するというのが、元々ロジスティクス、「ミリタリー・ロジスティクス(Military Logistics)」といいます。そこにコストの概念をとり入れて、ビジネスでも使えるということで、「ビジネス・ロジスティクス」という概念が形成されました。
      これは皆さんご承知の通りです。ロジスティクスの定義ということで、JILSの用語辞典にも載っていますので、またお時間のある時に目を通しておいてください。私が好きな定義は、この一番下の、「調達から生産物流販売までを、ボーダーレスに最適化すること」、これは、非常に短くてわかりやすくてよいと思っています。
      東芝の佐藤文夫さんという方は、東芝(旧 東京芝浦電気)の社長、会長を歴任された方で、私が在籍していた、日本ロジスティクスシステム協会の会長もされておられました。実は、東芝が日本で一番最初に物流部が出来た会社だそうです。これは私がJILSにいた時に、専務理事から教えてもらったことですが、当時は、「物的流通部」という名称だったそうです。その初代、物的流通部長が佐藤文雄さんなので、おそらく日本で一番最初の物流部長ではないかと思っています。
      ロジスティクスの定義を説明しましたが、元々兵站ということで、湾岸戦争のときの例で、これはこのときのロジスティクスの担当の将軍の著書、「山・動く: 湾岸戦争に学ぶ経営戦略」(W.G. パゴニス,1992/11/1,同文書院インターナショナル)という書籍で、ベストセラーになったので、記憶にある方もいらっしゃるかと思います。

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      湾岸戦争のとき、膨大な物資を送り込んだのですが、そのうち100万t近くが余ってしまったりとか、中に何が入ってるかわからないとか、どこかへいってしまったということがあって、そしてその後のイラク戦争のときに、RFID、ICタグを使ってそういった問題を解決していったということを言われています。

      ロジスティクスとは②

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      それで、こういったビジネスロジスティックスを、図で示すとこのようになります。例えば製造業でいうと、開発部門や調達、生産、物流、販売とか、いろんな部署や場所にまたがるところで、実際に物が動いていくところを青く塗りつぶしていますが、ここを最適化していく、つまりボーダーレスに最適化するいうこと、これについてお話していきたいと思います。では、何をもって最適化と判断するのかというと、私はコストと在庫の部分だと思います。
      コストというのは、単に製造原価とか仕入れ原価を下げるという意味ではなくて、会社全体のコストを下げていくこと、それでそのときに、これは私の経験則なんですが、最も合理的なのが在庫の適正化ではないかと思っています。

      ロジスティクスとは③

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      これを文章で説明すると、このようなスライドになるのですが、単に単価削減をするだけではなく、会社全体のコストを下げていきましょう、ということです。皆さんの会社でも経験があると思いますが、製造原価とか仕入れ原価を削減するために、大量生産、大量発注して、置く場所がないから外部の営業倉庫を借りて物流コスト上がってしまったということありますよね。
      そういった目先の単価を下げるのではなくて、会社全体のコストを下げていこう、それをするために最も合理的な手段が、在庫の適正化ということなのです。在庫の適正化と言うと、欠品もしないし、過剰在庫にもならないで、売り切れ・売れ残りもしないような、数量と配置がキーとなります。
      例えば、関東の物流センターに何割、関西の物流センターに何割の在庫を配置する、こういった、数量と配置の適正化ではないかと思っています。これは多分言葉は違えど、皆さんとの共通認識だと思います。

      1.CLOについて

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      では、ここからCLOに入っていきますが、物流統括管理者ということで、荷主事業者は云々と書いています、赤い字のところ、「物流管理統括者は、物流の適正化、生産性向上に向けた取り組みの責任者として、販売部門、調達部門等の他部門との交渉調整を行う」、このように、昨年度出た資料では説明されています。
      これは、新聞とか業界誌とか、インターネットのニュースで見られているかと思いますが、ここで私の疑問なのですが、CLOとはどこにも書かれていないのです。ただしCLOという言葉がよく使われており、言葉が独り歩きしているという印象があります。
      アメリカとかヨーロッパの、Chief Logistics Officer(CLO)とか Chief Supply Chain Officer (CSCO)の役割は、物流の効率化だけではないのです。
      でも、こちらの赤文字の記載内容を見ると、物流の適正化、生産性向上ということなので、この辺りは、少し違和感を持っています。今日参加されている方は多分、荷主企業の方とか、物流事業者の方とか、それに関連するサービスを提供されている方、少なからず何らかの関係者の方々だと思います。それで、私はどうしたらいいのかとか、うちの会社はどうしたらいいのか、など困っているかと思います。

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      この辺は、少し曖昧になっているという印象を受けています。一般社団法人フィジカルインターネットセンター(JPIC)、の理事長をされている森先生(流通科学大学 名誉教授)が、「CLOの仕事 物流統括管理者は物流部長とどう違うのか」 *1 という本を出版されました。
      【注】*1. 「CLOの仕事 物流統括管理者は物流部長とどう違うのか」,森 隆行 ,同文舘出版,2024年
      最近出たばかりの本なので、ぜひ紹介させていただきたいと思いますが、このフィジカルインターネットセンターでは、CLOの定義として、「持続可能な社会と企業価値の向上を実現するため、物の流れを基軸にしたサプライチェーンにおいて、経営視点で社内外を俯瞰した全体最適を図る役割を担う責任者」ということで、これは私のイメージしているCLOに、とてもフィットしていると思っています。
      物流の適正化とか、生産性向上だけではないのです。サプライチェーンにおいて、経営視点で、物の流れ、全体最適化を図るのです。これは先程の、会社の中の全体最適、調達とか生産、物流、販売のロジスティクスの部分と、仕入れ先、販売先も含めたサプライチェーンの最適化ということを、CLOの役割として説明されています。
      私のイメージするCLOは、こちらに近いですし、多分皆さんがCLOと聞いたときのイメージも、こちらに近いのではないかと思います。
      これは、折角手間をかけて、時間をかけて、コストかけて、CLOを設置するのだったら、ここまで実施した方が絶対に良くないですか、と私は思います。
      折角取り組むのでしたら、物流の適正化とか生産性の向上だけではなくて、自社の全体最適とか、サプライチェーンの全体最適にチャレンジし、それを実現していく、CLOはそういうポジション・役割が望ましいのではないかと考えています。

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      では、具体的にどうしていくのかですが、対象となる特定荷主はというと、これはまだ決まっていないのです。だから皆さんの会社が選ばれるかもしれないし、選ばれないかもしれないのですが、いわゆる大手企業と言われる荷主さんは恐らく入ってくるかと思われます。取り扱うものだとか量(重さ)によっては、いわゆる中堅規模の会社も、入ってくる可能性があるということですが、大企業の荷主さん、中堅規模の荷主さんも、特定荷主に選ばれようが選ばれまいが、CLOを設置された方が絶対に良いと思います。
      選ばれないからやらなくてもよいのではなくて、近い将来、当初の特定荷主3000社位から、広がってきたときに、いずれ取り組まないといけないのだったら、最初からやっておいた方がよいのではないかと考えています。
      CLOの職位、これは言葉が独り歩きしていると言ってましたが、チーフ・ロジスティクス・オフィサーだと、やはり役員クラスが望ましいということです。部門長で部長クラスということであれば、他部門とか取引先との交渉を、部長クラスでできるのかなとか、取締役会とか出席できるのですかとなると、少し疑問なのです。そういったことを考えると、やはり営業部門とか、製造とか、調達部門、あるいは取引先と交渉したりとか、あるいは投資をするための資金を調達するのだったら、役員クラスが望ましいのです。
      では、CLOの目的は、物流の適正化と物流の生産性向上だけでいいのかというと、物流部門だけの努力でできることには、限度があります。もう既に散々取り組んできているのです。例えば、現場改善をして、コスト削減をして、品質の改善をして、もう既にいろいろ取り組んできているので、これから物流部門だけ、あるいは、物流会社だけでできることは限られるのです。そうなってくると、営業部門と納品のリードタイムを調整するとか、取引先と交渉するとか、生産ロットの数量の見直しを図るとか、物流の在庫拠点をどうするのか、こういった話をしていこうとすると、物流部門だけではとても対応しきれないのです。付け加えるなら、商慣習の見直しとか、取引先の交渉とかを、調整していくとなると、これはもう、物流の効率化だけで完結する問題ではないのです。この辺りは、皆さんご理解いただけるのではないかと思います。
      ※中編(次号)へつづく


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    第567号 最適化AIの技術を活用したシフト表の自動作成 ~「勤務シフト作成お助けマン」の導入で実現した改善事例のご紹介~(後編)(2025年11月6日発行) /en/logistics-567/ /en/logistics-567/#respond Thu, 06 Nov 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=21161 執筆者 新井 祐一 氏 鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長  執筆者略歴 ▼ 略歴 2015年より勤務計画ソリューションの 企画・マーケティング・営業を担当 中小企業診断士(2008年登 […]

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    執筆者 新井 祐一 氏
    鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長

     執筆者略歴 ▼
      略歴
      • 2015年より勤務計画ソリューションの 企画・マーケティング・営業を担当
      • 中小企業診断士(2008年登録)

    *サカタグループ2024年10月23日開催 第28回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
    *今回、鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長 新井 祐一 様の講演内容を2回に分けて掲載いたします。
    *掲載内容は、講演が開催された時点でのデータや情報を基にしているため、現在の状況と異なる場合があります。
    *前号(2025年10月21日発行 第566号)より

    目次

    • ご利用企業様
    • 8.物流業界での活用事例①
    • 9.お助けマン サービスラインナップ
    • 10.お助けマンの機能
    • 11.お助けマンの特長
    • 12.デモンストレーション
    • 13.無料トライアルについて
    • 14.サポートについて
    • ありがとうございました
    • (以上後編)

    • 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
    • ご利用企業様

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      このサービスは業種業態を問わず、いろいろなところでお使いいただいていて、現在350社以上でご利用いただいています。この中には、病院があったり、物流会社さんや工場があったり、パチンコ屋さんとか、小売業とか、パン屋さん、飲食店があったりと本当に多種多様ですが、これほどいろいろな会社さんがシフト作成に困っていて、弊社のサービスがこれらの課題に柔軟に対応可能なソリューションを提供しています。

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      物流でいうと、合同会社KITSラインさんという企業がありまして、こちらは佐賀県吉野ヶ里町にある物流会社さんですが、食品、生鮮食品の輸送事業を行っていて、外食チェーン店や量販店へ輸送を行っている会社になります。
      こちらの会社は、佐賀県のDXフラッグシップモデル事業の採択事業者(https://editors-saga.jp/editors/sagadx/20220112_1295.html)として選ばれて、そのモデル事業の一つで、倉庫システムの刷新とかデジタルデバイスを活用したピッキング効率化、さらに、そのシフト管理に関わる従業員の工数削減に取り組んだ事例となっています。

      8.物流業界での活用事例①

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      こちらは、物流業界での活用事例を記載しています。
      まず食料品倉庫のA社様ですが、複数倉庫拠点の勤務シフトを一元的に管理したい、というニーズがあり、3拠点で計約160名の方が働いていますが、その方々のシフトを勤務条件を考慮し作成したものです。各倉庫ごとの担当業務エリアの入力が必要な点が非常に煩雑でしたが、どこのエリアを担当するのか、このシステムを使用して自動的に答えを出せるようになりました。
      これによってシフト作成の省力化ができ、標準化が実現できました。このシステムは、いろいろな勤務条件を設定することができます。例えば、「連続勤務は最大何日までです」、といった条件があったり、「飛び石連休じゃ駄目です、休み→勤務→休みは回避してほしい」、というようなスタッフの声が多くあり、そういったことにもきちんと対応したり、勤務間インターバルを考慮した設定をしたりとか、「休日の前後で、休日の前の日は早く帰って、休日の次の日はちょっと遅く来たい」、これは、法律とは違うところで、働きやすさも考えないといけないので、そういったところもきちんと考慮した上でシフトを作っていく、当然必要な人数があるのでそこも考慮する、こういったような事例で活用いただいています。

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      次は化学製品倉庫B社様の導入事例です。こちらは4拠点合計で約170名の方が働いています。定められたシフトパターンというのは、90種類ぐらいあり、これは手作業による設定では限界がある状況です。なぜこれだけ増えたのかというと、やはり多様な働き方を認めたりとか、人手不足の状況で他社の労働条件と比べて有利にならないと人が集まらないとか、そういったこともあり、シフトパターンが増えていった結果、90種類位に膨れ上がっていました。それですごく困っていたところで、この90種類のシフトパターンを自動で誰にどのシフトを割り当てるかということを、このシステムを使って自動で作成できるようになったというものです。今回、スタッフが満足するような公平なシフト作成をすごく気にされていて、これらの条件を反映した上で、実際に公平性を重視した最適なシフト作成が実現された事例となっています。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      こちらは食料品倉庫C社様の導入事例です。パート・アルバイトの方々が中心で、6時から22時までの16時間の運営時間に対して、それを交代で担当しています。決まったシフトパターンがないので、早番遅番とかではなくて、あなたは何時から何時まで来てください、あなたは次は何時から何時まで、そういったような指示の仕方をしています。
      スマホを利用して、当然希望する勤務時間を申請できます。アルバイトの方なので毎日来ない方もいらして、その方はスマホをきちんと使っていただければ、そこで勤務時間の希望も出せますし、確定した勤務時間を見ることができる、こういったような事例となっています。
      この会社もDXの推進の観点から、シフト管理に取り組んで業務効率化を実現した事例です。ここのところは、設定している主な勤務条件です。スタッフの休憩時間を割り当てたいという希望だったので、そういった休憩のルールを設定したり、勤務時間そのものを割り当てるシフトを自動作成できるという仕組みを実現しました。

      9.お助けマン サービスラインナップ

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      勤務シフト作成お助けマンには、2つのサービスラインナップがあり、「勤務シフト作成お助けマンDay」と、「勤務シフト作成お助けマンTime」があります。
      主にフルタイム従業員が中心のお客様、例えば、早番、遅番、夜勤A・B・Cなど任意のシフトを、1日の中でスタッフの希望を割り当ててシフトを作っているお客様だと、左側の「お助けマンDay」というサービスが対応していて、こちらは先ほどお話した10年以上前から提供しているサービスになります。
      このサーピスを販売している中で、パート・アルバイトのスタッフが多いお客様もいて、そういったお客様だと、早番や遅番のシフトではなくて、先ほどの事例の通り、「何時から何時まで来てください」、という具体的な勤務時間でシフトを割り当てたいというニーズがあることがわかり、その結果2020年から、「お助けマンTime」というサービスの提供を開始しています。

      10.お助けマンの機能

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      先ほどお話したとおり、スマートフォンから、勤務の休みの希望を登録することができますし、確定したシフト表を確認することもできます。よくお伺いするのは、勤務の希望を聞いた際に、間違って登録し公開してしまった、というお話を聞きますが、そのようなミスもなくなりますし、あとはスタッフの方が(掲示されているシフト表を)毎回見に行く必要もなく、どこでもスマートフォンで閲覧できるようになっています。

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      最大の特徴は、このいろいろな勤務条件を登録できるというところになります。先ほど事例でお話した部分もありますが、それ以外にも、10年ぐらいサービスを提供しているなかで、いろんなお客様から、「こういう条件を入れられないか」、というような要望を徐々に取り入れてバージョンアップをしています。
      今では、シフト希望の割り当てを行うシフト表に、さまざまな条件を登録できます。例えば、人の組み合わせという条件があり、誰と誰を一緒に組ませる・組ませないといった条件が登録できたり、当然スキルも重要な要素であり、単に人数が揃えばよいというだけではなく、その中でこういったスキルを持つ人が何人必要といった条件も登録できます。これにより、部署別スタッフ別に細かい条件を設定できる仕組みになっています。

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      こちらは、「お助けマンDay」のこういったようなシフト表が出来上がりますという例です。右の方に勤務の回数とか、下の方には人数の条件が入っています。

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      こちらは、「お助けマンTime」の画面ですが、時間そのものを割り当てるので、この画面の通り、スタッフ毎に何時から何時まで指定するというようなシフト表が作成されます。

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      ここでご紹介するのは、スタッフ毎のタイムスケジュールを出す機能です。例えば、ポジションごとに作業を割り当てるような場合、何時から何時まではこの持ち場とか、エリアといった条件を細かく設定できるようになっています。

      11.お助けマンの特長

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      我々のこのシステムの特徴は自動作成というところにあります。
      勤務条件がいろいろあり、矛盾するような条件も当然あると思います。例えば、休みはこれだけ取らないといけない、でも人がいない、ではどうするの、という時に、このシステムは、各条件に対して条件強度を設定でき、この条件の優先度を高くするとかの条件設定ができるため、その中から最も最適なシフト割り当てを算出することができて、最終的に必ず答えが提示されるようになっています。
      その上で、この条件はどうしても満たせませんというような形の答えはあります。つまり答えは出た上で、どうしても人が足りない、休みの希望が多すぎて実現できないとか、こういったような答えは出てきます。いろんな勤務シフトを自動作成できるシステムがありますが、条件が矛盾する場合は答えが出ないケースもありますが、弊社のシステムは、たとえ矛盾があった場合でも、最終的には必ずシフトの解答を提示できる仕組みとなっています。

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      当システムはクラウドサービスですので、インターネット接続さえあれば、すぐにお使いいただけます。また、システムサポートは、同じ画面を見ながら対応できるため、迅速で的確なサポートが可能となっています。

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      JRグループという、信頼あるブランドを背景に、セキュリティに関しては安全性の高いクラウドサービスを提供しており、安心してご利用いただける体制が整っています。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      このシステムはシフト作成に特化しているため、他のシステムと連携しているケースが一般的です。そのため作成したシフト表をCSVのデータで、勤務計画データとして出力することができます。
      そのデータを勤怠管理システムで取り込んでいただいて、勤怠管理システムで勤務実績、残業や欠勤を把握したりすることができます。さらに、人事情報、スタッフの情報を取り込んで、勤務シフトを自動作成できる仕組みとなっています。

      12.デモンストレーション

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      以降のデモンストレーションのご紹介については、以下Youtubeチャンネルを参照ください。
      ■シフト表を自動作成できるシフト管理サービス「勤務シフト作成お助けマン」のご紹介|テレビ番組「ええじゃない課Biz」出演:アンタッチャブル柴田、アルコ&ピース
      (Youtube動画リンク)https://www.youtube.com/watch?v=7gIom7BoQtw

      ■勤務シフト作成お助けマン 公式チャンネル【JRシステム】
      (Youtube動画リンク)https://www.youtube.com/@%E5%8B%A4%E5%8B%99%E3%82%B7%E3%83%95%E3%83%88%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%81%8A%E5%8A%A9%E3%81%91%E3%83%9E%E3%83%B3%E5%85%AC

      13.無料トライアルについて

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      このサービスでは、無料トライアルをご利用いただけます。多様な現場があり、複雑な条件があって、シフト表自動作成といっても、本当に今の現場に適用できるのかどうか、実際の環境でお試しいただけるよう、2ヶ月間の無料トライアルをご用意していますので、安心してお試しいただけます。
      また実際に操作していただく際に、他のよくあるシステムでは、単純にデータ登録すれば利用できるものもありますが、(弊社のシステムでは)そんなに難しくはないのですが、条件を登録しなくてはいけないなど、プログラム的な要素も一部含まれます。そこで弊社では、その辺りの操作フォローに関しては、こちらの資料にありますように、無料トライアル中から本利用以降も、お客様には様々な方法で手厚くサポートを行っています。

      14.サポートについて

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      最近よくあるサービスでは、チャットしか受け付けできません、というサービスも多いですが、弊社では、お電話での受付や、Web会議を使って操作支援したりとか、多様なチャネルによる手厚いサポート体制を整備しています。
      料金については、ご案内資料の料金表(料金表リンク先:https://www.otasukeman.jp/price)を参照ください。この自動作成機能は、低価格でコストパフォーマンスに優れています。 効果を実感いただくため、ぜひ無料トライアルでお試しいただければと思います。

      ありがとうございました

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      ではお時間になりましたので、私からの講演を終了させていただきます。ご相談等がありましたら、お気軽にお声がけいただければと思います。本日は長時間にわたりお付き合いいただき、ありがとうございました。



      (C)2025 Yuichi Arai & Sakata Warehouse, Inc.


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    第566号 最適化AIの技術を活用したシフト表の自動作成 ~「勤務シフト作成お助けマン」の導入で実現した改善事例のご紹介~(前編)(2025年10月21日発行) /en/logistics-566/ /en/logistics-566/#respond Tue, 21 Oct 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=21147 執筆者 新井 祐一 氏 鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長  執筆者略歴 ▼ 略歴 2015年より勤務計画ソリューションの 企画・マーケティング・営業を担当 中小企業診断士(2008年登 […]

    The post 第566号 最適化AIの技術を活用したシフト表の自動作成 ~「勤務シフト作成お助けマン」の導入で実現した改善事例のご紹介~(前編)(2025年10月21日発行) first appeared on SAKATA.

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    執筆者 新井 祐一 氏
    鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長

     執筆者略歴 ▼
      略歴
      • 2015年より勤務計画ソリューションの 企画・マーケティング・営業を担当
      • 中小企業診断士(2008年登録)

    *サカタグループ2024年10月23日開催 第28回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
    *今回、鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長 新井 祐一 様の講演内容を2回に分けて掲載いたします。
    *掲載内容は、講演が開催された時点でのデータや情報を基にしているため、現在の状況と異なる場合があります。

    目次

    • 勤務シフト作成お助けマン
    • 会社紹介
    • Agenda
    • 1.物流の2024年問題とは
    • 2.働き方改革関連法とは
    • 3.人手不足の問題
    • 4.シフト管理におけるよくある問題
    • 5.勤務シフト作成お助けマンとは
    • 6.お助けマン利用企業の業種・業態
    • (以上前編)

    • 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
    • 勤務シフト作成お助けマン

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      JRシステムの新井と申します、よろしくお願いいたします。我々のサービスとしては、勤務シフト表の自動作成というサービスがありますので、本日はサービス内容について、改善事例を含めてご案内できればと思います。

      会社紹介

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      先ほどご紹介いただきました通り、私は2015年から勤務計画ソリューションの企画、マーケティング、営業を担当しております。弊社の概要について紹介させていただきます。正式名称は鉄道情報システム株式会社、略称JRシステムと申しまして、設立が1986年12月9日ということで、国鉄が分割民営化された時(1987年4月1日)の、少し前に設立した会社となります。
      元国鉄のシステム部門が独立してできたという経緯がありますので、各旅客鉄道会社が株主という形になっております。
      弊社の一番のコアな事業として、JRの「みどりの窓口」の座席予約のシステム(旅客販売総合システム「MARS」, https://www.jrs.co.jp/guideline/mars/)があり、こちらのシステムの開発・運用に取り組んでいます。現在その他に、JR以外のお客様に対して提供可能なサービスとして、いくつかこちらの資料の右側に記載させていただいております。
      例えば、行楽・観光情報データの提供サービスでは、「季節情報提供サービス」(https://www.jrs.co.jp/service/product/season/)だったり、「らく通」(https://www.jrs.co.jp/service/product/rakutsu/)というのは、ホテルのサイトコントローラーといいますが、旅行会社・予約サイトの予約情報や在庫・料金調整を一元的に管理するシステムです。あとは、データセンターサービス(https://www.jrs.co.jp/service/product/data_center/)です、自社でデータセンターの拠点を保有しており、データセンター事業を提供しています。
      それ以外にもセキュリティや金融関連のサービスであったり、あとはJR貨物さんのコンテナの管理を長年行っており、そういったところから物流企業向けに、配送ルート計画ソリューション(https://www.jrs.co.jp/service/product/plan_root/)を提供しています。
      本日ご紹介する「勤務シフト作成お助けマン」((公式サイト)https://www.otasukeman.jp/)のお話になりますが、これが使う技術自体は、いろんな問題を解くことができるものになります。
      この後少しご紹介しますが、勤務シフトを自動で作っていて、この技術を使うと、例えば配送ルートを最適化するような計算ができたり、また、プロジェクトがあって、人をアサインしないといけないとか、マッチングするとか、そういったところへもこの技術を使うことで、自動化して答えを出すことが可能であり、そういった技術を使って(勤務シフト作成の)サービスを提供しています。

      Agenda

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      アジェンダとしてこちらに記載しています。最初に少しお話した部分もありますが、物流2024年問題とか、人手不足のお話、シフト管理に関する問題とか、そういったところで、「勤務シフト作成お助けマン」がどのようなところで使われていて、どういった改善ができたのか、そういったお話をさせていただき、最後に、(お助けマンの)デモンストレーションをできればと思っています。実際のデモを見ていただくと、機能や操作性を直感的にご理解いただけます。ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。

      1.物流の2024年問題とは

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      この部分は、働き方改革関連法によってドライバーの時間外労働時間の上限が設定されることが2024年問題として取り上げられていますが、それによってドライバーの1日の運転時間が短くなり、1人当たりの走行距離が減少するため、物が運べなくなるのではないか、そういった点が課題として指摘されています。

      2.働き方改革関連法とは

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      ここでは、法整備の理由を引用していますが、時間外労働の限度時間の設定というのが、物流の2024年問題に関連した、「働き方改革関連法」の主な施策になりますが、物流以外の業種でも当然、この法律が適用されて、高度な専門的知識を必要とする業務に就いて、一定額以上の年収を有する労働者に適用される労働時間制度(「高度プロフェッショナル制度」)の創設というのがあります。あとは短時間・有期雇用労働者や派遣労働者と、通常の労働者との不合理な待遇の相違を禁止する、こういったようなことが盛り込まれています。
      一番私が大事だと思っているのが、多様な働き方というところになります。当然法律としては、時間外労働の規制とかがあると思いますが、流れとしては、多様な働き方を選択できるということが今後さらに推進され、この部分の流れというのは基本的に変わらないだろうと考えています。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      働き方改革関連法の施工スケジュールは、こちらに記載している通りです。自動車運転業務、建設業務、医師については2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されました。それ以外に、勤務間インターバル制度とか、年次有給休暇の取得とか、こういったことも追加されています。
      実際に我々のこのサービスについては、物流企業のお客様からのお問い合わせが増えている部分もありますし、医師の働き方改革ということで、医療機関からの引き合いも増えています。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      時間外労働の上限規制は、自動車運転業務を除いて、一般的に年間720時間以内に設定されています。
      自動車運転業務に限っては、年960時間の上限が設定されており、現時点ではまだ優遇はされてる部分もありますが、今後の流れとしてこの部分がもっと厳しくなると考えています。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      あとは物流分野とは若干異なる領域になりますが、勤務間インターバル制度の導入促進というのが、勤務シフト管理においては、非常に重要なポイントとなっています。これは努力義務として規定されていて、終業時間から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休憩時間を確保する仕組みの導入を求められています。こういう要素が加わると、シフト作成担当者にとっては、非常に多くのことを考えないといけないという点が一つあります。
      二つ目は年次有給休暇の確実な取得という点で、これは全ての企業において、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対しては、年5日以上の休暇を取得させることが義務付けられています。
      そのため、勤務シフトを作成する上では、年間5日の休暇が確実に取得できるかどうかを確認しながら、シフトを作成する必要があり、同時に、勤務に関して適切な指示をする必要があるため、管理上の負担を大きくしている要因となっています。

      3.人手不足の問題

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      次に、シフト表を作る上で難しくさせているのは、人手不足という状況で、当然人が潤沢にいればそこまで悩むことはないのですが、(人手が)少ない中で何とか(シフトを)作らないといけない、というところがあるかと思います。
      今、この人手不足による経営ダメージが深刻になっているというようなデータが出ています。帝国データバンクが出してる2024年度上半期のレポートでは、163件が人手不足倒産と呼ばれる理由で、倒産に至ったと報告されています。上半期だけで、倒産件数が確実に昨年度を超えるだろうと予測されていて、これは従業員の離職であったり採用難で人手が確保できなかったりというのが、主な要因として考えられています。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      このレポートには、業種別の人手不足倒産件数が出ており、特に建設業・物流業が全体の45.4%をしめていて、非常に集中している報告となっています。従業員数別で見ると、従業員が少ない10人未満の小規模事業者が全体の82.2%をしめており、非常に多くなっています。これはコロナ渦明け後の経済回復、時間外労働の上限規制、これらのダブルパンチで、こういった倒産が多くなったのではないかと言われています。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      あとは、2025年問題というのがあります。この先もずっといろんな問題があるかと思いますが、我々のシフト管理をする上でも、キーワード(課題)になっていて、ベビーブームに生まれた多くの人、いわゆる団塊の世代の人ですね、それらの方々が2025年から75歳以上の後期高齢者になりますので、人口における高齢者の割合が増加し、様々な問題が出るのではないかと言われています。シフト管理に関係する課題といえば、慢性的な人手不足、今も人手不足なのですが、これがずっと続くということが言われていて、そういったところが一つ問題としてあると考えています。
      あとキーワードとしては、「ビジネスケアラー」への対応というのがよく出てきます。つまり、仕事をしながら家族の介護に従事する社員が増加するということです。今後は、こういった方々への対応も必要になってくると考えています。

      4.シフト管理におけるよくある問題

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      こちらに、「シフト管理におけるよくある問題」を記載しています。シフト管理をする上で一番の問題は、一番目に記載している、作成の負担が非常に大きいということです。(シフト作成に)すごく時間がかかってしまうことで、重要度の高い管理業務に十分な時間がかけられない、そういった話をよく伺います。当然そのシフト表を作る人は管理する方なので、シフト表の一番上に出てくるような人が一生懸命作っていて、その管理者の方にどうしても負担がかかってしまいます。つまり、単価が高い人が(シフト表作成のために)、非常にコストがかかっているという業務になります。
      その作ったものが、すごくよいものだったらいいのですが、人によって上手い下手があったりして、なかなかよい結果が出ない、例えば、人件費、残業が減らないとか、そういったところも含めて、問題になっているということが一番目にあります。
      2番目の問題は、シフト表作成が属人化しているという点です。
      特定の担当者じゃないとシフト表の作成ができないとか、新しく担当者になった人に急に作ってと言われても、なかなかうまく作れない、そういったこともあるかと思います。あとは、勤務シフトを作成する担当者が違うと、働き方自体も変わってしまう、業務運営も変わってしまう、そういったようなところにも繋がってくると考えています。このため、前の人はOKでも次の人が作成すると駄目だとか、そういったケースもあります。
      3番目の問題は、シフト表が原因で従業員満足度が低いという点です。
      シフト表自体が働いている方々にとっては、すごく関心が高いのです。毎月、来月どういう働き方をするのか、きちんと休みを取れたかなど、すごく関心が高くて、そこの部分で、例えば、不公平感を持ってしまうと、すごくやる気を下げてしまったりとか、そういったことにも繋がるのです。シフト表を作る人も、公平なものを作りたいとは思っていますが、先ほどの法律(働き方改革関連法)であったりとか、人が足りないとか、そういった点を考慮すると、条件が複雑になり、もう人の手だけではなかなか(対応が)難しい、そういったケースもあります。
      法律の知識がきちんとあって、従業員の希望もできるだけ叶えてあげたいという思いがあっても、やはり手作業でシフト表を作成するのは、限界があるというのが、物流業界だけではなくて、いろんな業界で、すごく皆さんが問題に感じている点であると考えています。

      5.勤務シフト作成お助けマンとは

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      弊社がご提案している、「勤務シフト作成お助けマン」というサービスですが、こちらは最適化AIという技術を使ってシフト表を自動作成する、クラウドサービスになります。スタッフの希望、各種勤務条件を反映させることはもちろん、それ以外に、法令遵守だけではなくて、働きやすさとか、公平性、そのあたりを考慮した上で、シフト表を作成することができるサービスになります。
      様々な業種業態にも対応していて、低価格でご提供している、そういったサービスになります。通常のシフト作成システムと何が違うのかという点ですが、おそらくほとんどの現場では、エクセルで作られているといったケースが圧倒的に多いかと思います。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      これは業界を問わず、いろんな業界でも大手のお客様でも、やはり現場ではエクセルでシフト表を作っていますというのが、今のところ圧倒的に多いです。これを解決するためのサービスというのが今いくつか出てきていますが、大体はシフト作成のアシストツールと呼ばれるようなものです。
      例えば、スタッフの方が、働いてる方からスマホでシフトの希望を集めて、シフト表を組むのは、手作業で組まなくてはいけなくて、その組んだ結果を共有できます、というようなものです。このエクセルをWebシステムに置き換えたツールというのは、大体アシストツールと呼ばれるもので、よくあるシフト管理システムであったり、勤怠管理システムのシフト作成機能というのは、この部類に入ると考えています。
      ただ我々は、それだけだとこのシフト表を組む作業という部分に関しては、あまり工数を削減できないだろうと考えており、この部分の条件を入れることで自動生成され、最適なシフト表が出来上がるパズルみたいな作業はこのシステムが考えてくれるというサービスが、弊社の「勤務シフト作成お助けマン」になります。

      6.お助けマン利用企業の業種・業態

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      こちらは、現在いろんな業種業態のお客様に、弊社の「勤務シフト作成お助けマン」をお使いいただいています。この事業を始めたのが、10年ちょっとぐらい前で、元々は我々はJRグループですので、駅の清掃要員の方々のシフト作成というのを、一番最初に取り組んできました。
      そういった勤務シフト作成というサービスは、当然JRグループ以外にも使えるだろう、いろんなところで困っているだろう、ということで、このサービスを事業化したものです。当初は、病院だとか、介護施設というのが一番わかりやすく、看護師さんだとかが一番困っているだろうと考えて、サービスインしたのですが、サービスを開始してみると、更にいろいろなところからお問い合わせを頂いて、業種業態を問わずいろいろな企業のシフト表作成の問題を解決できるサービスということで、今ご案内しているところです。
      勤務時間が非常に長くなれば、必ず業務を分担しないといけないので、勤務シフトというのが発生し、そういった現場であれば、シフト表作成が必要になるのです。物流現場でも土日関係なく動いているところは当然対象になりますし、小売り業でもすごく営業時間が長ければ当然シフトが発生する、そういったようなことがあり、いろんな業種でシフト作成が課題になっていると考えています。
      ※後編(次号)へつづく


      (C)2025 Yuichi Arai & Sakata Warehouse, Inc.


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    第565号 AIで物流業務はどう変わるか?(2025年10月9日発行) /en/logistics-565/ /en/logistics-565/#respond Thu, 09 Oct 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=20892 執筆者  久保田 精一 (合同会社サプライチェーン・ロジスティクス研究所 代表社員 城西大学経営学部 非常勤講師、運行管理者(貨物))  執筆者略歴 ▼ 略歴 1995年 東京大学 教養学部教養学科 卒 199 […]

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    執筆者  久保田 精一
    (合同会社サプライチェーン・ロジスティクス研究所 代表社員
    城西大学経営学部 非常勤講師、運行管理者(貨物))

     執筆者略歴 ▼
    • 略歴
      • 1995年 東京大学 教養学部教養学科 卒
      • 1997~2004年 財務省系シンクタンク(財団法人日本システム開発研究所)
      • 2004~2015年 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所
      • 2015年7月~ 現職
      活動
      • 城西大学 非常勤講師
      • 流通経済大学 客員講師
      • 日本工業出版「流通ネットワーキング」編集委員 ほか(いずれも執筆時点)
      著書
      • 「ケースで読み解く経営戦略論」(八千代出版)※共著 ほか

     

    目次

    • 1.はじめに
    • 2.物流分野におけるAI活用
    • 3.AI活用が進展しつつある安全管理領域
    • ■店着価格制のもとで受益者負担を議論することの問題
    • ■まずは実態把握が必要
    •   

      1.はじめに

      AIについては、技術的側面、産業的側面、そして社会的側面など、多岐にわたる話題が日々報じられており、もはやAIに関するニュースを目にしない日はない。また、AIには「光と影」の両面があるが、実ビジネスへの応用が進むにつれて、その「影」の側面に注目が集まることも増えてきたように感じられる。

      少し前の例では、プログラミング分野におけるAI活用の進展により、プログラマーの新規雇用が大幅に減少したと報じられ、SNS上でも大きな話題となった(注1)。
      データ入力のような単純作業はともかく、プログラミングのような専門的な業務までAIに代替されるというのは、AIが簡単な試験問題すら解けなかった数年前までは想像しがたいことである。

      さらに最近では、教育産業におけるAIの進出によって業績に影響が出ていることも話題となっている。通常、対人コミュニケーション能力や創造性が求められると考えられる教育分野において、AIによる淘汰が進むというのも、事前には予想しにくい展開である。

      このように、AIの実用化が進展する中で、既存ビジネスに対する影響が「正と負」の両面で顕在化してきているのが、現在の状況と言えるだろう。

      さて、では我々の物流業界においてはどうだろうか。
      物流は、後述するようにデジタル化の遅れた分野であり、多くの業務が依然として人手に依存している。そのため、現時点においては、AIの影響は比較的小さい。少なくとも、業務プロセスが劇的に変化するほどのインパクトは、今のところ生じていないと言える。

      しかし、AIが驚異的なスピードで進化を続けていることを考慮すると、AIによる業務変革が物流分野にも及ぶのは、時間の問題だと感じられる。人手不足による物流危機が叫ばれる中、旧態依然とした業務の変革は喫緊の課題であり、AIによる解決に対しては社会的な期待感もある。

      そこで本稿では、今後どのような業務においてAIの活用が進むのか、また、AIが普及した後も人間に求められる業務とは何かなど、AIが物流業界にもたらすインパクトについて考察していきたい。

      2.物流分野におけるAI活用

      物流分野で展開されている機器やサービスの中には、AIの活用を謳うものが数多く存在する。これらを業務分野とAIの技術要素に基づいて分類したものが【図表1】である。

      この中で、最も注目度の高い領域を一つ挙げるとすれば、図中【A】で示された、配車計画などに関連する分野であろう。

      トラック輸送の運行効率を左右する重要な要素の一つは、配車計画の巧拙である。配車業務は、多数のパラメータが絡む複雑な最適化問題であり、AI活用の余地が大きい分野である。
      また、効率的な配車でトラックの積載効率を向上させることは、車両台数の削減につながるため、コスト面でも大きなメリットがある。
      投資という観点でも、ニッチな業務が多い物流分野において、当該分野は比較的市場規模が大きく、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資が集まりやすい。その意味で技術進歩の可能性が大きい領域でもある。

      しかし現状を見ると、多くの場合、配車業務は依然として人手による「アナログ」な作業に依存しているのが実態である。国土交通省が中小物流事業者を対象に実施した調査(注2)によれば、トラック運送業における配車計画・手配業務の「デジタル化率」は、わずか4%にとどまっている。配車に必要な情報は、荷主からの運送依頼情報および協力会社などの空き車両情報だが、これらのやり取りは依然として電話やFAXといった旧来型のコミュニケーション手段に頼っている。

      これが配車が「アナログ業務」となっている大きな要因であるが、いずれにせよ現状では「AI導入以前」といった様相であり、これら配車等の分野はポテンシャルが大きく、注目度も高いが、市場開拓は、まだこれからの状況である。

      【図表1】物流分野におけるAI活用領域

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      3.AI活用が進展しつつある安全管理領域

      もう一つ、AI活用の注目が高まっている領域として挙げられるのが、図中【B】で示した「輸送における安全管理」に関わる分野である。
      具体的には、「ドライブレコーダーによる運転傾向の分析・診断」「危険運転への注意喚起」「教育プログラムの作成」といった業務である。また、最近では規制緩和を背景に導入拡大が見込まれている「自動点呼におけるAIの活用」も(やや性質は異なるものの)注目を集めている。
      これらはいずれも、トラック業界内で注目度が高く、かつ実際にAIの活用が進んでいる領域である。

      安全管理の分野は、以前から運送業界にとって大きな課題であり、長年にわたり頭を悩ませてきた領域でもある。
      例えばドライバーに対する安全教育は、法定義務であると同時に、事故防止の観点からも極めて重要である。その意味で、市販の教材を受講させるだけでは十分とは言えず、各ドライバーの運転傾向を踏まえた個別指導が求められる。
      具体的には、急停止・急加速や速度超過といった運転操作のログ、車内外の映像記録などをもとに運転傾向を把握し、それに基づいた教育・指導を行うことが望ましい。

      ただし、これらのデータは膨大であり、ドライブレコーダーの映像や、急停止時の状況等を人手で確認・分析するのは現実的ではない。一方、こうしたデータの解析はAIが最も得意とする領域の一つであり、AI活用にうってつけの分野だとも言える。安全管理におけるAI活用が進んでいる背景には、まさにこの適合性がある。

      またこのような事例からは、デジタル化が遅れているとされるトラック運送業界においても、一定の条件が整えばAIソリューションが普及し得ることが分かる。AI活用の条件の一つは、上述のとおり、業務がAI活用に適合していることだが、加えて、ドライブレコーダーの映像データやデジタコのログなど、にデジタル化されたデータが容易に入手できる環境が整っていたことも重要である。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      4.米国におけるAI活用の拡がり

      ところで、トラックの配車・運行管理や安全管理におけるAIソリューションの展開は、米国などが先行している。

      例えば、米国のMotive社(旧KeepTruckin社、求貨求車マッチングソリューションの大手)では、AI搭載のドライブレコーダー(AIダッシュカム)、配車システム、運行記録計(ELD=Electronic Logging Device)、車両テレマティクスを統合したソリューションを展開している。これにより、配車システムによる運行指示データ、ELDのログ、テレマティクスから得られる燃料消費量や車両の故障診断データなどを統合し、運行の効率化を支援するサービスを提供している。これはあくまで一例であり、同種のソリューションは多くの企業から展開されている。

      なお、ELDとは、日本におけるデジタコに類似した、主に労働時間の記録を目的としたシステムである。ただし、ELDは日本のように機器単位で認証を受ける仕組みではないため、必ずしも物理的な専用端末が必要というわけではない。そのため、車両のテレマティクスやカメラ映像、モバイル端末と連携可能なクラウド型アプリとして提供されるケースも多い。こうした背景から、画像データ、配車データ、運行記録データ、車両データなどを一元的に横断して活用する流れが進んでいるのである。
      これはデジタルデータの連携のしやすさが、AIの活用を後押ししている一例とも言える。

      加えて米国では、車両・ドライバーと荷物との「デジタルマッチング」においてもAIの活用が進んでいる。

      周知のとおり、米国には日本のような最低車両台数規制がなく、配車担当者(運行管理者)がドライバーに運行指示を行わなければならないといった規制もない。そのため、荷主から業務を受託した3PLやブローカーと、個人事業主であるドライバー(オーナーオペレーター)とをウェブ上でマッチングし、直接、業務を依頼できる環境が整っている。実際、こうしたマッチングプラットフォームは広く普及しており、ある調査によれば、ドライバーが受託する業務全体の約4割が、マッチングシステム上で獲得された案件であるという。

      このようなビジネス環境の違いが、米国における配車・運行管理や安全管理のデジタル化、ひいてはAI活用の推進力となっているのである。

      一方の日本では、現行の法制度や業務慣行では、同様の仕組みの実現は容易ではないが、しかしながら、状況は急速に変化しつつある。

      たとえば法規制の面では、数年前まで対面が必須だった点呼業務において自動点呼が認められるようになるなど、規制緩和が進んでいる分野がある。データ流通の面でも、デジタコのAPI公開などを通じた物流情報の標準化が急速に進展している。

      いずれにせよ、日本独自のビジネス環境は徐々に変化しており、デジタル化を妨げていたボトルネックも次第に解消されつつある。そのような中、米国と同様に、AIソリューションが配車や運行管理業務を置き換えていく方向へ進展していく可能性は十分に考えられる。

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      5.AI普及後にも残る業務とは

      以上、本稿では、物流業務のうち配車・運行管理や安全管理を中心に、AI活用の可能性について述べてきた。しかし、ここで取り上げた領域以外にも、AIが応用可能な分野は数多く存在する。
      【図表1】に示した物流実務以外の業務領域では、たとえば営業業務(提案資料や見積書の自動作成・送付)、経理業務(経費精算、運賃請求、原価管理など)といったバックオフィス業務においても、AIを活用できる場面は少なくない。こうした観点からすれば、物流事業者の多くの業務がAIによって代替可能であるようにも思われる。

      では、AIが広く普及した後に「人が担うべき仕事」とは、いったい何なのだろうか。

      私見ではあるが、その鍵となるのは「現場に根ざした暗黙知」であると考える。

      たとえば、トラック運送における効率性は、配車担当者の技量によって大きく左右されると言われる。それはなぜかといえば、「荷受け先や道路状況に応じた待機方法の工夫」「荷受け先における非明文化のルール」「個々のドライバーの特性や事情」など、配車業務において重要な判断材料となる情報を、配車担当者が経験知として把握しており、それを的確に活用できるかどうかで運行効率が異なるからである。同様のことは、たとえば倉庫管理業務にも当てはまる。

      もちろん、こうした「現場の暗黙知」をデータ化し、AIに学習させることが不可能というわけではない。しかし、これらの情報は極めて状況依存性が高く、スケーラビリティに乏しいため、現時点で多くが暗黙知のままにとどまっていると言えるわけで、その状況は、当面大きく変わることはないのではないか。

      よって近い将来にAIによる配車が広く普及したとしても、担当者が自身の暗黙知を総動員して「プラスα」の工夫ができるかどうかが、競争力の差を生む状況は当面続く。言い換えれば、業務効率化のキーとなる暗黙知がデータ化されていない以上、人間の判断力・経験が必要とされる場面は今後も残り続けると思われる。

      ここで述べたような人間が担う業務に関しては、担当者の知識や技能の高度化を図ることが重要だが、同時に、安全診断といったAIが得意とする領域では積極的な活用を進めることも必要である。これらを両立することが、今後の物流業界にとってますます重要になると考える次第である。

      注1:ワシントンポストの2025年3月の報道によれば、コンピュータープログラマーの雇用数が過去2年間で27.5%減少したとされる。ただし税制などAI以外の影響による減少との意見もある。
      注2:国交省物流政策課「中小物流事業者のための 物流業務のデジタル化の手引き」令和5年3月


      (C)2025 Seiichi Kubota & Sakata Warehouse, Inc.

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    第564号 物流施設の配置問題の今と昔-技術的な進化に着目して- (2025年9月16日発行) /en/logistics-564/ /en/logistics-564/#respond Tue, 16 Sep 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=21131 執筆者  田中 康仁 大阪商業大学 総合経営学部 教授  執筆者略歴 ▼ 略歴 1948年 1974年岡山県生まれ。 1997年神戸商船大学卒業。 2008年神戸大学大学院修了、博士(工学)。 広島商船高等専門 […]

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    執筆者  田中 康仁 大阪商業大学 総合経営学部 教授
     執筆者略歴 ▼
      略歴
      • 1948年 1974年岡山県生まれ。
      • 1997年神戸商船大学卒業。
      • 2008年神戸大学大学院修了、博士(工学)。
      • 広島商船高等専門学校、 流通科学大学商学部教授を経て、2025年より現職。
      • 主な著書に、『物流のしくみ』(単著、同文舘出版、2023年)、『モーダルシフトと内航海運』(共著、海文堂出版、2020年)、『1からの流通論 第2版』(共著、碩学舎、2018年)がある。
      

    目次

    • 1.はじめに
    • 2.物流とOR
    • 3.物流施設の最適配置
    • 4.ソルバーの能力向上がもたらした成果
    • あとがき
    •   

      1.はじめに

      正直、何をネタにして書こうか迷った。決してネタが豊富で選別に困ったという話ではない。前職、流通科学大学時代の物流企業と学生の社会連携(コラボ)は、第562号(髙橋先生、近畿大学の事例)と重なる点が多いし、最近始めたフィジカルインターネットの研究は、まだ理解に乏しい。そこで、ずいぶん昔に取り組んだ研究ネタではあるが、物流施設の配置問題、特にその解法を中心に話をしてみたい。ざっとではあるが、『ロジスティクス・レビュー』のバックナンバーのタイトルを確認したところ、物流センターや倉庫などの物流施設の配置問題を取り上げた事例は思ったより少なく、特にOR(Operations Research)を用いて物流施設の最適配置を求めるといった類の内容は確認できなかった。ただ単に、ニーズが少ないだけかも知れないが、話題が重ならないという点を拠り所としたい。 もう20年前になるが、当時、大手宅配事業者の物流ネットワークの効率性を検証したことがある1)。今も大きな違いはないと思うが、これらの宅配事業者は、地域間輸送の中継となる主管支店などのセンター(上位拠点)と地域内の集配送を担う営業所などのデポ(下位拠点)を機能別に分け、それらを階層的に配置し、下位拠点で集められた宅配貨物を上位拠点に集約し、上位拠点間にて幹線輸送が行われていた。研究では、宅配貨物の発生集中量は人口分布との相関があることから、町丁目単位の人口を基に、下位拠点の最適配置を求めたうえで、下位拠点からみた上位拠点の最適配置を求めることにより、物流ネットワークの効率性を検証したわけである。問題を解くにあたっては、OR分野における最適配置問題の一つであるp-median問題を適用した。しかしながら、当時のソルバーエンジンの計算能力とPC環境では、大きな規模の問題を解くことが出来ないという課題にも直面した。 それから20年、当然ではあるが技術の進歩は目覚ましい。PCの性能もさることながら、ソルバーエンジンの計算能力が飛躍的に向上している。これは、高機能なソルバーエンジンであるGurobi2)を無料で経験した実感である。ありがたいことに、教育機関であれば、無料もしくはアカデミックプライスで使用可能であることが多い。単に、物流施設の配置問題の解法を取り上げるだけではもったいないので、こうした技術革新にも触れたい。

      2.物流とOR

      よく言われるように物流とORの親和性は高い。というよりも、物流に関する定量的な問題を解く際は、数理的なアプローチ、すなわちORの援用は欠かせないと考える。 物流分野における典型的なORの応用事例を挙げてみたい。1つ目は、トラックが複数の配送先に効率よく商品を届けるルートを最適化する“輸配送計画”である。VRP(Vehicle Routing Problem)が代表的である。2つ目は、需要予測に基づき発注量・在庫水準を決定する“在庫管理”である。経済発注量(EOQ)や安全在庫を求めることが多い。3つ目は、どこに物流センターや倉庫を設置すれば、総コストが最小になるかを決定する“施設配置問題”である。weber問題やp-median問題として定式化し、解かれる。 公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会が提供しているOR辞典によると、「ORとは、現象を抽象化した数理モデルを構築し、モデル分析に基づいて種々の問題、とりわけ意思決定問題の解決を支援する方法論や技法の総称」とある。先の事例でも示したように、物流分野における現象をモデル化(定式化)し、実際の現場で得られる膨大なデータをもとに、コスト最小化や効率性の最大化を目的関数として、輸配送計画、在庫管理、物流施設の最適配置、などにて最適解を導出するためにORが用いられる。 同学会の機関誌『OR』の全文検索(注1)にて、“輸配送計画”、“在庫管理”、“物流施設”のキーワードを検索すると、順に388件、233件、61件と多くの論文がヒットする。なお、いまから約70年前の記念すべき最初の機関誌Vol.1(1956年)では、挨拶に続いて、トップバッターとして「適正在庫及び在庫管理の問題(横山保、大阪大学経済学部)」が掲載されている。さらに、同号では実務家からも「輸送計画の一例(岡見賢一、武田薬品工業(株))」が報告されていることから、ORの学問領域の初期の頃からすでに物流分野への応用が試みられていることが伺える。

      3.物流施設の最適配置

      物流施設である物流センターの立地は、用地の広さや地価の安さ、高速道路ICへのアクセス性、さらには需要地への近接性なども考慮する必要があるが、ここでは、単純化するため、図1に示すような配送先(図中の丸印)との位置関係のみで考える。配置案1と2のケースでは、どちらが最適な配置であるかは一目瞭然である。トンキロを使って定量的に比較すると、配置案1が274トンキロであるのに対し、配置案2では83トンキロと3分の1以下となっている。つまり、配送先との関係のみで物流施設の最適配置を求めるというのは、輸送コストである配送量(需要量)×距離の総計が最小となるような物流施設の配置を求めることである。これは、配送量(需要量)をQ、距離をDとおくと、式(1)のように定式化することができる。なお、距離については、道路距離の方が好ましいが、計算が煩雑になるため、直線距離(ユークリッド距離)を用いる。
      Minimize ΣQ*D 式(1)
      図1 配送先からみた物流センターの配置案の比較
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
      定式化ができれば、プログラムや汎用ソルバーを用いて、計算問題を解く。Microsoft Excelにもソルバー機能は備わっており、図2のような問題であれば簡単に最適配置を求めることができる。配送先はdepot_1~5の5か所であり、それぞれ需要量(Q)がある。散布図では、depotの位置と需要量の大きさを円で示している。物流センターDCと各配送先の距離(D)はユークリッド距離により算出し、Q*Dによりコストを求める。まず、初期値としてDCのx,y座標を(0,0)としておく(散布図の緑の四角)、このときのQ*Dの合計である総コストは、緑のセルの473.42である。ソルバー機能を使って、計算する際は、赤のセルの総コストが最小になるように、DC(最適地)のx,y座標を変化させる。その結果、座標(5.64, 3.66)の位置(散布図の赤い四角)が物流センターの最適配置であり、総コストは226.01である。 以上のようにして、最適配置が求まったわけであるが、物流センターは2次元の座標平面上であれば、どの場所にでも自由に配置できる。つまり、x,y座標のどのような値(連続量)をとることもできる。こうした連続量を扱う配置問題をweber問題という。しかしながら、何処にでも自由に施設を配置するというのは非現実的であり、物流センターなどの施設の配置を検討する際は、候補地から選定するケースが多い。このような問題に対応するため、複数の候補地の中からp箇所を選ぶ配置問題のことをp-median問題という。図3に示すように、配送先であるdepotの条件は先ほどと同様であるが、物流センターDCの候補地が4か所(DC_1~4)与えられ、その中から最適な配置を選択する。1か所(p=1)のみ選択する場合、図2の結果に近いDC_3が良さそうである。2か所(p=2)であれば、どうであろうか。1つ目はDC_3、2つ目はDC_3から離れているdepot_1をカバーするために、DC_2が選ばれそうである。実際にExcel以外のソルバーで計算した結果(注2)、p=2の場合であれば、DC_2とDC_3が選択され、総コストは165.96であった。 一見すると、p-median問題も容易に最適解が得られるように思えるが、weber問題が連続量を扱う問題であるに対し、p-median問題は候補の中から選択する(選択:1、非選択:0)
      図2 weber問題による物流センターの配置案の検討
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
      図3 p-median問題による物流センターの配置案の検討
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
      離散問題である。離散問題は組み合わせ問題であり、計算量(組み合わせの数)が膨大になり、PCの性能が向上したとしても解くことが難しいことで知られている。

      4.ソルバーの能力向上がもたらした成果

      式(2)が、宅配事業者の物流ネットワークの効率性を検証するために定式化したp-median問題である。今までの説明と同様に、Qは需要量(宅配貨物量)、Dは直線距離であり、これらは連続量であるものの、yjとxijが{0,1}の離散量となっている。yjは、上位拠点を候補地jに立地させる否かを示す変数であり、xijは、下位拠点iが上位拠点jに属するか否かの変数である。こうした連続量と離散量の両方が含まれる問題を、混合整数線形計画問題(MILP:Mixed Integer Linear Programming)と呼ぶが、離散量である整数が含まれることから、先に述べた通り、計算の難易度は高い。このため、当初、近畿2府4県を対象に物流ネットワークの効率性を検証しようとしたが、断念し、兵庫県のみに限定したという経緯がある。ただし、これは論文の信憑性を脅かすものではない。
      式(2)
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
      近畿圏の検証結果に入る前に、今回解析に使用したソルバーエンジンであるGurobi Optimizerの能力向上に触れたい。Gurobiは 2008年に、Robert Bixby氏、Edward Rothberg氏、Zonghao Gu氏、の3氏によって開発される。図4は、MILPを対象としたベンチマークテストの結果である。最初のリリースのバージョン1.1では解けない問題が1,800あったのに対し、改良を重ねた結果、2024年11月にリリースされた最新のバージョン12.0では、未解決問題が200まで、大幅に減少している。同様に計算スピード(図中の第2軸)も初期バージョンに比べて、最新バージョンでは91%と大幅に向上している。このように、Gurobi Optimizerはソルバーエンジンとしての能力向上が著しい。
      Gurobi社のホームページを参考に筆者作成
      図4 ソルバーエンジン(Gurobi Optimizer)の能力向上
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
      分析結果の詳述は避けるが、Gurobiをソルバーエンジンとすることにより、近畿圏(2府4県)の宅配網の物流ネットワークの効率性を検証することが可能となった。もちろん、PCスペックの向上による影響も無視できないと思うが、普段使っているPC(CPU:Intel 3.10GHz、RAM:16.0GB)は、それほど高性能というわけでもない。なお、20年前のPCのスペックは、CPU:Intel 2.26GHz、RAM:1.0GBである。専門家ではないので、PCの性能向上なのか、ソルバーエンジンの能力向上なのか、どちらが問題を解くのに強く影響したかを見極めることはできないし、その点に強い関心があるわけでもない。それよりも20年前に解けなかった問題が、わずか1秒もかからず(0.64s)解けたことに感動した。

      あとがき

      Gurobiは、ソルバーのため、実際の問題(p-median)を解くためには、プログラムを組む必要がある。達人たちのホームページを拝見すると、言語にPythonを使っているケースが大半だったことから、新しい言語にチャレンジした。プログラム言語を触るのも久しぶりなため(前々職の高専時代以来)、相当苦戦した。というより、途中から自分では組める気がしなかったので、ダメもとでChatGPTにお願いしてみた。普段、あまりChatGPTを使うことが無かったので、半信半疑だったが、何回かのやり取りで、こちらが希望する通りのプログラムを組んでくれた。コードも簡潔で分かりやすく、これには驚かされた(もう、プログラムを習得する必要がないじゃないかと)。このあたりの苦労話(?)も機会があれば、してみたい。また、近畿圏の分析結果は、フィジカルインターネットセンターとの共同研究のため、承諾が得られれば、こちらも話題提供したい。 【補注】 (1)2006年以降(1990年-2005年は特集タイトルのみ)の機関誌記事全文検索 (2)事例で取り上げた簡易な問題であれば、Excelでも算出可能であるが、計算手順が煩雑になり、一般的ではないため、汎用ソルバーにて計算。 【参考文献・URL】 1)田中康仁, 小谷通泰,「宅配貨物輸送における配送拠点の最適配置計画に関する分析」,土木計画学研究・論文集,Vol.23,no.3,pp.779-787,2006年 2)https://www.gurobi.com/ (2025/09/03閲覧) (C)2025 Yasuhito Tanaka & Sakata Warehouse, Inc.

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    第563号 ロジスティクスのゼミが「企業とコラボ」-担当教員の手記-(後編)(2025年9月4日発行) /en/logistics-563/ /en/logistics-563/#respond Thu, 04 Sep 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=20885 執筆者  髙橋 愛典 近畿大学 経営学部 教授  執筆者略歴 ▼ 略歴 1974年千葉市生まれ。1996年早稲田大学政治経済学部卒業、 2005年同大学大学院にて博士(商学)取得。 早稲田大学商学部助手、近畿大 […]

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    執筆者  髙橋 愛典
    近畿大学 経営学部 教授

     執筆者略歴 ▼
      略歴
      • 1974年千葉市生まれ。1996年早稲田大学政治経済学部卒業、
        2005年同大学大学院にて博士(商学)取得。
        早稲田大学商学部助手、近畿大学商経学部講師等を経て、
        2013年より現職。
      • 主な著書に『地域交通政策の新展開』(白桃書房、2006年)、
        『日本社会に生きる中小企業』(共著、中央経済社、2017年)、
        『まちづくりの統計学』(共著、学芸出版社、2022年)がある。
  • 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
  • 前編はこちら
  •  

    目次

    • 3 大学教育としてのコラボの反省点
    • 4 コラボが企業にもたらす示唆を考える
    • おわりに:卒業論文こそ最終成果
    • (以上後編)
        
      前回までのあらすじ
      筆者のゼミは2024年7月から12月にかけて、コクヨサプライロジスティクス(KSL)との産学連携に取り組んだ。前篇ではその概要を示すにとどまったが、後編ではいよいよ、その評価を試みたい。まずは大学教育の立場から、3つの論点を提起する。

      3 大学教育としてのコラボの反省点

      第一の論点は、本稿の冒頭で指摘した、すでに一般的になっているB to C関連の産学連携をめぐるものである。テーマBは、コクヨのネット通販「カウネット」に関するものであり、見学した近畿IDCはその中枢を担う物流拠点である。カウネットは、表2にあるようにB to B(オフィス・工場向け)とB to C(消費者向け)の両方のサービスを含んでいる。テーマBを選択したチームの報告は、やはりB to Cに関する提案が中心であった。中には、KSLの方々が唸るような内容もあったものの、消費者の立場からの「こんなサービスがあると便利」という思い付きの域を脱することは、想像以上に難しいと筆者は感じた。消費財の商品開発に関する産学連携が花盛りであることは繰り返すまでもない。しかしその際は、教員が商品開発のプロセスを熟知した専門家として、学生にその方法(論)をじっくりと教え込み、学生もそれを活用するだけの能力を養わないと、十分な成果をもたらしえないというのが、偽らざる感想である。
      第二の論点は、基礎知識の習得と活用に関するものである。ロジスティクスに関する産学連携らしく、見学から提案まで物流拠点に関する調査・研究が複数のテーマの根幹をなしていた。物流拠点の役割の根底にあるのはやはり「6つの物流機能」に関する基礎理論である。これはもちろん、筆者が3年生前期の講義科目「ロジスティクス論」で最初に説明するものであり、ゼミ生には全員に、この講義の履修を義務付けている。物流拠点の役割(要はこれら物流機能の組み合わせ)を理解するためには避けて通れない。さてゼミ生たちは、それを正確に理解し、物流拠点の新たな役割を提案する際に使いこなせたかどうか。これは筆者の講義の力量も試される論点である。
      第三の論点は、調査の手法である。近大経営学部ではここ数年、学生がノートパソコン等を持参すること(BYOD: Bring Your Own Device)を前提とした教育がなされている。ゼミの時間におけるミーティングでも、ゼミ生たちがノートパソコンを開き、Wi-Fi接続して各種の検索をしたり、プレゼンテーション資料を作ってシェアしたり、という作業が中心であった。もっともそれだけでは、書籍や論文といった古典的な参考文献を駆使できているとはいいがたいというのが、これも正直な感想である。ノートパソコンを閉じて図書館に行き文献を探すことを、今日日の学生が億劫に感じることもよくわかる。筆者は、調査・研究の進め方に関する文献を、産学連携が始まる前にゼミで講読する必要性を痛感した。一方で最終報告会の際、若林社長から「各種調査の際に生成AIを活用することも考えてほしかった」というコメントを頂戴した。このように、調査手法と知的訓練はますます多様になっており、ゼミで学ぶべきこと学ばせるべきことは、増加の一途をたどっている。

      4 コラボが企業にもたらす示唆を考える

      続いて、産学連携が企業にもたらしうる示唆をめぐって3つの論点を提示する。とはいえこれはKSLの社員の方々のお考えではない。あくまでも筆者による推論に基づくものであり、今後の議論の一助になることをまずは期待したい。
      第一の論点は、採用活動との関連である。こうした産学連携が「インターンシップに似たもの」になるであろうことは、ある同僚教員から伝え聞いていた。実際、KSLの住野・井上両氏のような、各チームにアドバイスする「メンター」の役割を担ってくださる社会人の方々からすれば、学生たちを部下予備軍と捉えて、優秀な学生を見い出せれば、自社のインターンシップや採用活動に誘導したいという思いに駆られることもあろう。どの企業もインターンシップといえば大学3年の夏休みから始まることが一般化しつつあり、それならば3年生前期に産学連携ができれば、採用活動上も有利であろう。しかし上述のように、3年次からゼミに属する体制で3年生前期から産学連携を始めてしまえば、ゼミの中で前述のような多様な調査手法や知的訓練に学生を触れさせる機会はぐっと少なくなってしまう。それにも増してKSLでは、新卒の採用活動は現在行っていない。それでも、KSLの社員の方々が何人も、この産学連携に熱心に携わってくださったのは、若林社長の思いとイニシアティブによるところが大きい。
      第二の論点は、こうした経営者の方針と関わってくるところである。若林社長は産学連携に非常に熱心であり、2021年度から千葉商科大学(大下剛ゼミ)で実施されていた上、2025年度からは名古屋学院大学(杉浦礼子ゼミ)や久留米大学(近江貴治ゼミ)とも実施の予定である。担当教員は筆者を含めいずれも日本物流学会に所属し日頃より顔を合わせているとはいえ、学会や研究のみならず教育に関しても大学間の連携が深まる意義は大きい。もっとも、若林社長もいつまでもKSLに留まってくださるとは限らない。次期社長に交代したときに、産学連携に関する判断が大きく変わる可能性は否めない。それに備えて産学連携において企業が享受するメリットを明確かつ多大なものにし、経営陣にアピールし続けられるようにする必要がある。そのためには上記のように、採用活動に直接貢献することが考えられるが、前述したような限界も認識する必要がある。もう一つは、ゼミ生の報告・提案の質を引き上げ、企業の方々に「産学連携して学生にアイディアを出してもらってよかった」と毎年度感じていただくことである。それにはやはり、教員による指導の力量が問われる。
      最後の論点は、産学連携の時期の固定による「パッケージ化」である。表1のとおり最終報告会を12月初頭に設定したのは、JILS班の報告会と日程を合わせたことはもとより、年末と年度末というKSLの繁忙期を避けることを優先したからである。逆にいえば、秋に産学連携を行うことは、物流企業さらには荷主企業の商慣習から見ても馴染みやすいのではないか。実際、若林社長は、トラック運送業者をはじめ他の物流企業にも産学連携への参加を呼びかけ、業界内の連携を深めることも真摯に検討されている。それなら、時期を固定した上で、それぞれの大学(の教員)が産学連携の「売り込み」を企業にかけることも可能になる。複数の企業との産学連携を目指すことは、上述のように連携先企業の経営陣や方針が変更になった際などにリスクを軽減しうる。もっともそれには、繰り返すまでもなく、企業が享受するメリットを高める必要があり、教員の力量が一層問われる。握る手に力がこもる。

      おわりに:卒業論文こそ最終成果

      このようにして産学連携は、3年ゼミ後期の活動の柱となった。最終報告会を終えた後は、就職活動と並行した卒業論文(以下「卒論」)の作成と報告に、ゼミの柱は代わる。
      卒論は、大学院進学志望者以外のゼミ生にとって、長い学生生活の集大成かつ最終目標である。近大経営学部ではゼミへの所属と単位取得のみならず、卒論の提出と審査を経ないと、原則として卒業できない。筆者としては、卒論のテーマを物流・ロジスティクスに限定するいわれはない。筆者の教育・研究上のライフワークである「交・流・通」=「ヒトの交通(transportation)と、モノ・情報の流通(distribution)によって、ヒトとヒトとの交流(communication)を実現する」のどこかに通底する問題意識がある限り、ゼミ生個人の興味・関心に沿って卒論のテーマを選べるように心がけている。
      本稿の執筆時点において、第19期生の卒論のテーマは全員決定しており、就職活動の合間を縫って4年ゼミで毎週、中間報告が行われている。第19期生の特徴は、物流と防災を関連づけたテーマを選んだゼミ生が3名もいることである。もっともその背景にあるのは、コクヨ班というよりJILS班の活動であろう。JILS班では荒木協和氏(元・サンスター)がコーディネーター(本稿でいうメンター)として、表1にある9月28日の講演ならびにテーマ提示を担当された。そこで荒木氏が、災害時のロジスティクスの重要性、とりわけ南海トラフ地震への対応について強調されたことが、ゼミ生たちの心に大きく響いたと思われる。上述のゼミ生3名のうち2名はJILS班に属し、チームの活動でも災害時のロジスティクスに関するテーマを選んでいた。
      これをもって、コクヨ班の活動が卒論に影響を与えなかった、というわけでは決してない。テーマ選択以外にも、ゼミ活動が卒業論文に及ぼす効果とその理路は多様である。そして教員の立場からすれば「おもろい卒論を書いたゼミ生が一番可愛い」ことを、卒論のテーマ仮決定の段階から強調している。これはえこひいきでは決してなく、筆者の研究者としての本心である。産学連携を経験した第19期ゼミ生が卒論を提出するのは2025年12月であり、そのときに改めてゼミ活動、そして産学連携を振り返ることになろう。

      追記
      本稿は、若林智樹・住野博紀・髙橋愛典「物流教育における企業と大学の連携 -コクヨサプライロジスティクスと近畿大学の事例-」日本物流学会関西部会(2025年5月9日、中央電気倶楽部)の報告内容のうち、筆者が担当した部分に加筆修正を施したものである。コクヨサプライロジスティクス(KSL)の社員の方々、とりわけ若林智樹社長、住野博紀氏、井上真一氏に大変お世話になったことはいうまでもない。この場を借りて感謝の意を表したい。KSLの広報ご担当の吉村南菜氏のご尽力もあり、本稿で紹介した産学連携の取り組みは、KSLのプレスリリースでも大変わかりやすく紹介されている。以下のウェブサイト(2025年5月15日アクセス)を参照されたい。
      https://www.kokuyo-supplylogistics.com/news/2024/12/post-14.html


      (C)2025 Yoshinori Takahashi & Sakata Warehouse, Inc.


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    第562号 ロジスティクスのゼミが「企業とコラボ」-担当教員の手記-(前編)(2025年8月19日発行) /en/logistics-562/ /en/logistics-562/#respond Tue, 19 Aug 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=20873 執筆者  髙橋 愛典 近畿大学 経営学部 教授  執筆者略歴 ▼ 略歴 1974年千葉市生まれ。1996年早稲田大学政治経済学部卒業、2005年同大学大学院にて博士(商学)取得。 早稲田大学商学部助手、近畿大学 […]

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    執筆者  髙橋 愛典
    近畿大学 経営学部 教授

     執筆者略歴 ▼
      略歴
      • 1974年千葉市生まれ。1996年早稲田大学政治経済学部卒業、2005年同大学大学院にて博士(商学)取得。
        早稲田大学商学部助手、近畿大学商経学部講師等を経て、2013年より現職。
      • 主な著書に『地域交通政策の新展開』(白桃書房、2006年)、
        『日本社会に生きる中小企業』(共著、中央経済社、2017年)、『まちづくりの統計学』(共著、学芸出版社、2022年)がある。
  • 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
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    目次

    • はじめに:B to Bで産学連携とは?
    • 1 コラボの第一歩:物流拠点の見学
    • 2 コラボの概要:チーム編成から報告会まで
    • (以上前編)

        
      前編

      はじめに:B to Bで産学連携とは?

      筆者は近畿大学(以下「近大」)の経営学部で教育と研究に従事している。「経営(学部)」といっても何を「経営」するのか目的語が不明確であるが、一般に想定されるのは民間企業である。ここ15年ほどであろうか、近大経営学部では、ゼミ(3年・4年次における専門科目としての「演習」)が民間企業と連携(いわゆる「産学連携」「企業とコラボ」)する事例が大きく増えた。人気をとりわけ博しているのは商品開発への学生の参画らしく、商品開発を直接の研究対象としない教員も、ゼミで頻繁に産学連携を試みているようである。学生にとって、消費者の立場を活かして企業に提案し、それが実際に商品化されて店頭に並ぶことは大きな喜びに違いない。
      こうした事例は、最終消費財(consumer goods)に関わる内容、いいかえればBusiness to Consumer (B to C)に限定されがちである。これなら学生は、いち消費者として意見を出すことは難しくない。一方で、筆者の近大での担当科目は講義・ゼミとも着任当初から一貫して「ロジスティクス論」である。その物流・ロジスティクスの世界は、ほとんどが企業間取引(Business to Business: B to B)である。端的にいえば、物流企業も荷主企業も担当者がプロ同士という真剣勝負であり、学生が入り込んでアイディアを出す余地はきわめて少ない。学生たちの間に、産学連携でも就職活動でも、消費財関連の企業ばかり意識して企業間取引に目を向けない傾向があることを懸念しつつも、筆者のゼミが「企業とコラボ」することは諦めていた。
      そこに転機が訪れた。文房具でお馴染みコクヨ㈱の物流子会社であるコクヨサプライロジスティクス㈱(以下「KSL」)の若林智樹社長が、お声をかけてくださったのである。コクヨの創業の地は大阪である。コクヨもKSLも本社は大阪市東成区にあり、東大阪市にある近大経営学部のキャンパスからも程近い。若林社長は勉強熱心で、日本物流学会にも所属され、そこでご一緒したことがきっかけであった。2023年秋にイギリスでの在外研究(サバティカル)から帰国し、2024年度にゼミを本格的に再開する矢先のことであった。
      本稿ではまず、2024年7月から12月にかけて、筆者のゼミの第19期生(当時3年生)がKSLと実施した産学連携のあらましを記すこととする。

      1 コラボの第一歩:物流拠点の見学

      若林社長から、KSLのSCM推進室(当時)に所属する住野博紀・井上真一両氏をご紹介いただき、6月4日にまずはゼミ生を交えずに打ち合わせを実施した。その結果「コラボのキックオフイベント」として、7月25日にKSLの物流拠点「近畿IDC」(大阪市住之江区)をゼミ生たちと見学した。物流関連のアルバイト経験を持たないほとんどのゼミ生にとって、物流拠点を訪れること自体が初めてであった。
      この日に見学を実施したのは、前期授業期間中唯一の補講日であり、補講には教室での出席が厳格には求められないという理由にほかならない。一方で、普段クーラーの効いた教室にいるゼミ生たちにとって、暑い盛りの物流拠点の空気も初体験であり、ゼミ生数名はKSLの計らいで空調服を試着できた。物流拠点についてはもちろん、筆者は講義で説明するし、その内側を紹介する映像資料(いわゆる「動画」)も教室で流すのであるが、このように五感で知ることの重要性を、ゼミ生たちの反応を見て改めて実感した。
      この日は金曜日であり、週末を挟んで試験期間に突入するという意味では、学生たちにとってつかの間の休息日でもあった。見学後は大阪市中心部に移動し、KSLの方々を交えて「反省会」を行ったことも印象に残っている。なお、学生の夏休みは、3年生ともなるとインターンシップなどで多忙になりかねないこともあり、宿題をゼミ生個別に課したものの、産学連携とは関連づけなかった。

      写真1 ゼミ生によるKSL近畿IDCの見学
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      (出所)KSL提供。

      2 コラボの概要:チーム編成から最終報告会まで

      後期第1回のゼミは9月19日であり、ここでチーム編成を行った。今期は、並行して日本ロジスティクスシステム協会(JILS)関西支部の「大学合同ロジスティクス研究発表会」にもゼミとして参加することとした。表1にあるようにスケジュールがほぼ重なることとなったので、ゼミ生21名(男子16名・女子5名)を3名×7チームに再編し、5チームをKSLへの最終報告会(12月2日)を目指す「コクヨ班」、2チームを大学合同ロジスティクス研究発表会(12月1日)を目指す「JILS班」に割り当てた。

      コクヨ班への研究テーマの提示は9月30日のゼミであり、表2にある5つのテーマからチームごとに選択を求めた。テーマ数とチーム数は一致したが、同じテーマを複数のチームが選択することも認めたためか、2チームがテーマAを選択し、テーマCを選択したチームはなかった。

      表1 産学連携の日程
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      (出所)KSLおよびJILSの資料より筆者作成。
      (注1)ゼミ生全員に、表中の全ての行事への参加を求めた。
      (注2)曜日の記載のない月日は、すべて月曜日である。2024年度の3年ゼミ(演習Ⅰ)は月曜4時限(15:00~16:30)に行った(月曜日は祝日、いわゆるハッピーマンデーが多いので、9月19日は木曜日だが月曜日課として月曜日の授業回数を調整している)。

      表2 コクヨ班の研究テーマ
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      (出所)KSL資料より筆者作成。
      こうして、ゼミの時間帯の多くをチームミーティングに当て、筆者はアドバイスを求められた際に応じることを基本とした。筆者がやむを得ず出張し、休講した回もあったが、その際もゼミの教室を確保したところ、KSLから住野氏がご来校くださり、コクヨ班のみならずJILS班にもアドバイスしてくださった。また、最終報告会(12月2日)の直前には、ゼミ以外の時間帯でもミーティングやリハーサルの場がほしいというチームが現れ、筆者は快くゼミ教室を確保した。やはり、学外の方々をお招きして研究報告する機会には、程良い緊張感が流れるようである。
      最終報告会での報告タイトルは表3のとおりである。通常のゼミの時間帯(月曜4時限の1コマ90分)に極力収めることとしたので、チームごとに報告10分・質疑5分が持ち時間であり、やや短かったという反省が残る。しかし、若林社長も来校されて講評をくださり、また2025年度から筆者のゼミに所属することが決まっていた2年生数名も授業の合間を縫って聴講してくれたので、その点でも盛り上がりを見せた。

      表3 最終報告会でのチーム別報告タイトル(テーマ順)
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

        
      (出所)ゼミ資料より筆者作成。

      写真2 最終報告会におけるプレゼンテーションの光景
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      (出所)KSL提供。

      写真3 最終報告会を終えて集合写真
      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      (出所)KSL提供。
      さて後編では、最終報告会までの取り組みを踏まえて、今回の産学連携における反省と示唆について、大学と企業の立場から論点を提起することとしたい。
      ※後編(次号)へつづく


      (C)2025 Yoshinori Takahashi & Sakata Warehouse, Inc.


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    第561号 物流センターの「働き方改革」(後編) (2025年8月7日発行) /en/logistics-561/ /en/logistics-561/#respond Thu, 07 Aug 2025 00:00:00 +0000 /en/?p=20868 執筆者  長谷川 雅行 (一社)日本物流資格士会 顧問  執筆者略歴 ▼ 略歴 1948年 生まれ 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締 […]

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    執筆者  長谷川 雅行 (一社)日本物流資格士会 顧問
     執筆者略歴 ▼
      略歴
      • 1948年 生まれ
      • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
      • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
      • 2009年 同社顧問
      • 2017年(一社)日本物流資格士会 顧問
      活動領域
      • 日本物流学会
      • (一社)日本SCM協会
      • (一社)日本物流資格士会会員
      • 流通経済大学客員講師
      • 港湾短期大学校非常勤講師
      • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
  • 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
  • 前編はこちら
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    目次

    • 2.人手不足の解消策~働き方改革(1)
    • (1)労働環境の改善
    • (2)福利厚生の見直し
    • (3)賃金水準の見直し
    • 3.人手不足の解消策~働き方改革(2)
    • (1)自動化・省力化機器の導入
    • (2)労働生産性の向上
    • おわりに
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      2.人手不足の解消策~働き方改革(1)

      それでは、人手不足を解消するためには、どうすれば良いのだろうか。倉庫・物流センターにおいても製造業・流通業などの他産業や他の物流業と同様に、「働き方改革」を進めて行かねばならない。 厚生労働省によれば、「我が国は、『少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少』『育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化』などの状況に直面して」おり、「こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になって」いる。「『働き方改革』は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指して」いる そこで、働き方改革関連法(正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が制定され、労働基準法・労働安全衛生法・労働契約法・パートタイム労働法(以上、通称)など8つの法律が2018年に一括改定された。2019年以降、改正された8つの法律は逐次施行され、最後に施行されたのが、前述の自動車運転者等に対する「時間外労働時間の年間上限960時間」(2024年4月施行)である。 「働き方改革」は、働く人が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革であり、「働き方改革」を進めない企業は、働く人から「選択」されなくなる恐れがある。 そこで、倉庫・物流センターの「働き方改革」を幾つか述べたい。なお、(1)~(3)は図表2にも掲出されているので、参照されたい。

      (1)労働環境の改善

      まずは、働く環境の整備・改善である。その基本は「安全・安心」にあることはいうまでもない。 中央労働災害防止協会の「倉庫業における事故の型別労働災害発生状況(1999-2021年)」によれば、直近の2021年には休業4日以上の労働災害(職業性疾病を含む)が781件発生し、増加傾向にある(1999年は340件)。類型別にみると、動作の反動無理な動作178件、転倒170件、はさまれ巻き込まれ97件、墜落・転落96件などが多い。 安全については、前号「3.高年齢者に優しい物流センター」で、厚生労働省の「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(2020年)を紹介させて頂いたので、そちらを参考にされたい。 また、倉庫・物流センターの安全対策については、筆者も某メーカーの工場倉庫での安全対策をお手伝いしたことがあるので、後日、稿を改めて述べることにしたい。 退職者を減らして離職率を下げて、倉庫・物流センターにおける人材の定着を目指すには、労働環境の改善が必要である。「安全・安心」で労働環境が良くない職場では、人材は定着しない。 一般論ではあるが、庫内の温湿度管理や、作業しやすい設備と配置、清潔な休憩所やト イレ、自動販売機の設置などがある。かなり前のことになるが、田中サカタウエアハウス社長と横浜市近郊の3PL企業の物流センターを見学した際に、事務所・休憩施設がカフェ風に整備されていて、当時としては珍しかったので驚いた(今では、当たり前になっているが)。 温湿度管理については、労働安全衛生規則が改正されて、2025年6月から「職場における熱中症対策の強化」により、事業者に対策措置が義務化されている。 労働環境が整備されて働きやすい環境が整えば、離職率は改善され、求人にも有利になると思われる。 図表3 倉庫業における事故の型別災害発生件数

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
         (出典)中央労働災害防止協会「労働災害分析データ」 (出所)船井総研ロジ「ESG経営を脅かす?物流倉庫で多い〇〇」

      (2)福利厚生の見直し

      福利厚生の充実は、人手を確保して定着させるためには欠かせない。例えば、用品等の無償支給や食事の補助、資格取得への補助、特別休暇の付与、託児・保育施設の設置などが挙げられる(図表4 参照)。 図表4 福利厚生の例

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
         なお、福利厚生の運用に当たって、正規雇用者と非正規雇用者に差を設定するときは、合理的な理由がないと、パートタイム労働法の「同一労働同一賃金」の原則に抵触するので注意が必要である。 後述の賃金でも述べるが、人手不足の状況下では、同業種の倉庫・物流センターばかりでなく、製造業・流通業・サービス業などとも人手の奪い合いとなっている。賃金が同じであれば、少しでも福利厚生が充実している企業の方へ、人手は流れかねない。 人手不足対策にあたっては、自社の福利厚生を、近隣の他社・他業種と比較して見直し、より働き手のニーズに合った制度の整備を検討する必要がある。

      (3)賃金水準の見直し

      身も蓋もない言い方となるが、一番の決め手は実入り即ち「賃金」である。 パートタイム労働者(以下、「パート」と略す)など主婦労働者で配偶者の扶養家族になっている場合は、いわゆる「年収103万円の壁」による労働時間の制約がある。 また、2025年4月施行の改正「育児介護休業法」では、育児・介護時間を確保するためにパート等の残業制限が拡大された。 あれやこれやで、1項(3)の2)で述べたようにパート等に依存している倉庫・物流センターの従業員も不足している。 2025年春闘では、日本最大の労働組合でスーパーマーケットなどのパート組合員を多く抱えているUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)は4月3日、誇らし気に「短時間(パートタイム)組合員では214組合が妥結し、加重平均で(時給)70.1円6.08%を勝ち取った。10年連続で正社員組合員を上回る賃上げ率を獲得。雇用形態間の格差是正が進展している」と公表している(同組合ホームページ)。 一方、トラックドライバーを多く抱えている交通労連(全国交通運輸労働組合総連合)では、トラック運送業の荷主への運賃値上げが進まないので、72組合の加重平均で(1カ月)8,898円3.45%に留まっている(同組合ホームページ)。「パートの母ちゃんが、ドライバーの父ちゃんより賃上げ率が高い」と、家庭内では父ちゃんの肩身が狭くなっているようだ。 なお、倉庫業関連の労働組合としては全倉連(全日本倉庫運輸労働組合同盟。42単組が加盟)があるが、ホームページでは2025年賃上げ実績等の活動状況は公表していない。 UAゼンセンのパートが多い小売業では、キャッシュレス・無人レジ・電子値札・電子レシートなどDX化が進んで労働生産性が向上していることも、賃上げの原資として寄与しているようだ(倉庫・物流センターの労働生産性については後述)。 倉庫・物流センターも小売業も、パートにとっては同じような職場であり、「時給」は職場を選ぶ大きな要素である。 そこで、倉庫・物流センターも小売業に負けないような賃金を支払わなくては、小売業とのパート取り合いに負けるどころか、今働いているパートも小売業に奪われかねない。 正規雇用と非正規雇用の賃金格差、即ち「同一労働同一賃金」については、前述の働き方改革関連法による一括改正でパートタイム労働法(正式には「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)により法制化されている(詳細は、415~416号、421~423号の拙稿「働き方改革関連法改正と実務的対応」を参照されたい)。 (1)~(3)以外にも、前号で述べたように、女性以外にも高年齢者・障害者、そして外国人への雇用枠の拡大なども検討・導入されたい。バス・タクシー・トラックの自動車運転には、「特定技能」外国人労働が認められ、各業界で雇用が進められている。この状況を踏まえて、日倉協でも国に対して、倉庫業における特定技能外国人の労働を要請している(現在は、外国人留学生のアルバイトのみに限定されている)。 自動車運転には運転免許が必要なので「特定技能」と言えるが、倉庫・物流センター内の業務はフォークリフト等の運転を除けば、現状でもパート・アルバイトで可能であり、どのように「特定技能」として位置づけるかが気になる。 また、高卒・大卒の新規雇用にあたって、倉庫・物流センターの仕事に興味・関心を持ち、就職先として選んでもらえるように、社会科見学やインターンの実施も行われている。倉庫・物流センターの見学・イベント等は、立地する地域社会との交流を深め、地域社会からのパート雇用にも役立てている例もある。 このような見学やインターンで良い印象を持ってもらうためにも、(1)の労働環境を整備しておく必要がある。

      3.人手不足の解消策~働き方改革(2)

      (1)自動化・省力化機器の導入

      倉庫・物流センターの自動化・省力化については、日産自動車・バンテックを経て神奈川流通サービス(KRS)協同組合で活躍された高野潔先生が、ロジスティクス・レビュー誌でも、414号・443号・444号・469号の各号で事例等を踏まえてご紹介されている(以下を参照されたい)。筆者も完成間もないKRS物流センター(横須賀市)を見学させて頂いて、当時の最先端物流センターに触れることができた。 第414号「これからの物流業界の『自動化・省人化』の主役は自動倉庫システムです。」(2019年6月18日) 第443号「物流拠点(物流センター)のあれこれ(前編)」(2020年9月3日) 第444号「同(後編)」(2020年9月15日) 第469号「物流現場の省人化、省力化とGTP(Goods To Person)を考える。」(2021年10月7日) 一時は、自動倉庫(自動ピッキングシステムの一つ)や自動仕分け機という重装備型が導入されたが、波動への対応に限界があること(ピークに合わせると過剰設備となり、平均値で設備するとピークにオーバーフローしてしまう)、一日のうちの稼働時間が限られ設備負担が大きい。そこで、人手は十分なのでカートさえ増やせば「波動対応は可能」と、カートピッキング方式が増えた。 ネット通販などの増加やフルフィルメント業務の受託により、多品種小口・少量多頻度の倉庫・物流センター内作業が増加したことも、人海戦術によるカートピッキング方式が普及した要因に挙げられる。 ところが、2項で述べたように人手不足が深刻化して、また、自動化・省力化機器が見直されるようになった。前号で述べたように、アマゾンの物流センターではピッキング作業員が1日20km歩いて商品を探している実態は、「1日8時間労働として、3時間分のピッキング作業よりも、労働生産性のない5時間分(時速4km×5時間=20km)の歩行に時給を払っている」ことに気が付いた。そこで、米国キバ・ロボティクスを買収(アマゾン・ロボティクスに改称)して棚搬送ロボット(GTP)を導入したのである。 前号では、GTPやオートストアのような自動化・省力化機器を導入すれば、障害者雇用にも役立つと提案した。 最近は、さらに進んで人型ロボット(ヒューマノイド)の実用化が目前になっている。一例として米国アジリティ・ロボティクスの人型ロボットを掲げておく。同社は2015年設立で物流ロボットの開発に取り組み、米国フォード社と連携して宅配ロボットの実用化にも取り組んでいる。同社の人型ロボットDigitでは、棚からのピッキング作業や梱包作業なども可能とされている(図表5 参照)。 図表5 米国アジリティ・ロボティクスの人型ロボット

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
         Loading and Unloading (出所)Agility Robotics ホームページ 筆者は、港湾カレッジの学生を引率して、自律走行ロボット(AMR)を導入して、人とAMRが協働でピッキングしている現場を見学させているが、訪問のたびに機械学習の成果が上がり、作業性が向上するのを実感している。 図表4のようにロボットが自律的にピッキングするのは近いと思われる。オートストアも人型ロボットも24時間稼働が可能なので、そのうち、無人レジ・無人店舗のように無人倉庫・物流センターが実用化されるのではなかろうか。 倉庫・物流センターの自動化・省力化の進め方については、前述の高野先生の各号をお読み頂くとして、誌面の都合もあるので、ここでは最近の自動化・省力化機器のメリット・デメリット例を掲げることにする。 1)AGV(GTPを含む)・AMR [メリット] ①作業者による運搬が不要となる(空いた時間を他業務に振り向けることが可能) ②ピッキング作業者の歩行時間が不要となる(GTP) ③庫内を自律走行するので作業者との衝突の心配がなく、庫内のレイアウト変更も柔軟に可能(AMR) [デメリット] ①初期投資が多額となる(最近は導入も増えており投資採算性に寄与) ②作業量の波動が大きい場合、ピーク対応が難しい(急には、台数を増やせない) 2)AGF(自動フォークリフト) [メリット] ①深刻化しているフォークマン不足に対応できる ②有人のフォークリフトに比べて安全性が高い(センサーによる自動停止機能。走行速度遵守など) ③24時間稼働が可能(自動倉庫などと連携して運用) [デメリット] ①導入コストが高い ②パレット位置がズレていると対応できない(有人フォークリフトのような柔軟な対応ができない) ③有人のフォークリフトに比べて作業速度が遅い(前述の安全重視のデメリット) 3)ロボットなどによるピッキング ①24時間稼働が可能(自動倉庫などと連携して運用) ②機械学習・深層学習により熟練度・作業性が向上する(ティーチング・レス方式ではロボット自体が自律的に作業を学習する) ③AIによる画像検品等と組合せて、同時かつ高精度の検品ができる [デメリット] ①導入コストが高い ②完全な自動化が難しい(AMRやGTPもロボットの一種であり、作業者と協働してピッキングを行うことができる) ③今のところ、作業者よりも作業が遅い

      (2)労働生産性の向上

      1)倉庫・物流センターのKPI管理 前述の(1)項で述べた「自動化・省力化機器の導入」、倉庫・物流センターの生産性の向上を目的としているが、機器を導入しただけでは不十分である。機器の導入によって倉庫・物流センターは装置産業化するが、今のところは完全無人化ではなく「協働」段階でもある。実際には多くの倉庫・物流センターでは、多くの作業者が働く「労働集約型」であることが多い。 2-(2)で述べたアマゾンのGTPのように自動化・省力化機器を導入した場合も、これまで以上に人間でやる仕事の絞り込みと、その効率化を進めて行く必要がある。 アマゾンでは、減らした歩行時間をピッキング時間に充当して、労働生産性を向上させたように、倉庫・物流センターの生産性を向上させるには、労働生産性の向上がカギになる。2項で述べた「労働環境の改善」「福利厚生の見直し」「賃金水準の見直し」も、人手不足対策と合わせて、作業者の労働生産性を高めることも大きな目的である。 労働生産性とは、「従業員一人当たりの付加価値額を言い、付加価値額を従業員数で除したもの」である。投入した労働量に対する産出量の割合ともいえる。たとえば、倉庫・物流センターでは、人時(投入労働量)に対するピッキング数(産出量)などのKPI(重要業績評価指標)として表される。 なお、国土交通省では物流管理が適切に実施されているかどうかを数値で評価することを目的に、「物流事業者におけるKPI導入の手引き」を出しているので、参考にされたい。 倉庫・物流センターにおけるKPIについては、前述の富士電機から資料「物流倉庫の基礎知識」シリーズの一つとして「物流センターのKPI」が同社ホームページに掲出されている。 そこには、「保管効率(充填率、坪効率等)」「人時生産性(庫内作業)」「数量当たり物流コスト」「日次収支(物流センター)」「棚卸差異」「誤出荷率」「汚破損率」「クレーム発生率」 「出荷ロット」(抜粋)など多くの指標が掲げられているので、各倉庫・物流センターの実態に応じて活用されたい。 2)7つの「ない」 筆者は、大手量販店の物流部長を長く務められた後に、物流コンサルティング会社を経営された鈴木凖先生に、量販店物流を教えて頂いた。千葉県にあった量販店物流センターには何度も伺って、当時は珍しかった音声仕分けシステムや段ボール箱の容積・質量の自動測定システムなども見学した。 その折に、鈴木先生から倉庫・物流センターの作業改善ポイントとして「7つの『ない』」を教えて頂き、その後も各社の物流現場を見るたびに活用している。これは、鈴木先生が「トヨタ生産方式」の「7つのムダ」にヒントを得て、自社である大手量販店の物流センターに応用したと伺った。トヨタ生産方式では、①加工、②在庫、③造りすぎ、④手待ち、⑤動作、⑥運搬、⑦不良・手直しによる「7つのムダ」を徹底的に排除している。 鈴木先生発案の「7つの『ない』」は、①待たせない(同期化)、②持たせない(荷役機器)、 ③歩かせない(動線の短縮)、④考えさせない(熟練の追放)、⑤探させない(整理・整頓)、 ⑥書かせない(ペーパーレス)、⑦検品しない(検品レス)の7つで、ロジスティクス・ビジネス誌にも掲出されている。 トヨタの「7つのムダ」、鈴木先生の「7つの『ない』」は、QC・IE・VEなど改善手法(技法)に根差すものと思われる。倉庫・物流センター内の労働生産性を向上させるための視点として、つねに持ち続けたいと思う。 3)QCサークルの見直し・再活用 QC・IE・VEなど改善手法(技法)のなかで、工場などで活用され、ボトムアップ方式によって日本の工業発展の支えたものに、QC・ZDサークルなどの小集団活動がある。 物流の「現場力」を強化向上させるために、(公社)日本ロジスティクスシステム協会と(一社)日本物流資格士会が毎年開催している「全日本物流改善事例大会」でも、初期のころはQCサークル発表大会のようであった。日本科学技術連盟(日科技連)では、2025年も全国5カ所で、小集団改善活動であるQCサークル大会を開催している。 QCサークルなどの小集団活動による改善や問題解決は、決して古い手法ではない。1-(3)で紹介したビジネス・キャリア検定試験の標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション2級」の「第5章 物流センターの管理と運営」では「第2節 品質管理手法」として小集団活動の効果や、①パレート図(図表6)、②特性要因図、③グラフ、④チェックシート、⑤散布図、⑥ヒストグラム、⑦管理図の「QC7つ道具」を解説している。 図表6 パレート分析

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。
         (出所)ビジネス・キャリア検定標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション2級」

      おわりに

      最近の風潮として、コスパ(コストパフォーマンス)やタイパ(タイムパフォーマンス)で即効性が求められるとともに、物流DXの流れのなかで「自動化・省力化機器の導入」も増加している。ところが、「機器を導入しても、思ったほど成果が出ていない」という声も聞く。 [筆者注:コスパ・タイパに加えて「スペパ」(スペースパフォーマンス=空間利用度)も取り上げられている。地価の高騰に伴い、倉庫・物流センターにも充填率・保管効率などのスペパを、再度考え直す時期に来ていると思われる] どれほど優秀な機器であっても使いこなすのは人間であり、人間が働きやすいための「働き方改革」と、人間の能力を最大限に引き出すために、KPIなどのデータを活用した地道な生産性向上の取り組みが、倉庫・物流センターにも求められていると思うところである。 【参考資料】 1.(一社)日本物流団体連合会「数字でみる物流」毎年版 2.(一社)日本倉庫協会「倉庫業の現状と課題」(2024年12月 国土交通省ホームページ) 3.同「倉庫事業における労働力実態に関するアンケート調査」(2024年2月実施) 4.中央職業能力開発協会編「ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト『ロジスティクス管理3級』『ロジスティクス・オペレーション2級』」(2024年10月) 5.国土交通省「物流施設における労働力調査報告書」(2009年3月) 6.富士電機「物流・倉庫部門における人手不足の実態調査」(2021年8月) 7.中央労働災害防止協会の「倉庫業における事故の型別労働災害発生状況(1999-2021年)」(2022年) 8.船井総研ロジ「ESG経営を脅かす?物流倉庫で多い〇〇」(同社ホームページ。2025年5月5日閲覧) 9.全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟(UAゼンセン)・全国交通運輸労働組合総連合(交通労連)の2025年春闘関連ホームページ(2025年5月5日閲覧) 10.Agility Robotics社 ホームページ(2025年5月5日閲覧) 11.国土交通省「物流事業者におけるKPI導入の手引き」(2015年7月) 12.富士電機「物流倉庫の基礎知識 物流センターのKPI」(同社ホームページ。2025年5月5日閲覧) 13.ロジスティクス・ビジネス誌「IEを活用した現場改善のススメ」(2005年9月号) 14.「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(2018年)、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(2025年)及び関連法令 15.本稿で引用したロジスティクス・レビュー誌各号ほか (C)2025 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.

    The post 第561号 物流センターの「働き方改革」(後編) (2025年8月7日発行) first appeared on SAKATA.

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